エーザイ、2027年3月期第1四半期決算、売上収益15.6%増で増収増益

エーザイの2027年3月期第1四半期決算は、主要3製品が大幅伸長し、売上収益が前年同期比15.6%増の2,343億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が26.0%増の182億円と、増収増益を達成した。抗がん剤「レンビマ」、アルツハイマー病治療剤「レケンビ」、不眠症治療剤「デエビゴ」のグローバルな拡大に加え、円安も業績を押し上げ、全地域で二桁増収を記録した。
決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,343億円 | +15.6% | 8,835億円 | 27% |
| 営業利益 | 247億円 | +19.2% | 700億円 | 35% |
| 純利益 | 182億円 | +26.0% | 523億円 | 35% |
| 営業利益率 | 10.6% | |||
業績のポイント
エーザイ(エーザイ株式会社)の2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)連結業績は、売上収益が2,343億円(前年同期比15.6%増)、営業利益が247億円(同19.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益が182億円(同26.0%増)となり、大幅な増収増益となった。
売上収益の伸びを牽引したのは、抗がん剤「レンビマ」が973億円(同15.9%増)、アルツハイマー病治療剤「レケンビ」が293億円(同26.7%増)、不眠症治療剤「デエビゴ」が189億円(同37.9%増)と、主要3製品が世界で大きく売上を伸ばしたことだ。加えて、対ドルを中心とする円安進行も海外売上高を押し上げた。
一方、販売費及び一般管理費は「レンビマ」の売上拡大に伴う米メルク社への折半利益支払いや「レケンビ」への投入強化で前年同期比14.6%増、研究開発費も重要プロジェクトへの継続投資により同12.7%増と、費用は拡大した。しかし、売上総利益率の改善により営業利益は大幅増益を確保。一過性要因を除いたコア営業利益は247億円(同13.9%増)と、本業の収益力も堅調に推移している。
セグメント別動向
エーザイの医薬品事業(売上収益2,309億円、前年同期比16.4%増)は、全5地域で増収を達成。セグメント利益は全地域で二桁成長となった。
アメリカス事業:売上収益866億円(同22.3%増)、セグメント利益519億円(同25.0%増)。「レンビマ」が665億円(同14.5%増)、「レケンビ」が155億円(同70.5%増)、「デエビゴ」が33億円(同74.5%増)と、主要3剤がいずれも急拡大。レケンビの米国販売が7割超の伸びを示し、売上を牽引した。
中国事業:売上収益425億円(同16.6%増)、セグメント利益212億円(同18.2%増)。前年同期に「レケンビ」の在庫積み増しがあった反動で同剤は48億円(同37.3%減)となったものの、円安効果や「メリスロン」が51億円(同67.1%増)、「メチコバール」が37億円(同27.7%増)と底上げし、全体では増収を維持した。
日本事業:売上収益579億円(同3.4%増)、セグメント利益210億円(同8.1%増)。「デエビゴ」が124億円(同13.4%増)、「レケンビ」が61億円(同10.9%増)、「ジセレカ」が54億円(同25.2%増)と成長。一般用医薬品ではチョコラBBグループが39億円(同1.1%増)と堅調だった。
EMEA事業:売上収益236億円(同24.4%増)、セグメント利益125億円(同51.8%増)。「レンビマ/Kisplyx」が151億円(同36.6%増)、「レケンビ」が5億円(同341.2%増)と急伸。ベルギー・オーストラリアでレケンビを新発売し、欧州展開が加速している。
イーストアジア・グローバルサウス事業:売上収益202億円(同25.3%増)、セグメント利益95億円(同15.0%増)。「レンビマ」が52億円(同20.3%増)、「レケンビ」が24億円(同214.0%増)と急成長。ブラジル・インドで新発売した効果が表れた。
| セグメント | 売上収益(億円) | 前年同期比 | セグメント利益(億円) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 579 | +3.4% | 210 | +8.1% |
| アメリカス | 866 | +22.3% | 519 | +25.0% |
| 中国 | 425 | +16.6% | 212 | +18.2% |
| EMEA | 236 | +24.4% | 125 | +51.8% |
| イーストアジア | 202 | +25.3% | 95 | +15.0% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 579億円 | 25% | 210億円 | 36.3% |
| アメリカス | 866億円 | 37% | 519億円 | 60.0% |
| 中国 | 425億円 | 18% | 212億円 | 49.8% |
| EMEA | 236億円 | 10% | 125億円 | 52.7% |
| イーストアジア・グローバルサウス | 202億円 | 9% | 95億円 | 46.9% |
| その他事業 | 34億円 | 2% | 13億円 | 36.5% |
財務状況と資本政策
当第1四半期末の総資産は1兆5,581億円(前期末比1,090億円増)。売上拡大に伴う営業債権や「レケンビ」等の在庫積み増しにより流動資産が膨らんだ。負債は6,249億円(同1,009億円増)で、500億円の無担保社債発行や短期借入金増加が要因。親会社所有者帰属持分比率は58.2%(前期末比3.9ポイント減)と依然高水準だが、社債発行で財務レバレッジがやや上昇した。
