ニコン、2027年3月期第1四半期決算、営業赤字縮小も純利益86%減少
ニコンが発表した2027年3月期第1四半期決算は、売上収益が前年同期比3.8%増の1641億8200万円と増収を確保したものの、前年に計上した一時的な税務上の益がなくなった反動で、親会社の所有者に帰属する四半期利益は86.4%減の12億8900万円に落ち込んだ。営業損失は▲9億9700万円と前年から19.5億円改善したが、赤字は続いた。通期では増収増益を見込む一方、年間配当は前期比半減の20円を予定している。
決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,642億円 | +3.8% | 7,320億円 | 22% |
| 営業利益 | -997百万円 | — | 110億円 | -9% |
| 純利益 | 13億円 | -86.4% | 100億円 | 13% |
| 営業利益率 | -0.6% | |||
業績のポイント
ニコン(株式会社ニコン)の第1四半期決算は、増収ながら純利益が大幅減となる結果だった。売上収益は1641億8200万円(前年同期比3.8%増)と伸びたが、売上総利益率は39.3%(同42.5%)に低下。販売費及び一般管理費が668億3400万円(同682億3500万円)と減少したものの、営業損益は▲9億9700万円の赤字(前年▲11億9100万円)にとどまった。
純利益減少の最大の要因は法人所得税費用の変化だ。前年同期は法人所得税費用が86億6700万円の収益(益)として計上され、純利益94億6900万円を押し上げていたが、当期は▲1億9600万円の費用となり、親会社帰属利益は12億8900万円(同94億6900万円)に急減。一時的な税効果の反動が数字の最大のインパクトとなった。
また、当期からセグメント名称を「コンポーネント事業」から「インダストリー事業」に変更し、連結子会社のニコンビジョンを映像事業に移管する組織再編を実施。これに伴い前年同期のセグメント情報も遡及修正されている。
セグメント別動向
全5セグメントのうち、経営の柱である映像事業が減収減益となった一方、精機・ヘルスケア・インダストリーは増収、デジタルマニュファクチャリングも増収で損失を縮小した。
映像事業は、外部顧客売上高が729億7000万円(前年同期比8.9%減)と落ち込み、セグメント利益も81億300万円(同27.5%減)に減少。ミラーレスカメラ市場の競争激化や中国市場での需要減退が響いた。欧米でも売上が伸び悩み、地域別では日本・米国・欧州・中国すべてで前年割れとなった。
精機事業は、FPD露光装置と半導体露光装置が堅調で、売上高382億6900万円(同13.1%増)を達成したが、研究開発費の増加などが利益を圧迫し、▲26億3200万円の営業損失に転落(前年は18億8900万円の利益)。中国向けが大きく伸びたが、利益面では苦戦した。
ヘルスケア事業は、生物顕微鏡や眼疾患検査機器が好調で、売上高277億9100万円(同19.9%増)、営業利益10億5300万円(前年は▲18億3800万円の損失)と黒字転換。米国でのアイケアソリューション販売が伸び、利益率も改善した。
インダストリー事業(旧コンポーネント事業)は、産業用顕微鏡や光学部品が伸び、売上高179億2600万円(同18.3%増)、営業利益30億7000万円(同80.6%増)と大幅増益。EUV関連部品やガラス事業も寄与し、セグメント利益率は16.8%に上昇した。
デジタルマニュファクチャリング事業は、金属3Dプリンターの導入が進み、売上高63億1800万円(同23.9%増)と拡大したが、開発投資負担が重く▲21億9700万円の営業損失(前年は▲41億9000万円)を計上。損失幅は半減しており、黒字化への道筋が見え始めている。
全体では、全社調整額(成長投資関連費用や本社管理費)が▲86億3100万円(前年▲96億7500万円)と縮小し、営業赤字はやや改善した。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 映像事業 | 730億円 | 45% | 81億円 | 11.1% |
| 精機事業 | 383億円 | 23% | -2,632百万円 | -6.9% |
| ヘルスケア事業 | 278億円 | 17% | 11億円 | 3.8% |
| インダストリー事業 | 179億円 | 11% | 30億円 | 16.8% |
| デジタルマニュファクチャリング事業 | 63億円 | 4% | -2,197百万円 | -34.8% |
通期見通し
