エーザイ、アルツハイマー病薬レケンビ皮下注射製剤が中国で在宅投与可能な初期療法として承認
エーザイは9月3日、抗アミロイドβ抗体「レケンビ」の皮下注射製剤(オートインジェクター)が中国国家薬品監督管理局(NMPA)から早期アルツハイマー病の初期療法として承認されたと発表した。中国初の在宅抗アミロイド療法となり、2026年度中の発売を予定。既存の静脈注射に比べ投与時間は1本あたり平均15秒と大幅に短縮され、患者や家族の通院負担軽減が期待される。

中国で2カ国目、優先審査で承認
中国国家薬品監督管理局(NMPA)は、エーザイとバイオジェンが共同開発する抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レケンビ」(一般名レカネマブ)の皮下注射製剤(SC-AI)を、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度認知症(初期AD)の初期療法として承認した。申請は2026年1月に受理され、優先審査を経た。SC-AIの初期療法承認は世界で2カ国目、中国では2024年6月に発売済みのIV製剤に続く剤形追加となる。
本剤は自己投与可能なオートインジェクターで、週1回2本(合計500mg)を皮下注射する。有効性と安全性は、早期AD患者1,795人を対象とした第Ⅲ相Clarity AD試験と、その長期継続試験(LTE)の複数の皮下投与サブスタディ(中国コホートを含む)に基づく。週1回SC-AI 500mg投与は、2週に1回のIV投与と同様の薬物暴露量を示し、臨床効果とバイオマーカー効果も同様に期待できることが確認された。注射部位反応は主に局所性で、安全性プロファイルはIV投与と概ね同様だった。なお、Clarity AD試験のコア試験では「レケンビ」はCDR-SBの18カ月時点の悪化をプラセボ比27%抑制した。
臨床上の柔軟性として、治療中にIV投与からSC投与へ、あるいはその逆への切り替えが可能とされた。これにより患者のライフスタイルや医療アクセスに応じた治療選択が可能になる。
投与15秒、在宅投与で通院負担を軽減
皮下注射製剤の最大の利点は投与時間の短縮と在宅投与の実現だ。「レケンビ」SC-AIは1本あたり平均投与時間15秒で、週1回2本を自宅で自己注射できる。従来のIV投与は医療機関で2週に1回の点滴が必要で、投与時間に加え通院や待ち時間、看護師によるモニタリングなど患者・家族の負担が大きかった。SC-AIにより、当事者やケアパートナーの通院負担が軽減し、外出や旅行の制約が緩和されるため、治療の開始・継続ハードルが大幅に低下する。
下表にIV投与とSC-AIの主な違いをまとめた。
| 項目 | 静脈注射(IV) | 皮下注射(SC-AI) |
|---|---|---|
| 頻度 | 2週に1回 | 週1回 |
| 投与時間 | 点滴のため長時間 | 1本あたり平均15秒 |
| 投与場所 | 医療機関 | 在宅(自己投与) |
| 通院負担 | 大きい | 大幅に軽減 |
| 医療資源 | 点滴キャパシティ・看護師モニタリングが必要 | 不要 |
また、ARIA(アミロイド関連画像異常)のモニタリングについては、SC-AIでもIV投与と同様に治療開始前および開始後の所定の時点でMRI検査が必要だ。在宅投与とはいえ、安全性管理の枠組みは維持される。医療資源の観点では、点滴静注キャパシティの確保や看護師によるモニタリングが不要になることで、AD治療パスウェイ全体の効率化に寄与すると期待される。
1700万人市場を狙う、業績影響は軽微
中国は世界でも有数のアルツハイマー病市場だ。エーザイの推計では、2024年時点で中国のADによる軽度認知障害および軽度認知症の当事者数は1,700万人に上り、高齢化の進展とともに増加していく見通しである。同社は2024年6月に「レケンビ」IV製剤を中国で発売し、抗アミロイド療法の確立をリードしてきた。今回のSC-AIは、中国で初めてかつ唯一の在宅投与可能な抗アミロイド療法であり、既存のIV製剤との使い分けや切り替えが可能な点も競合に対する優位性となる。
中国ではエーザイが販売と専門MRによる情報提供活動を担い、バイオジェンとの共同商業化体制の下で市場展開を進める。レケネマブは現在、日本、米国、中国、カナダ、欧州など53の国と地域で承認されており、SC-AIとしての初期療法承認は米国に次いで2カ国目。ただし、今回の承認による2027年3月期の業績予想への影響は軽微であり、2026年5月15日発表の業績予想に変更はないとしている。売上貢献は2026年度中の発売以降、徐々に顕在化する見通しだ。
開示前後の株価推移
開示当日の終値(2026/9/3)
4,811円
最新終値(2026/10/23)
5,076円+5.5%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#エーザイ#レケンビ#アルツハイマー病#中国承認#皮下注射#在宅医療#バイオジェン
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コメント
アナリスト視点: 今回の中国承認は、1,700万人と推計される早期AD市場へのアクセスを変える転換点だ。週1回15秒の自己注射は通院負担を減らし、治療継続率向上に直結するため、既存のIV製剤より高い浸透が期待できる。一方、ARIAのMRIモニタリング要件は残り、在宅投与でも医療機関との連携が普及のカギとなる。在宅治療の実現が中国市場の競争優位を確立するとみる。
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