キャッシュ・フローは、営業活動が26億円の支出(前年同期は11億円の収入)に転じた。売掛金・棚卸資産の増加で運転資本が拡大したためだ。投資活動は金融資産売却で65億円の収入。財務活動は社債発行と借入で579億円の収入となり、現金同等物残高は3,117億円(前期末比663億円増)に達した。
配当は中間・期末各80円、年間160円を予定。前期から据え置きながら、成長投資と株主還元のバランスを取っている。
通期見通し
2027年3月期の連結業績予想は期初計画から変更なし。売上収益8,835億円(前期比7.0%増)、営業利益700億円(同58.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益523億円(同35.6%増)を見込む。前期に計上した構造改革費用等の一過性要因が剥落し、本業の収益成長とコストコントロールにより大幅増益を計画する。コア営業利益は700億円(同39.8%増)と、本質的な収益力の向上を織り込む。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 前期比増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 8,254億円 | 8,835億円 | +7.0% |
| 営業利益 | 441億円 | 700億円 | +58.6% |
| 当期純利益 | 386億円 | 523億円 | +35.6% |
研究開発・成長投資
研究開発費は当四半期437億円(前年同期比12.7%増)と積極的な投資を継続。アルツハイマー病領域では「レケンビ」の皮下注射製剤が米国で初期療法の承認を取得、日本・中国でも申請中。抗MTBRタウ抗体「E2814」や新規オレキシン2受容体作動薬「E2086」などの重要プロジェクトも進行中だ。
がん領域では「レンビマ」とペムブロリズマブ+ベルズチファンとの3剤併用療法のフェーズⅢ試験が主要評価項目未達に終わったものの、ROS1陽性非小細胞肺がん治療薬「タレトレクチニブ」が英国で販売承認申請を受理された。
また、英国ハットフィールド工場への戦略的投資を決定し、レカネマブを含むコールドチェーン対応の供給体制強化を図る。成長投資のため500億円の社債を発行し、財務基盤も整えた。
リスクと課題
エーザイが開示する主なリスク要因は以下の通り。
- 為替変動:前提為替レート(1ドル153円、1ユーロ180円)に対し、円高方向に振れた場合、海外売上高・利益が目減りするリスクがある。
- 製品依存:売上の4割超を「レンビマ」が占め、同剤の競合激化や特許切れが業績に直結する構造。併用療法の試験失敗リスクも顕在化した。
- 研究開発の不確実性:アルツハイマー病領域への集中投資は高リターンが期待される一方、臨床試験の失敗や承認遅延が経営に大きな影響を与える。
- 薬価改定・ヘルスケア政策:各国の薬価引き下げや医療費抑制策は、主力製品の利益率を圧迫する可能性がある。
- サプライチェーン:コールドチェーン製品の生産能力拡大に伴う投資負担や品質管理の複雑さが課題となる。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/3)
4,656円
最新終値(2026/10/23)
5,076円+9.0%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#エーザイ#決算#決算分析#四半期決算#増収増益#レケンビ#レンビマ#デエビゴ#アルツハイマー#海外展開
この記事はいかがでしたか?
クリックで反応を送信(登録不要)
コメント
エーザイの第1四半期は、レケンビのグローバル上市が本格化し、売上成長が鮮明になった。特に米国ではレケンビが70%超の伸びを示し、早期アルツハイマー病市場での存在感が増している。一方で、営業キャッシュフローが支出に転じた点は注視が必要だ。在庫積み増しの一時的要因とはいえ、運転資本の膨張が続けば財務の柔軟性を損なうリスクもある。
通期予想を据え置いたことは、第1四半期の進捗が想定通りであることの証左だが、為替前提(1ドル153円)が現在の水準を大きく上回っており、実勢レート次第では上方修正の余地も残る。もっとも、「レンビマ」の3剤併用試験失敗は、がん領域のパイプラインリスクを再認識させる材料であり、アルツハイマー病への事業集中が一段と進むことになる。今後はレケンビの皮下注射製剤の普及ペースと、欧州・新興国での保険償還の進展が最大の焦点だ。
Googleで業界ダイジェストを優先表示
Google検索の「トップニュース」やAIによる概要で、当サイトの記事が見つけやすくなります。
この記事を引用・シェアする
転載・引用は無料・許可不要(出典明記のみでOK)
https://www.gyokaidigest.com/companies/eisai/report/2027-Q1
関連記事
同社の関連記事
大手製薬の最新記事
- 決算解説武田薬品2027年3月期 第1四半期武田薬品、2027年3月期第1四半期決算、売上収益10.2%増も円安効果、実質減収減益に

- 決算解説アステラス2027年3月期 第1四半期アステラス、2027年3月期第1四半期決算、売上27%増、営業益95%増

- 決算解説第一三共2026年3月期 通期第一三共・2026年3月期通期、売上高2.1兆円で過去最高——「エンハーツ」好調でコア利益15%増、ヘルスケア事業売却し癌領域へ集中

- 決算解説中外製薬2026年12月期 第2四半期(中間期)中外製薬、2026年12月期第2四半期決算、Core営業益21%増で通期予想据え置き

- 新薬承認申請受理武田薬品9月14日武田の乾癬薬ザソシチニブFDA優先審査受理、16週で約7割皮膚症状消失を達成

- 訴訟控訴提起第一三共9月28日第一三共、フォートिस買収妨害訴訟で控訴される2,033億円の損害賠償請求と再審理の行方






