五大総合商社・2026年3月期決算——資源安の逆風下、非資源で稼ぐ伊藤忠が最高益で独走。各社は株主還元競争へ
今期の総括
資源頼みの収益構造が崩れ、事業の「質」が問われる時代へ
2026年3月期の商社決算は、資源バブルの終焉が明暗を分けました。三菱商事や三井物産が前期の特需がなくなった反動で減益となる一方、生活消費に強い伊藤忠商事が過去最高益を更新。各社は大規模な自社株買いや増配を競い合い、投資家へのアピールを一段と強めています。
業界全体の動き
今期の商社業界を動かした共通テーマは以下の3点です。
- 資源価格の落ち着き: 鉄鉱石や石炭の価格が下がり、資源に強い会社の利益を押し下げました。
- 非資源シフトの加速: 資源に頼らず、デジタルや食料、不動産で稼ぐ力が試された一年でした。
- 異次元の株主還元: 利益が減っても配当を増やすなど、投資家を重視する姿勢が全社で鮮明です。
売上高ランキング
三菱商事が18兆円超えで圧倒的な規模を誇ります。2位の伊藤忠、3位の三井物産が14兆円前後で並び、上位3社の巨大な存在感が鮮明です。
営業利益ランキング
三菱商事と三井物産が1兆円の大台を維持しましたが、前期比では減益。対して7,000億円台の伊藤忠と住友商事は増益となり、勢いの差が出ました。
営業利益率ランキング
住友商事が9.6%と驚異的な効率を見せました。不採算事業の整理と、デジタル分野などの高収益な資産への入れ替えが成功しています。
売上高 前年同期比
丸紅が+6.1%と最も高い伸びを記録。不動産事業の統合など、既存の枠組みを超えた積極的なビジネス拡大が売上増に直結しています。
純利益 前年同期比
資源価格の下落を背景に、上位2社が大きく減益となりました。一方、非資源分野を強化した丸紅、住友、伊藤忠の3社が増益を確保しました。
勝者と敗者
今期の「勝者」は伊藤忠商事です。純利益は9,003億円(前年比+2.3%)で過去最高を更新しました。資源安の逆風を、コンビニや金融などの生活消費分野で完全にはね返しました。
対照的に、苦戦が見えたのは三菱商事です。純利益は8,005億円(前年比-15.8%)と大きく沈みました。前期に出たローソン関連の「一時的なお宝利益」がなくなったことが響き、首位の座を明け渡す形となりました。
勝者
伊藤忠商事
苦戦
三菱商事
注目の動き・戦略比較
各社、生き残りをかけた独自の動きが加速しています。
- 住友商事: 利益率は9.6%と断トツです。不採算の欧州野菜事業を売り、IT子会社のSCSKを軸に稼ぐ形へ変えました。
- 三井物産: 利益が減っても配当を15円増やす強気の姿勢です。一過性の損失を切り離し、稼ぐ力を誇示しました。
- 丸紅: 第一生命との不動産事業の統合で、純利益は+8.1%と最も伸びました。既存の商社の枠を超えた挑戦が光ります。
業界共通のリスク
- 地政学リスク: 中東情勢の緊迫化により、エネルギー調達コストが不安定になっています。
- 中国経済の停滞: 資源需要の要である中国の景気減速は、全社の収益に影を落とします。
- 円高への転換: これまでの増益を支えた「円安メリット」が、為替の動き次第で逆風に変わります。
就活生・転職希望者へ
今の商社は「ラーメンからロケットまで」から「特定の強みを持つ集団」へ変わっています。安定を求めるなら規模の三菱商事ですが、個人の稼ぐ力やスピード感を重視するなら、非資源で独走する伊藤忠商事や、デジタル変革に挑む住友商事が面白い選択肢になるはずです。
