富士フイルム、2027年3月期第1四半期決算、増収も減益、通期売上高を上方修正

富士フイルム(富士フイルムホールディングス)の2027年3月期第1四半期決算を分析すると、売上高は前年同期比10.3%増の8,265億円と増収ながら、営業利益は同32.0%減の512億円と増収も大幅減益となった。ヘルスケア部門のバイオCDMO固定費増加やビジネスイノベーションの一時費用が響いた。しかし、半導体材料やイメージングが好調で、通期の売上高予想を3兆5,600億円に上方修正し、通期売上高を上方修正した。
決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,265億円 | +10.3% | 3.6兆円 | 23% |
| 営業利益 | 512億円 | -32.0% | 3,650億円 | 14% |
| 純利益 | 374億円 | -30.4% | 2,800億円 | 13% |
| 営業利益率 | 6.2% | |||
業績のポイント
2027年3月期第1四半期(2026年4月~6月)の連結売上高は8,265億円(前年同期比+10.3%)と大幅な増収を達成した。海外売上高が全体の69.3% を占め、円安(対ドル159円、対ユーロ185円)も追い風となった。一方、営業利益は512億円(同-32.0%)と急減、税引前四半期純利益は521億円(同-27.6%)、当社株主帰属四半期純利益は374億円(同-30.4%)と大幅な減益となった。利益減少の主因は、ヘルスケアのバイオCDMO事業における大型製造設備の稼働に伴う固定費増加、ビジネスイノベーション部門での体質強化を目的とした一時費用の発生、全社的な原材料高騰の影響である。しかし、半導体材料がAI需要を取り込み過去最高の営業利益を更新するなど、エレクトロニクス部門は311億円(同+38.2%)の大幅増益、イメージング部門も「instax」を中心に434億円(同+3.9%)と堅調で、増収と減益が共存する決算となった。
セグメント別動向
セグメント別の業績は以下の通り。
| セグメント | 売上高 (億円) | 前年同期比 | 営業利益 (億円) | 前年同期比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ヘルスケア | 2,568 | +12.4% | -127 | 赤字転落 | -4.9% |
| エレクトロニクス | 1,277 | +25.0% | 311 | +38.2% | 24.4% |
| ビジネスイノベーション | 2,732 | -0.1% | -14 | 赤字転落 | -0.5% |
| イメージング | 1,688 | +16.2% | 434 | +3.9% | 25.7% |
ヘルスケアは、売上高は2,568億円(+12.4%)と伸長したが、営業損益は127億円の赤字に転落した。内視鏡・超音波診断機器などのメディカルシステムが主要市場で好調だったほか、医療ITの「SYNAPSE」クラウド版発売、バイオCDMOでの米国ノースカロライナ拠点の大型設備稼働拡大、ライフサイエンス領域での培地・iPS細胞製品「iCell」の販売増などが増収に寄与。しかし、バイオCDMOの固定費が重く、部門全体の利益を圧迫した。子会社の再生医療等製品「セイビスカス®注」の製造販売承認取得など、将来への布石も打たれている。
エレクトロニクスは、売上高1,277億円(+25.0%)、営業利益311億円(+38.2%)と、全社の利益を牽引した。AI半導体需要の急拡大を追い風に、先端材料(CMPスラリー、NTI現像液、先端レジスト)の販売が世界的な大手ファウンドリー・半導体メーカー向けに急伸。後工程の先端パッケージング向け液型ポリイミドも伸長した。データテープを中心とするAF材料もIT需要で増収。半導体材料が過去最高益を更新し、市場平均を大きく上回る成長を続けている。
ビジネスイノベーションは、売上高2,732億円(-0.1%)と微減となり、営業損益は14億円の赤字に転落した。オフィスソリューションでの欧米・中国向け輸出減少、BPOサービスの前年特需の反動が響いたが、海外の基幹システム販売・導入支援やグラフィックコミュニケーションのインクジェットヘッド販売は好調。横浜みなとみらいにAI技術ブランド「REiLI Business」の拠点を開設し、構造改革を加速させている。部門全体では、体質強化に向けた一時費用が赤字の一因となった。
イメージングは、売上高1,688億円(+16.2%)、営業利益434億円(+3.9%)と好調。コンシューマー向け「instax」シリーズが中高価格帯を中心に販売を伸ばし、新型「instax mini 13」もグローバルで好評。デジタルカメラも「X-E5」「X100VI」などがアジアを中心に人気を持続。利益率は25.7%と高水準を維持し、エンタテインメントイメージングが収益の柱として確立しつつある。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ヘルスケア | 2,568億円 | 31% | -12,677百万円 | -4.9% |
| エレクトロニクス | 1,277億円 | 15% | 311億円 | 24.4% |
| ビジネスイノベーション | 2,732億円 | 33% | -1,445百万円 | -0.5% |
| イメージング | 1,688億円 | 20% | 434億円 | 25.7% |
財務状況と資本政策
第1四半期末の総資産は、前期末比+1,135億円の6兆1,673億円。有形固定資産が+886億円(主に設備投資の進捗)増加した。負債は+544億円の2兆2,638億円で、有利子負債の増加が主因。株主資本は+589億円の3兆8,985億円となり、株主資本比率は63.2%(前期末比-0.2pt)と依然高水準を維持している。