2027年3月期の連結業績予想は、売上収益7320億円(前期比8.1%増)、営業利益110億円、親会社の所有者に帰属する当期利益100億円を見込む。中間期(上期)は営業損失▲55億円を見込むが、下期での黒字転換を想定している。
第1四半期時点で通期計画進捗率は売上高で22.4%、営業利益はマイナスと低調だが、FPD露光装置の大口案件やヘルスケアの継続的拡大、映像事業の新製品投入による巻き返しに期待する。なお、今回の業績予想は直近公表値からの修正が行われている(修正幅の詳細は明らかにされていない)。
| 項目 | 今回予想 (2027/3期) | 前期実績 (2026/3期) |
|---|---|---|
| 売上収益 | 732,000百万円 | 677,100百万円 (参考) |
| 営業利益 | 11,000百万円 | △3,500百万円 (参考) |
| 親会社株主帰属利益 | 10,000百万円 | 9,469百万円 (参考) |
財務状況と資本政策
当四半期末の総資産は1兆971億3200万円で、前期末比221億2500万円増加。保有株式の時価評価上昇などによりその他の金融資産が増加した。自己資本比率は54.1%(前期末54.6%)と高水準を維持している。
営業キャッシュフローは205億2600万円の収入(前年同期44億100万円の収入)となり、前受金の増加や仕入債務の増加がプラスに働いた。投資CFは▲159億7300万円、財務CFは▲75億5500万円で、現金同等物残高は1570億6000万円となった。
重要な株主還元策として、2027年3月期の年間配当金は前期比50%減の20円(中間10円、期末10円)を予定。前期は40円(中間25円、期末15円)だった。業績見通しを踏まえた慎重な配当姿勢と見られるが、前期に比べ大幅な減配となる。自己株式取得については今回の決算短信では具体的な発表はなかった。
リスクと課題
決算短信では以下のリスク要因が開示されている。
- 係争リスク: インド税当局との関税訴訟が長期化。最高裁がインド税当局の上告を受理し審理中で、引当金は未認識。結果によっては財務影響が生じる可能性がある。
- コンプライアンスリスク: 子会社Optos Plcにおいて、リファービッシュ製品の販売が米国政府系契約や法令に抵触の疑い。現在、14億4300万円の引当金を計上しているが、追加の補償や課徴金が発生する可能性に言及。
- 為替変動: 海外売上高比率が高く、急激な円高は業績の下振れ要因となる。
- 製品サイクル: 映像事業は市況変動と競合激化に直面。精機事業も設備投資需要の波に左右されやすい。
- 成長投資の進捗: デジタルマニュファクチャリング事業など新領域の黒字化には時間を要し、投資期間中の利益圧迫が続く。
研究開発・成長投資
当四半期の成長投資関連費用は全社調整額の一部として31億3500万円(前年同期41億5300万円)に縮小されたが、精機事業やヘルスケア事業での開発費が利益を圧迫している。特に半導体露光装置の次世代技術開発や、金属3Dプリンターの用途拡大に向けた投資が継続中。減価償却費は105億2000万円(前年103億1300万円)と堅調で、設備投資も159億7300万円の有形固定資産・無形資産取得を実行しており、成長への布石を打っている。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/6)
1,996円
最新終値(2026/10/23)
1,702円-14.7%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
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コメント
ニコンの第1四半期は、増収と各セグメントの底打ち感こそ見えたものの、主力の映像事業の減速と不透明要因の多さが目立つ決算でした。
強み
- ヘルスケアとインダストリーの伸びは確かで、収益構造の多角化が進んでいる点は評価できる。
- デジタルマニュファクチャリングの損失縮小もポジティブ。
懸念点
- 映像事業の減収幅が想定以上で、カメラ市場全体の停滞と競合の激化が長期化する恐れがある。
- 精機事業が増収ながら赤字転落。FPD露光装置の利益率が悪化しており、半導体露光装置事業の変調も警戒される。
- 配当を半減したことは、株主還元への姿勢が後退したと受け取られかねない。ただし、業績相応の判断ともいえる。
注目ポイント
- 通期では営業利益110億円を計画通り達成できるか。第2四半期の受注状況と映像事業の新製品効果がカギを握る。
- インド税務訴訟やOptos問題など偶発負債の進展にも注意が必要だ。
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