トラスコ、2026年12月期第3四半期決算、売上高12%増も利益は伸び悩み

トラスコの2026年12月期第3四半期決算を分析すると、1〜9月の売上高は前年同期比12.1%増、営業利益は4.9%増、純利益は4.4%増となり、増収増益でした。工場向けやネット通販企業向けの販売が伸びた一方、物流費、人件費、物流センターなどの減価償却費が増え、利益の伸びは売上高を下回りました。通期予想は据え置きで、売上高の増加を見込む一方、純利益は前期比4.7%減を予想しています。

決算の数字第3四半期累計
期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,661億円 | +12.1% | 3,500億円 | 76% |
| 営業利益 | 180億円 | +4.9% | 226億円 | 80% |
| 純利益 | 121億円 | +4.4% | 151億円 | 80% |
| 営業利益率 | 6.8% | |||
この決算のポイント
- 1eビジネスルートの売上高は17.7%増、4ルートの中で最も高い伸び
- 2ホームセンタールートは増収ながら、経常損益が前年の黒字から赤字に転落
- 3通期売上高予想は3,500億円で据え置き、純利益は前期比4.7%減の見通し
- 4年間配当予想は61円、前期実績の60円から1円増配の計画
- 5愛知と新潟の物流拠点が稼働、供給体制と納品サービスの強化を進める
業績のポイント
トラスコ(トラスコ中山)の2026年1〜9月期は、売上高2,660億81百万円(前年同期比12.1%増)、営業利益179億86百万円(同4.9%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益121億円(同4.4%増)でした。売上の伸びに対して利益の増加が小さく、増収の一方でコスト負担が拡大しました。
- 売上総利益率: 20.6%と、前年同期の20.9%から低下。売上高の増加が利益率の改善にはつながりませんでした。
- 販売費及び一般管理費: 369億56百万円で前年同期比13.5%増。運賃・荷造費、給与・賞与、減価償却費が増えました。
- EBITDA: 236億92百万円で前年同期比11.3%増。営業利益より高い伸びとなりました。
- 経常利益と1株利益: 経常利益は175億34百万円で同3.4%増、1株当たり四半期純利益は183円50銭で前年同期の175円75銭から上昇しました。
会社は、AI・半導体関連需要の堅調さや、作業用品・環境安全用品の販売増を背景に売上を伸ばしました。一方、出荷量増加に伴う運賃・荷造費に加え、2025年7月の基本給改定や住宅補助手当の増額、新基幹システムと物流センターの稼働に伴う減価償却費が利益を押し下げています。売上拡大を支える物流・人材への投資が、現時点では利益率の重荷になっている構図です。
セグメント別動向
4ルートすべてで売上高が増加しました。伸び率ではネット通販企業向けのeビジネスルートが先行し、主力のファクトリールートも2桁増収となりました。
ファクトリールートは売上高1,736億7百万円で前年同期比10.1%増、経常利益123億36百万円で同6.1%増でした。在庫の拡充や「MROストッカー」「ユークル」の利用促進に取り組み、生産工場の稼働に関わる作業用品や環境安全用品が伸びました。
eビジネスルートは売上高664億44百万円で前年同期比17.7%増、経常利益57億82百万円で同12.5%増でした。約415万アイテムの商品・在庫データを得意先のシステムと連携し、短納期や検索性を高めたことが販売拡大につながりました。
- ホームセンタールート: 売上高232億69百万円、前年同期比11.9%増。EC対応や売場提案で受注を増やした一方、費用増加で経常損益は前年の2億24百万円の黒字から2億76百万円の赤字に転じました。
- 海外ルート: 売上高27億60百万円で前年同期比12.6%増、経常利益2億54百万円で同25.1%増。現地調達やローカル企業の新規開拓、既存顧客との協業を進めました。
eビジネスルートは4ルートで最も高い売上成長率を示し、データ連携と物流サービスが販売を後押ししています。一方、ホームセンタールートは増収でも採算が悪化しており、売上成長を利益につなげる費用管理が課題です。
- ファクトリー+10.1%
- eビジネス+17.7%
- ホームセンター+11.9%
- 海外+12.6%
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ファクトリールート | 1,736億円 | 65% | - | - |
| eビジネスルート | 664億円 | 25% | - | - |
| ホームセンタールート | 233億円 | 9% | - | - |
| 海外ルート | 28億円 | 1% | - | - |
通期見通し
2026年12月期の業績予想は、8月7日に公表した内容から変更ありません。売上高の増加を見込む一方、物流拠点や人件費の負担などを織り込み、営業利益と純利益は前期を下回る計画です。
| 項目 | 通期予想 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高(百万円) | 350,000 | +9.4% |
| EBITDA(百万円) | 30,886 | +8.9% |
| 営業利益(百万円) | 22,580 | -1.0% |
| 経常利益(百万円) | 21,958 | -2.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益(百万円) | 15,127 | -4.7% |
会社は、中間期の売上高が前年同期比12.6%増と伸びた一方、中東情勢の影響による作業用品の需要増は下期に一服すると見ています。それでも下期はおおむね計画通りに推移するとの想定です。新物流センターの減価償却費や基本給改定などによる給与・賞与の増加が続くため、売上成長と利益の回復に差が出る見通しです。
