五大総合商社・2026年3月期Q3——資源安の逆風を「資産入れ替え」で突破、伊藤忠が純利益首位へ
今期の総括
資源頼みから「資産マネジメント」への転換が加速
資源価格の下落により、多くの商社が減益を強いられる厳しい局面です。しかし、資産の入れ替えを加速させた 伊藤忠商事 や 丸紅 が増益を確保し、明暗が分かれました。各社は従来の資源依存から脱却し、非資源分野での稼ぐ力を試されるフェーズに入っています。投資家は「還元の姿勢」、就活生は「事業の多様性」に注目です。
業界全体の動き
この第3四半期、総合商社業界を動かした共通テーマは以下の3点です。
- 資源バブルの沈静化: 鉄鉱石や石炭の価格が下がり、各社の資源部門は軒並み減益となりました。
- 資産入れ替えの加速: 不採算事業や保有株を売り、利益を出す「アセットターンオーバー」が活発です。
- 株主還元の強化: 業績が横ばいでも、増配や自社株買いを発表し、株価を下支えする動きが目立ちます。
売上高ランキング
**三菱商事**が13兆円超えで首位を独走。**丸紅**は不動産事業の統合により、前年比7.9%増と売上を大きく伸ばしました。
営業利益ランキング
資源価格の下落を受け、上位2社が減益となりました。特に**三菱商事**は32%減と、前年の高水準からの反動が顕著です。
営業利益率ランキング
**住友商事**が9.6%と高い利益率を記録。不採算事業の売却による「持たない経営」へのシフトが、効率性の高さに表れています。
売上高 前年同期比
世界経済の減速で、5社中3社が減収。その中で増収を確保した**丸紅**と**住友商事**の「非資源戦略」が際立つ結果となりました。
純利益 前年同期比
**伊藤忠商事**と**丸紅**が増益を確保しました。資源安の影響を資産売却益で補う「ポートフォリオの強さ」が、最終利益の差となりました。
勝者と敗者:明暗を分けた「非資源」の厚み
今期の「勝者」は 伊藤忠商事 です。純利益は 7,053億円(前年比 4.3%増)で、5社の中で唯一 7,000億円の大台を超えました。資源安を食料や機械などの「生活消費分野」で跳ね返した形です。
一方で「敗者」に見えるのは 三菱商事 です。純利益は 6,079億円(前年比 26.5%減)と大きく沈みました。ただし、これは ローソン の連結除外や、前年の巨額利益の反動によるものです。実力不足というより、会計上の特殊要因が強く影響しました。
勝者
伊藤忠商事
苦戦
三菱商事
注目の動き・戦略比較
各社、独自の生き残り戦略が鮮明になっています。
- 三菱商事: ローソンを三菱KDDIの連合軍へ移行。電力や社会インフラなど「安定収益」へ舵を切っています。
- 三井物産: 米国での不正疑惑に伴う貸倒損失が出るも、得意のLNG(天然ガス)で損失をカバーしました。
- 住友商事: 米国のタイヤ販売会社を売却。IT子会社の SCSK を軸にしたデジタル戦略を強化しています。
- 丸紅: 不動産事業の統合で 765億円 の利益を出し、通期予想を上方修正。攻めの姿勢が光ります。
業界共通のリスク
好調な商社にも、無視できないリスクが忍び寄っています。
- クレジットリスク: 三井物産で起きたような、海外取引先の不正や倒産による巨額損失のリスク。
- 中国経済の停滞: 鉄鋼需要の冷え込みは、鉄鉱石を扱う商社の収益を直撃します。
- 地政学リスク: 中東情勢や米中対立は、エネルギー価格と物流網に大きな不透明感を与えます。
就活生・転職希望者へ:商社は「投資会社」へ進化した
今の総合商社は、単なる「仲介業者」ではありません。自ら事業を買い、価値を高めて売る 事業経営のプロ集団 です。
- 求められるのは、現場の泥臭さよりも「資本効率」を考える経営者視点です。
- 伊藤忠のように「稼ぐ・削る・防ぐ」を徹底する文化か、三菱のように「社会課題解決」を掲げる文化か。社風の差が数字以上に明確になっています。
