日本電気(NEC)・2026年3月期、営業利益40.3%増の3,599億円——ITサービスが牽引、実質増配も発表
売上高
3.6兆円
+4.7%
通期予想
3.5兆円
営業利益
3,599億円
+40.3%
通期予想
4,200億円
純利益
2,702億円
+54.3%
通期予想
2,850億円
営業利益率
10.0%
日本電気(NEC)が発表した2026年3月期通期連結決算は、売上収益が前期比4.7%増の3兆5,827億円、営業利益が同40.3%増の3,599億円と大幅な増収増益となった。国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)需要を背景に、主力のITサービス事業が収益の柱として成長を加速させたことが要因だ。同社は好調な業績を受け、2027年3月期の年間配当を実質増配となる40円とする方針を示しており、成長投資と株主還元の両立を図る姿勢を鮮明にしている。
日本電気 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
2026年3月期の連結業績は、ITサービスを中心とした旺盛な需要を取り込み、各利益項目で過去最高水準を更新した。売上収益は3兆5,827億円(前期比+4.7%)、本業の儲けを示す営業利益は3,599億円(同+40.3%)に達している。特に一過性の要因を除いた「Non-GAAP営業利益」は3,972億円(同+27.6%)と、収益力の底上げが顕著だ。利益率の改善が進んだ背景には、不採算案件の抑制と、高付加価値なDX案件の比率が高まったことがある。
親会社の所有者に帰属する当期利益は2,702億円(前期比+54.3%)と大きく伸長した。これは、営業増益に加え、日本航空電子工業の株式売却に伴う関連会社株式売却益202億円を金融収益に計上したことが寄与している。1株当たり当期利益は202.95円となり、前期の131.50円(分割調整後)から大幅に向上した。今回の決算は、同社が推進してきた構造改革の成果が、名実ともに数字に現れた形といえる。
| 指標 | 2025年3月期実績 | 2026年3月期実績 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3兆4,234億円 | 3兆5,827億円 | +4.7% |
| 営業利益 | 2,565億円 | 3,599億円 | +40.3% |
| 調整後営業利益 | 2,872億円 | 3,868億円 | +34.7% |
| 親会社株主帰属利益 | 1,752億円 | 2,702億円 | +54.3% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
事業別では、主力の「ITサービス」が全体の成長を強力に牽引した。ITサービスの売上収益は2兆5,109億円(前期比+2.0%)、セグメント利益は3,367億円(同+33.7%)と極めて好調であった。国内の官公庁や企業におけるシステム更新、クラウド移行などのDX案件が継続的に流入し、受注残高も高水準を維持している。特にコンサルティングから保守までを統合したサービスが評価され、営業利益率は13.4%と高い収益性を確保した。
「社会インフラ」事業も着実な歩みを見せた。売上収益は9,384億円(前期比+12.3%)、セグメント利益は743億円(同+22.9%)となった。5G関連のネットワーク整備や航空管制システムの更新が寄与したほか、海外向けの大規模プロジェクトが順調に進捗したことが背景にある。前年度に進めた組織体制の変更により、従来「社会インフラ」に含まれていたNECネッツエスアイが「ITサービス」へ統合されたことで、各事業の責任範囲が明確化し、効率的な運営が可能となった。
| セグメント名 | 売上収益 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| ITサービス | 2兆5,109億円 | 3,367億円 | 13.4% |
| 社会インフラ | 9,384億円 | 743億円 | 7.9% |
| その他 | 1,464億円 | △41億円 | — |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ITサービス | 2.5兆円 | 70% | 3,367億円 | 13.4% |
| 社会インフラ | 9,384億円 | 26% | 743億円 | 7.9% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末から1,514億円増加し、4兆4,668億円となった。現金及び現金同等物の期末残高は6,590億円(前期末比+744億円)と潤沢な手元資金を確保している。営業活動によるキャッシュ・フローは4,385億円の収入となり、稼ぐ力の強化が裏付けられた。投資活動においては、有形固定資産の取得や子会社の取得に資金を投じる一方、資産の効率化に向けた売却も実施し、キャッシュ・バランスを保っている。
株主還元については、2025年4月に実施した1株につき5株の株式分割を踏まえ、積極的な姿勢を継続している。2026年3月期の年間配当は、第2四半期末の16円と期末の22円を合わせ、合計38円を予定している。さらに、次期(2027年3月期)の年間配当予想を40円(中間20円・期末20円)と発表した。これは、株式分割前の水準に換算すると実質的な増配となり、利益成長に応じた還元を重視する経営判断がなされている。
通期見通し
2027年3月期の通期予想については、売上収益を3兆5,000億円(前期比2.3%減)と、やや控えめに見込んでいる。これは、収益性の低い案件の選別や、事業ポートフォリオの最適化に伴う一部事業の影響を織り込んでいるためだ。一方で、Non-GAAP営業利益は4,200億円(同5.7%増)と増益を目指しており、売上規模の追求よりも「稼ぐ力の質」を高める戦略にシフトしている。
| 項目 | 2026/3期 実績 | 2027/3期 予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3兆5,827億円 | 3兆5,000億円 | △2.3% |
| Non-GAAP営業利益 | 3,972億円 | 4,200億円 | +5.7% |
| 親会社株主帰属当期利益 | 2,702億円 | 2,850億円 | +5.5% |
リスクと課題
会社側は今後の注視すべきリスクとして、以下の点を挙げている。
- サイバーセキュリティ・リスク: システム提供側としての信頼に関わるため、高度な対策の継続が不可欠。
- 優秀な人材の確保: ITサービス事業の成長には、DXに強いエンジニアやコンサルタントの確保が最大のボトルネックとなる懸念がある。
- 為替・金利変動の影響: 海外事業の拡大や部品調達において、マクロ経済の動向が利益に与える不確実性が存在する。
- 地政学的リスク: 供給網の混乱や主要国における輸出管理法令の変化が、事業継続に影響を及ぼす可能性がある。
今回のNECの決算は、長年取り組んできた「ハードからソフト・サービスへ」という事業転換が完全に実を結んだことを示す象徴的な内容です。
注目すべきはITサービス部門の営業利益率が13%を超えた点です。これは従来のSIer(システム統合)としての水準を脱し、より高付加価値なコンサルティングやプラットフォーム提供が利益の源泉になっていることを示唆しています。
投資家目線では、株式分割後の実質増配は非常にポジティブなメッセージです。2027年3月期の売上収益を下方に見積もりながら、Non-GAAP営業利益の拡大を掲げている点は、経営陣が「規模の拡大」よりも「資本効率と利益率」を重視するフェーズに入ったことを物語っています。
就活生の視点では、NECネッツエスアイの完全子会社化や組織再編により、事業領域が非常に分かりやすく整理された点は追い風でしょう。国内DX市場のリーダーとしての地位を固めており、成長領域でのキャリア形成を考える上で魅力的な選択肢となっていることが伺えます。
