ローム、2027年3月期第1四半期決算、営業利益が大幅回復し通期予想据え置き

ロームが発表した2027年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比 16.8%増 の 1357億3900万円、営業利益が前年同期のわずか1億9500万円から 96億3500万円 へと 大幅な黒字回復 を遂げた。自動車やサーバー向け半導体需要の拡大に加え、前期の減損処理に伴う減価償却費減少が利益を押し上げた。通期計画は据え置き、市場では構造改革の進展とSiC事業の本格収益化に注目が集まる。
決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,357億円 | +16.8% | 5,100億円 | 27% |
| 営業利益 | 96億円 | — | 300億円 | 32% |
| 純利益 | 90億円 | +203.6% | 290億円 | 31% |
| 営業利益率 | 7.1% | |||
業績のポイント
当第1四半期の連結業績は、売上・利益ともに大幅な改善 を示した。売上高は 1357億3900万円(前年同期比 16.8%増)となり、4四半期連続の増収。営業利益は 96億3500万円 と前年同期の 1億9500万円 から急回復し、営業利益率も 7.1% に上昇した。
経常利益は前年同期比 352.6%増 の 112億4300万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同 203.6%増 の 90億600万円 となった。また、EBITDA(営業利益+減価償却費)は前年同期比 38.5%増 の 184億6700万円 となり、収益力の回復が鮮明になっている。
増収の背景には、自動車市場におけるボディ・インフォテインメント向けLSIやxEV向けSiCパワーデバイスの堅調、コンピュータ&ストレージ市場におけるAIサーバー向け製品の大幅な需要拡大がある。一方、利益の急回復には、前期に実施した生産拠点再編や減損処理により、減価償却費が前年同期の131億円から88億円へと大きく減少 したことが大きく寄与している。構造改革の効果が数字に表れた形だ。
セグメント別動向
<LSI>
売上高は 621億2800万円(前年同期比 13.3%増)、セグメント利益は 73億1400万円(同 69.0%増)と、全セグメントの中で最も利益貢献が大きかった。自動車市場ではボディ・インフォテインメント向けが伸長し、産業機器市場も需要回復で堅調。コンピュータ&ストレージ市場ではAIサーバー向けが大幅増収となり、LSI事業の成長エンジンに なっている。一方、民生機器向けは調整局面で減収だった。利益率は 11.8% と高く、収益性の改善が進む。
<半導体素子>
売上高は 589億3200万円(同 25.2%増)と大きく伸ばしたが、セグメント損失は 9億4500万円 と依然赤字。ただし前年同期の 62億6300万円 の損失から大幅に縮小しており、赤字幅が急速に縮小 した点が注目される。SiCパワーデバイスはxEVやサーバー向けで堅調、Siパワーデバイスもサーバー向けで大幅増。汎用デバイスやLEDも産業機器向けを中心に改善しており、損益分岐点が近づいている。
<モジュール>
売上高は 80億7300万円(同 1.0%増)、セグメント利益は 10億1500万円(同 18.1%増)。プリントヘッドは事務機向け、オプティカル・モジュールはスマホ向けセンサが伸び、安定した利益を確保。利益率は 12.6%。
<その他>
売上高は 66億400万円(同 4.4%増)、セグメント利益は 9億300万円(同 11.3%減)。抵抗器は産業機器向けシャント抵抗や高信頼品が好調だが、コスト増などで減益となった。
下表にセグメント別主要指標をまとめる。
| セグメント | 売上高(百万円) | 前年同期比 | セグメント利益(百万円) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| LSI | 62,128 | +13.3% | 7,314 | 11.8% |
| 半導体素子 | 58,932 | +25.2% | -945 | -1.6% |
| モジュール | 8,073 | +1.0% | 1,015 | 12.6% |
| その他 | 6,604 | +4.4% | 903 | 13.7% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| LSI | 621億円 | 46% | 73億円 | 11.8% |
| 半導体素子 | 589億円 | 43% | -945百万円 | -1.6% |
| モジュール | 81億円 | 6% | 10億円 | 12.6% |
| その他 | 66億円 | 5% | 9億円 | 13.7% |
財務状況と資本政策
総資産は前年度末比 146億4300万円 増の 1兆2982億200万円。現預金が 4559億円 へ増加した一方、投資有価証券は時価評価などで減少した。純資産は同 161億7500万円 増の 7747億9200万円 となり、自己資本比率は59.1%から59.6%に上昇、財務の健全性がさらに高まった。
有利子負債は社債 2000億円、短期・長期借入金各 1000億円 と、自己資本に対して適度な水準。フリーキャッシュ・フローは開示されていないが、減価償却費の減少を考慮しても営業キャッシュ創出力は回復途上にある。
配当については、年間配当金 50円(中間25円・期末25円)の従来予想を据え置いた。前年度実績と同額であり、安定配当を維持する姿勢は投資家に評価されよう。目立った自社株買いの発表はなかった。
リスクと課題
会社側が「業績予想の適切な利用に関する説明」で指摘する通り、先行きには以下のリスクが存在する。
- 中東情勢に起因する原油価格上昇や物流・原材料調達への影響懸念
- 世界経済の不透明感、特に自動車市場でBEV需要の伸びに対する慎重な見方
- 民生機器市場における家電向け需要の弱さ
- 急激な為替変動(当期は為替差損も発生)
- 半導体市況の変動と競争激化による価格下落圧力
半導体素子セグメントは赤字が続いており、SiCパワーデバイスへの積極投資の収益化が最大の課題。生産拠点再編や価格適正化といった構造改革の効果を今後どれだけ積み上げられるかが、通期計画達成と中期的成長のカギとなる。
通期見通し
2027年3月期の連結業績予想は期初計画を据え置いた。売上高は前期比 6.0%増 の 5100億円、営業利益は同 176.1%増 の 300億円 を見込む。第1四半期の進捗率は売上高で約26.6%、営業利益で約32.1%と、やや保守的な印象だが、自動車・サーバー向けの需要次第では上振れも考えられる。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,100億円 | 5,100億円 | 4,814億円 |
| 営業利益 | 300億円 | 300億円 | 108億円 |
| 経常利益 | 360億円 | 360億円 | 192億円 |
| 当期純利益 | 290億円 | 290億円 | 107億円 |
世界経済の不透明感を理由に慎重姿勢を崩していないが、第1四半期の好調を踏まえれば、市場では今後上方修正期待も高まりそうだ。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/5)
4,749円
最新終値(2026/10/23)
3,732円-21.4%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#ローム#決算#決算分析#四半期決算#増収増益#半導体#自動車向け半導体#構造改革#業績回復#SiC
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コメント
ロームの第1四半期は、半導体不況からの力強い脱却を示す決算だった。前年同期の営業利益がわずか2億円弱だったことを思えば、今回の96億円は驚異的だが、その内訳には注意が必要だ。
減損損失の計上に伴う減価償却費の減少が利益増の大きなドライバーであり、実質的な事業採算性の改善はまだ道半ば。半導体素子セグメントが依然赤字である点も、SiC投資の重さを物語る。
とはいえ、売上高の伸びは本物であり、AIサーバーや自動車の電動化・電装化といった長期トレンドを追い風に、ロームの強い製品群(LSI、SiC、抵抗器)が再評価されている。構造改革の効果が本格的に表れ始めれば、増収と利益率改善の両輪が回り出す 可能性は高い。目先は為替や地政学リスクに注意しつつ、第2四半期以降のセグメント別損益の改善度合いを注視したい。
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