財務状況と資本政策
9月末の総資産は3,218億30百万円で、2025年12月末から134億71百万円増加しました。自己資本比率は60.5%と、前期末の60.4%から小幅に上昇しています。
| 指標 | 2026年9月末・予想 | 比較対象 |
|---|---|---|
| 総資産(百万円) | 321,830 | 前期末 308,359 |
| 純資産(百万円) | 194,559 | 前期末 186,252 |
| 自己資本比率 | 60.5% | 前期末 60.4% |
| 中間配当(円) | 32.50 | 前期実績 30.50 |
| 期末配当予想(円) | 28.50 | 前期実績 29.50 |
| 年間配当予想(円) | 61.00 | 前期実績 60.00 |
資産増加の主な要因は、商品在庫の積み増しや建物・機械設備の増加です。物流拠点の稼働に向けた投資が進む一方、借入金も増加しました。四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されておらず、短信から営業キャッシュフローの実績は確認できません。年間配当は前期比1円増の計画で、中間配当を増やしつつ期末配当は前期を下回る見込みです。自社株買いの実施については、この短信に記載がありません。
戦略トピック
トラスコは在庫、物流、デジタルを組み合わせ、納品の速さと利便性を高める取り組みを継続しています。2026年には新たな物流拠点を稼働させ、得意先や仕入先と連携した供給体制も広げました。
- 物流拠点の拡充: 5月に愛知県北名古屋市の「プラネット愛知」、8月に新潟県三条市の「HC東日本物流センター」が稼働しました。
- 直送・荷合わせサービス: 複数商品をまとめて梱包しユーザーへ直送する「ニアワセ+ユーチョク」の利用を強化し、納期短縮や配送負担の軽減を目指しています。
- 顧客との協業: 1月にはSMCの遠野サプライヤーパーク内に在庫保有支店を設け、現地サプライヤー向け間接副資材の即納体制を整えました。
- 現場ニーズへの対応: 熱中症対策商品「TRUSCO パーソナルクーリングボックス “ど冷えもんBOX”」を発売し、工場や建設現場などの需要を取り込みます。
こうした施策は、単なる販売拡大だけでなく、納品リードタイムや得意先側の配送業務を改善することを狙っています。新拠点の稼働は供給力を高める一方で、減価償却費などの固定費も増やすため、稼働率の向上とサービスによる利益貢献が今後の焦点です。
リスクと課題
会社は、資源価格や金利の動向を先行きの下押し要因として挙げています。売上が伸びても、物流・人件費や設備投資負担の増加を吸収できるかが利益面の課題です。
- 中東情勢と資源価格: 資源価格の高止まりは顧客企業の原材料・エネルギーコストを押し上げ、需要や仕入れ環境に影響する可能性があります。中東情勢に伴う作業用品需要の一服も会社が想定しています。
- 金利上昇: 金利上昇は顧客企業の投資や景況感を冷やす要因となり得ます。トラスコ自身も借入金を活用しており、金利負担の増加には注意が必要です。
- 物流費・人件費・減価償却費: 出荷増による運賃・荷造費、賃金改定による給与・賞与、新物流センターやシステムの償却費が増えています。コスト上昇が続けば、売上増に比べて利益の伸びが抑えられるおそれがあります。
- ルート別の採算差: ホームセンタールートは増収でも経常赤字となりました。各ルートで販売拡大を利益につなげる価格・費用管理が求められます。
顧客の利便性を高めるための在庫や物流への投資は競争力の源泉ですが、需要が鈍化した場合には固定費負担が重くなる可能性があります。投資の効果を納品品質や取引拡大で回収できるか、今後の利益率とルート別採算を確認したいところです。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/30)
2,372円
最新終値(2026/10/30)
2,372円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/30更新
トラスコをライバルと比較
年収・業績・株価を並べて専門商社業界の今
掲載35社トラスコは専門商社業界の掲載35社中、売上高で24位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +24.7%全業界 +14.9%
- 今期計画 営業利益
- +11.0%全業界 +13.0%
- 予想の上方修正
- 14社下方 2社
- 営業利益率(業界)
- 3.0%
- トラスコ−2.5%
- 専門商社(業界平均)+24.7%
- 全業界+14.9%
- 足元の業績今期第1四半期累計は18社合計で売上高+12.3%・営業利益+35.3%(前年同期比)。通期計画に対する進捗が標準ペースを上回る企業は7社、下回る企業は7社。
- 予想修正今期予想を上方修正したのは14社、下方修正は2社。修正幅が最も大きいのはミスミ(営業利益+41.8%)。





タグ#トラスコ#決算#決算分析#四半期決算#増収増益#物流投資#配当#eビジネス#ホームセンター
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売上高の2桁成長は、在庫力と物流・データ連携を強みに持つトラスコの需要獲得力を示しています。特にeビジネスルートの伸びは、ネット通販企業向けの供給基盤が販売拡大に結びついている点で評価できます。
一方、営業利益の伸びは売上高の伸びに届かず、ホームセンタールートも赤字に転落しました。物流網の拡充が将来の競争力につながるかを見極めるには、売上高だけでなく、投資後の利益率改善やルート別の採算回復を追う必要があります。
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