ワコム、2027年3月期第2四半期決算、売上減でも中間純利益は7.5%増

ワコムの2027年3月期第2四半期決算は、売上高が前年同期比5.8%減の484億円となる一方、営業利益は3.2%増の60億円、中間純利益は7.5%増の44億円でした。OEM顧客の製品サイクルや半導体メモリー価格の影響でテクノロジーソリューション事業が落ち込むなか、ブランド製品事業の伸びと収益性の改善が利益を支えました。通期予想は据え置き、ブランド製品が利益を下支えしています。

決算の数字第2四半期累計
期初から6ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 484億円 | -5.8% | 1,100億円 | 44% |
| 営業利益 | 60億円 | +3.2% | 140億円 | 43% |
| 純利益 | 44億円 | +7.5% | 100億円 | 44% |
| 営業利益率 | 12.5% | |||
この決算のポイント
- 1売上高は前年同期比5.8%減の484億円、営業利益は3.2%増の60億円
- 2テクノロジーソリューション事業は売上高17.7%減、セグメント利益16.1%減
- 3ブランド製品事業は売上高24.4%増、セグメント利益は162.3%増
- 4通期予想は据え置き、年間配当予想は24円で前期実績の26円から減少
業績のポイント
ワコム(株式会社ワコム)の2027年3月期中間期は、売上高が484億300万円(前年同期比5.8%減)、営業利益が60億4,000万円(同3.2%増)、親会社株主に帰属する中間純利益が44億4,700万円(同7.5%増)でした。売上減でも営業増益を確保し、増収減益ではなく、減収ながら利益を伸ばす結果となりました。
- テクノロジーソリューション: OEM顧客の製品サイクルや半導体メモリー価格の上昇が需要に影響し、販売数量も減少しました。
- ブランド製品: 前期に発表した製品の拡販や大型案件の出荷が売上と利益を押し上げました。
- 利益の下支え: 売上原価は前年同期より減少し、売上総利益は増加しました。一方、販売費及び一般管理費は増えています。
- 為替と市場環境: 円相場は前年同期より対米ドルで円安でしたが、世界経済は地政学的緊張やインフレ圧力を抱え、不透明な状況が続きました。
事業別では、ブランド製品の好調がテクノロジーソリューションの落ち込みを補い、全社の利益を押し上げました。売上高が前年を下回るなかでも利益を確保した点は評価できますが、利益成長が一方の事業に支えられている構図には注意が必要です。
セグメント別動向
事業ごとの明暗が分かれました。テクノロジーソリューション事業は減収減益、ブランド製品事業は増収増益で、とくにブランド製品の利益成長が目立ちます。
| セグメント | 売上高の前年比 | セグメント利益の前年比 |
|---|---|---|
| テクノロジーソリューション | -17.7% | -16.1% |
| ブランド製品 | +24.4% | +162.3% |
テクノロジーソリューション事業は、売上高が前年同期を下回り、セグメント利益も減少しました。AESとEMRの両テクノロジーで販売数量が落ちたほか、OEM顧客の製品サイクルの変化や半導体メモリー価格の高騰が需要に響きました。タブレット・ノートPCや教育市場での利用拡大を目指す一方、顧客側の製品計画や部材価格の変化を受けやすい状況です。
ブランド製品事業は、ポータブルクリエイティブ製品とミドルレンジのディスプレイ製品が好調で、大型案件の出荷も寄与しました。前期に発表した製品の拡販を進めた結果、売上高とセグメント利益がともに前年同期を上回りました。商品ポートフォリオ刷新の成果が表れ始めた一方、大型案件の反動や新製品の販売継続力が今後の焦点です。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| テクノロジーソリューション事業 | 304億円 | 63% | 63億円 | 20.9% |
| ブランド製品事業 | 180億円 | 37% | 24億円 | 13.5% |
財務状況と資本政策
中間期末の総資産は702億3,900万円で、2026年3月末から52億8,200万円増加しました。自己資本比率は55.4%と、前期末から2.2ポイント低下しています。
| 項目 | 2027年3月期中間期 | 比較・内訳 |
|---|---|---|
| 営業活動によるCF | 14億8,200万円の収入 | 前年同期は18億5,500万円の収入 |
| 投資活動によるCF | 6億4,200万円の支出 | 前年同期は13億600万円の支出 |
| 財務活動によるCF | 21億4,400万円の支出 | 自己株取得、配当などが主因 |
| 現金及び現金同等物 | 150億7,800万円 | 期首から14億2,000万円減少 |
| 配当 | 中間12円、年間予想24円 | 前期実績は年間26円 |
営業キャッシュフローは黒字を保ったものの、棚卸資産の増加が資金を押し下げました。取締役会決議に基づき中間期に自己株式を約179万株取得し、取得額は約15億円でした。前期の年間配当には記念配当3円が含まれており、今期の年間予想24円は前期実績を下回る一方、中間配当は前年の11円から12円に増えています。現金を確保しながら株主還元と成長投資を進める姿勢がうかがえます。
通期見通し