キャッシュ・フローは、営業活動で923億円の収入(同-25億円)を得たが、設備投資により投資活動で1,249億円の支出となり、フリー・キャッシュ・フローは-326億円の赤字。財務活動では長期借入等で63億円調達し、自己株式取得に300億円を支出した。現金及び現金同等物の期末残高は1,507億円と前期末比-199億円減少したが、手元流動性は十分とみられる。
配当は、2027年3月期予想で年間75円(前期は70円)への増配が計画されており、中間配当37.5円、期末37.5円を予定。自社株買いも実施し、株主還元姿勢を強めている。
リスクと課題
決算短信で示された主なリスク・課題は以下の通り。
- バイオCDMO収益化の遅れ:大型設備の稼働拡大により売上は伸びるが、固定費負担が先行し、黒字化には時間を要する可能性。
- 半導体メモリー価格の高騰:エレクトロニクス部門のコスト増要因として、通期利益に悪影響を及ぼす懸念がある。
- 原材料・エネルギーコストの上昇:全社的に売上原価を押し上げ、営業利益率は前年同期の10.0%から6.2%へ低下した。
- 為替変動:円安は増収に効くが、輸入コスト増や海外子会社競争力への影響は注視。通期想定レートは1ドル=156円、1ユーロ=181円に設定。
- 地政学的リスク・通商摩擦:特に半導体関連の輸出規制や中国市場の変調がエレクトロニクス部門の売上に影響する恐れ。
- 競争激化:デジタルカメラやヘルスケア機器市場での競合との差別化維持が必須。
会社は、エレクトロニクスの先端材料強化やヘルスケアのポートフォリオ変革により、収益力回復を目指すが、過渡的な収益悪化は当面の課題である。
通期見通し
2027年3月期通期の連結業績予想は、売上高を前回発表から+900億円上方修正し、3兆5,600億円(前期比+6.0%)とした。半導体材料やイメージングの販売好調に加え、為替前提をドル150円→156円、ユーロ175円→181円へ見直したことが寄与。一方、営業利益は3,650億円(同+4.2%)で据え置き。バイオCDMOの収益立ち上げの遅れやメモリー価格高騰などのコスト増を、エレクトロニクスの販売増や非中核資産売却益で吸収する計画だ。
| 項目 | 前回予想 (5月12日) | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3兆4,700億円 | 3兆5,600億円 | 3兆3,570億円 |
| 営業利益 | 3,650億円 | 3,650億円 | 3,502億円 |
| 純利益 | 2,800億円 | 2,800億円 | 2,767億円 |
| 想定為替($/円) | 150円 | 156円 | 151円 |
| 想定為替(€/円) | 175円 | 181円 | 175円 |
売上高は上方修正ながら利益は据え置きであり、通期での営業減益リスクは低減したものの、大幅な利益成長シナリオには至っていない。
研究開発・成長投資
第1四半期の研究開発費は423億円(前年同期比+4.1%)、設備投資は1,112億円(同-14.8%)だった。投資の焦点は依然として成長領域に集中している。
- ヘルスケア:設備投資829億円(同-24.0%)、研究開発費138億円(同-6.8%)。大型投資は抑制されつつも、バイオCDMO拠点やiPS細胞施設の整備、内視鏡・超音波の新製品開発に資金が振り向けられている。
- エレクトロニクス:研究開発費81億円(同+15.1%)、設備投資59億円(同+17.1%)。AI半導体向け先端材料の開発加速や、PFASフリー絶縁膜「ZEMATES」などの環境配慮型製品の開発に注力。
- ビジネスイノベーション:研究開発費150億円(同+7.5%)、設備投資130億円(同+4.5%)。AIソリューション「REiLI Business」やインクジェット技術などデジタル化に対応。
- イメージング:研究開発費43億円(同+41.7%)、設備投資73億円(同+146.3%)と大幅増。「instax」フィルム生産能力増強や新製品開発に積極的な投資が行われており、エンタメイメージングへの経営資源投入が鮮明となっている。
全体として、短期的なキャッシュフロー赤字を伴いながらも、将来の競争力基盤を固める投資が続けられている。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/6)
3,878円
最新終値(2026/10/23)
3,390円-12.6%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#富士フイルム#決算#決算分析#四半期決算#増収減益#上方修正#半導体材料#バイオCDMO#インスタックス
この記事はいかがでしたか?
クリックで反応を送信(登録不要)
Googleで業界ダイジェストを優先表示
Google検索の「トップニュース」やAIによる概要で、当サイトの記事が見つけやすくなります。
この記事を引用・シェアする
転載・引用は無料・許可不要(出典明記のみでOK)
https://www.gyokaidigest.com/companies/fujifilm/report/2027-Q1
関連記事
同社の関連記事
複合機・プリンタ・オフィス機器の最新記事
- 決算解説キヤノン2026年12月期 第2四半期(中間期)キヤノン、2026年12月期第2四半期決算、営業利益8%増で通期予想を上方修正

- 決算解説リコー2027年3月期 第1四半期リコー、2027年3月期第1四半期決算、営業利益277.8%増で通期予想据え置き

- 決算解説エプソン2027年3月期 第1四半期エプソン、2027年3月期第1四半期決算、営業利益46%増で通期予想を上方修正
- 決算解説コニカミノルタ2027年3月期 第1四半期コニカミノルタ、2027年3月期第1四半期決算 事業貢献利益25%増も営業減益

- 自己株式取得終了キヤノン9月7日キヤノン、200億円上限の自己株買いを6.1%分完了 光学精密機器業界首位の実力示す

- 戦略レビュー実施リコー10月6日リコー、PBR1倍割れ脱却へ独立社外取締役主導の戦略レビュー開始収益構造の抜本見直しへ






