電炉・特殊鋼4社、2027年3月期Q1比較、AI需要の勝者と原料高の苦戦で明暗
電炉・特殊鋼4社の2027年3月期Q1は、需要の中身が業績を分けた。大同特殊鋼はAI・半導体向けを追い風に営業利益を51.4%伸ばし、日本冶金も高機能材で増益。一方、東京製鐵はスクラップ高で営業赤字に転落した。大和工業は本業赤字でも米国関連会社の利益で純利益が倍増し、稼ぐ力は二極化した。
今期の総括
AI需要と原料高で利益格差
業界全体の動き
4社平均の売上高は795億円、営業利益は37.8億円。ただし、平均値だけでは業績の差を見誤る。背景には、需要分野や原料価格への対応力の違いがある。
- AI・半導体需要が追い風。大同特殊鋼は売上高が前年同期比14.9%増、日本冶金も高機能材の販売増で同7.8%増となった。自動車向けが弱い中でも、成長分野が業績を支えた。
- 原料高への対応が明暗を分けた。東京製鐵は鉄スクラップ高に値上げが追いつかず、営業利益は前年の47億円超の黒字から23億円の赤字へ転落した。
- 原料価格の上昇が利益を押し上げる例もある。日本冶金はニッケル価格上昇で16億円の在庫評価益が出た。前年同期は13億円の評価損だった。
- 最終利益と本業の利益は別の動き。大和工業は営業赤字4億円でも、持分法利益が寄与し純利益は123億円と前年同期比107.9%増。東京製鐵も有価証券売却益で最終黒字を保った。
売上高ランキング
営業利益ランキング
売上高 前年同期比
純利益 前年同期比
勝者と敗者
本業の伸びで目立ったのは大同特殊鋼だ。売上高は1,635億円で4社首位、前年同期比14.9%増。営業利益も131億円と首位で、同51.4%増だった。半導体・AI向けが自動車向けの弱さを補った。
一方、最も苦戦したのは東京製鐵。売上高は729億円で前年同期比1.3%減にとどまったが、営業損益は23億円の赤字。営業利益率もマイナス3.2%で、4社中最も低い。スクラップ価格の上昇に製品値上げが遅れ、採算が悪化した。
日本冶金は営業利益率が11.1%と4社で最高。大同特殊鋼の8.0%を上回った。ただし、16億円の在庫評価益が出ており、利益の伸びをすべて本業の強さとは見なせない。需要と原料対応で勝敗が分かれた。
- 好調
- 大同特殊鋼
- 苦戦
- 東京製鐵


営業利益率ランキング
注目の動き・戦略比較
各社で利益を生む仕組みや、次の成長への構えが異なる。
- 東京製鐵は前年度末から製品価格を3回改定した。それでも原料高への転嫁に遅れが出た。純利益は19億円で前年同期比49.5%減。通期の営業利益予想は40億円の赤字。
- 大和工業は国内事業が設備更新に伴う操業停止などで営業赤字となった。一方、米国を中心とする関連会社の利益が経常利益を押し上げた。通期予想を上方修正し、米国事業の存在感が増している。
- 大同特殊鋼は半導体・AI向けの需要を取り込み、営業利益を伸ばした。通期予想は売上高6,300億円、営業利益400億円で据え置き。M&Aや大型成長投資も進める方針だ。
- 日本冶金は高機能材の販売増と在庫評価益が増益に寄与した。第2四半期累計と通期予想を上方修正。通期の営業利益予想は160億円となった。
業界共通のリスク
鋼材需要の回復だけでは、利益を安定させにくい。原料価格や製品価格の動き、需要先の偏りにも注意したい。
- 鉄スクラップやニッケルの価格変動が大きい。値上げが遅れると、東京製鐵のように採算が急速に悪化する。
- 在庫評価益は価格上昇時に利益を押し上げる一方、価格反落時には逆方向に働く。日本冶金の評価益は前年同期の評価損から一転した。
- 半導体・AI需要への期待が強まるほど、投資や需要の反動もリスクになる。自動車向けの回復が遅れれば、需要分野の偏りが重荷となる。
- 大和工業は持分法利益が大きく、米国関連会社の業績や市況に左右されやすい。本業の営業利益と合わせて見る必要がある。
- 脱炭素対応や設備更新には継続的な投資が必要だ。投資負担と競争力向上の両立が問われる。
順位変化と構造トレンド
売上高と営業利益では大同特殊鋼が首位。営業利益率は日本冶金が首位で、規模と採算性のトップは一致しない。大同特殊鋼はAI・半導体向けを伸ばし、日本冶金は高機能材とニッケル価格の影響を受けた。
純利益の伸び率では大和工業が107.9%増で首位。ただし営業損益は赤字であり、本業の順位とは異なる。投資家は営業利益、在庫評価の影響、持分法利益を分けて見ることが大切だ。
就活生・転職希望者へ
この4社の決算からは、鉄鋼業でも仕事の舞台が広がっていることが見える。大同特殊鋼や日本冶金では、半導体・AI向けの材料開発や品質管理が成長分野を支える。大和工業は海外事業との連携や、設備更新に伴う操業管理が重要になる。
一方、原料調達や価格交渉も利益を左右する。技術職だけでなく、購買、営業、海外事業、設備保全にも活躍の場がある。企業選びでは、売上規模だけでなく、どの需要分野に強いか、利益が何から生まれているかも確認したい。
タグ#電炉#特殊鋼#鉄鋼業界#2027年3月期#大同特殊鋼#東京製鐵#大和工業#日本冶金#半導体・AI需要#原料価格
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