2027年3月期の通期業績予想は、2026年5月公表分から変更ありません。売上高1,100億円、営業利益140億円、親会社株主に帰属する当期純利益100億円を見込みます。
| 項目 | 前期実績(前年比) | 前回予想 | 今回予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 金額非記載(0.0%) | 1,100億円 | 1,100億円 |
| 営業利益 | 金額非記載(+4.6%) | 140億円 | 140億円 |
| 当期純利益 | 金額非記載(+4.7%) | 100億円 | 100億円 |
短信には前期実績の金額は記載されていませんが、前年比では売上高が横ばい、営業利益と純利益は増加する計画です。中間期は売上高が前年同期を下回ったものの、会社は通期予想を維持しました。今後はOEM向け需要の回復に加え、ブランド製品の販売が中間期の勢いを保てるかが、計画達成を左右します。
戦略トピック
ワコムは2029年3月期を最終年度とする中期経営計画「Wacom Chapter 4」を推進しています。デジタルペンの要素技術を磨き、組み合わせることで「かく」体験を広げ、協業パートナーと新たな利用場面をつくる方針です。
- 4つのユースケース: 創る、学ぶ・教える、はたらく・楽しむ、その先へ、より人間らしく生きる領域で体験価値を追求します。
- 技術の市場実装: デジタルペンの技術や要素を「ペンとインクの統合体験」として展開し、次世代の成長エンジンにつなげます。
- 事業運営の改善: 協業による体験・コミュニティの共創に加え、生産性やコスト構造の改善にも取り組みます。
単にペンやディスプレイを販売するだけでなく、利用者やパートナーと体験をつくる事業モデルへの移行を目指しています。技術開発や提携への投資を、サービス体験の提供や継続的な収益に結び付けられるかが、中長期の成長を見極めるポイントです。
リスクと課題
会社が挙げる事業環境には、地政学的緊張やインフレなどの外部要因に加え、顧客の製品計画や部材価格に左右される需要変動があります。ブランド製品の伸びを維持しつつ、テクノロジーソリューション事業の回復につなげられるかが課題です。
- OEM顧客の製品サイクル: 顧客の製品投入時期や計画の変更が、デジタルペン技術の採用や販売数量に影響します。
- 半導体メモリー価格: 部材価格の高騰が顧客の需要判断に影響し、テクノロジーソリューション事業の売上や利益を押し下げる可能性があります。
- 地政学・インフレ: ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢に伴う緊張、エネルギー・原材料価格の上昇が世界経済の不透明さを強めています。
- 為替変動: 為替相場の変化は海外事業の売上や利益に影響する可能性があります。前年同期は対米ドルで円安でした。
- 成長投資の回収: 技術開発や提携への投資が、顧客体験の向上や事業成長に結び付くかを見極める必要があります。
中間期の利益成長だけで判断せず、テクノロジーソリューション事業の需要動向と在庫・運転資金の推移を確認したいところです。通期予想が据え置かれたなか、下期にブランド製品の好調を維持できるかも注目点です。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/30)
824円
最新終値(2026/10/30)
824円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/30更新
ワコムをライバルと比較
年収・業績・株価を並べて精密機器業界の今
掲載18社ワコムは精密機器業界の掲載18社中、売上高で11位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +37.2%全業界 +14.9%
- 今期計画 営業利益
- +25.9%全業界 +13.0%
- 予想の上方修正
- 10社下方 0社
- 営業利益率(業界)
- 5.5%
- ワコム−1.7%
- 精密機器(業界平均)+37.2%
- 全業界+14.9%
- 足元の業績今期第1四半期累計は9社合計で売上高+10.3%・営業利益+28.7%(前年同期比)。通期計画に対する進捗が標準ペースを上回る企業は2社、下回る企業は9社。
- 予想修正今期予想を上方修正したのは10社、下方修正は0社。修正幅が最も大きいのはセイコー(営業利益+28.9%)。


タグ#ワコム#決算#決算分析#四半期決算#2027年3月期#ブランド製品#デジタルペン#自己株式取得#中間配当
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売上減でも営業増益となった背景には、ブランド製品事業の大幅な伸びがあります。商品ポートフォリオ刷新が数字に表れた点は前向きですが、テクノロジーソリューション事業の減速を補い続けられるかは別の課題です。
中期経営計画が掲げる「かく」体験の拡張は、ペン技術を軸に新たな価値をつくる方向性として筋が通っています。今後は技術投資やパートナー連携が、製品販売にとどまらない収益や安定した需要につながるかに注目したいです。
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株式会社ワコム
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- 2027年3月期 第1四半期




