大手製薬9社・2025〜26年通期決算比較、利益率の中外と成長組で明暗、勝者と苦戦企業の差が鮮明に
大手製薬9社は、売上高の平均が前年比7.7%増となり、8社が増収でした。一方、営業利益率は中外製薬の47.6%からエーザイの5.3%まで開きました。増益の中身も、主力薬の成長と一時的な利益で異なります。成長力と稼ぐ力の差が鮮明な決算です。
今期の総括
売上成長と利益の質で明暗
業界全体の動き
9社の売上高は、単純平均で前年比7.7%増でした。8社が増収となり、塩野義製薬は14.0%増で伸び率首位です。一方、武田薬品工業はビバンセの後発品参入で1.7%減でした。
利益は増加率だけで判断できません。アステラス製薬は営業利益が832.4%増でしたが、前年の大きな減損がなくなった影響があります。第一三共は営業利益が31.0%減でも、コア営業利益は15.1%増でした。
- 主力薬の世代交代が進みました。PADCEVやエンハーツなど、新薬の拡大が増収を支えています。
- 特許切れの影響が続きます。武田薬品工業では、ビバンセの減収が神経精神領域の重荷となりました。
- 一時的な損益が利益を左右しました。減損の縮小や資産売却益が、複数社の営業利益を押し上げています。
- 海外売上や為替も追い風です。協和キリンは海外売上比率が74%に上がり、国内の薬価改定を補いました。
なお、9社の決算期は2025年12月期と2026年3月期に分かれます。営業利益の定義や一時的な損益も異なるため、単純比較には注意が必要です。
売上高ランキング
営業利益ランキング
売上高 前年同期比
純利益 前年同期比
勝者と敗者
収益力で際立ったのは中外製薬です。売上高は1兆2,579億円で前年比7.5%増、営業利益は5,988億円で10.5%増でした。営業利益率は47.6%で、9社平均の20.9%を大きく上回ります。ヘムライブラの輸出や新製品が利益を支えました。
対照的に、利益面で最も苦戦したのはエーザイです。売上高は8,254億円で4.6%増でしたが、営業利益は441億円で18.8%減。利益率は5.3%と9社で最も低い水準です。レケンビの普及に向けた投資や構造改革費用が利益を圧迫しました。
売上成長だけでは勝敗が決まらないことも今期の特徴です。塩野義製薬は売上高が14.0%増、利益率も33.4%でした。一方、住友ファーマの営業利益は272.6%増ですが、事業譲渡益など一時要因も含みます。
- 好調
- 中外製薬
- 苦戦
- エーザイ


営業利益率ランキング
注目の動き・戦略比較
武田薬品工業は売上高が1.7%減でも、純利益は77.7%増でした。コスト効率化と減損損失の縮小が利益を支えています。成長製品・新製品の売上高も5.1%増え、主力薬の入れ替えを進めます。
アステラス製薬は売上高が11.9%増え、2兆円を突破しました。PADCEVやVYLOYが伸び、営業利益率は17.9%です。ただし、営業利益の急増には前年の減損影響の反動もあります。
第一三共はエンハーツなどが伸び、売上高は12.6%増でした。製造委託先への損失補償で営業利益は31.0%減りましたが、コア営業利益は15.1%増です。大衆薬事業の売却方針も、がん領域への集中を示します。
大塚ホールディングスは売上高が6.0%増、事業利益は3.6%増でした。営業利益の48.2%増には株式売却益も寄与しています。特許切れに備え、新製品や技術への投資を進めます。
協和キリンは売上高が0.3%増にとどまりましたが、コア営業利益は8.1%増でした。クリースビータの海外成長と費用管理が支えです。海外売上比率は74%となりました。
塩野義製薬は売上高が14.0%増え、4期連続で過去最高を更新しました。JTの医薬事業承継などで事業を広げています。ただし、純利益には負ののれん発生益も含まれます。
住友ファーマは売上高が13.7%増、営業利益は272.6%増でした。北米の主力3製品が伸び、事業譲渡益も利益を押し上げました。次期予想は売上高5,400億円、営業利益900億円です。
エーザイはレケンビの売上高が88億円へ伸びました。将来の成長に向けた費用が先行し、営業利益は減少しています。次期は売上高8,835億円、営業利益700億円を見込みます。
中外製薬はロシュの販路と自社の創薬技術を生かします。営業利益率は首位で、Core営業利益も12.1%増でした。研究開発と高収益製品の成長を両立できるかが焦点です。
業界共通のリスク
成長薬が売れても、特許や薬価、開発費の影響で利益は変わります。投資家は売上高だけでなく、利益の中身も確認したいところです。
- 特許切れで後発品が広がると、主力薬の売上が急減する恐れがあります。
- 新薬の臨床試験や承認が想定どおり進まないと、研究開発費を回収できません。
- 薬価改定や各国の価格規制は、販売量が増えても採算を下げる可能性があります。
- 為替の変動は、海外売上や輸出収益を押し上げる一方、反転時には逆風になります。
- 外部委託先の製造問題や供給不足は、販売機会の損失や補償費用につながります。
- 資産売却益や減損の反動に頼ると、本業の改善が見えにくくなります。
順位変化と就活生・転職希望者への視点
売上高では武田薬品工業が4兆5,057億円で首位です。営業利益では中外製薬が5,988億円で首位となり、売上規模と稼ぐ力の順位が分かれました。塩野義製薬と住友ファーマは増収率で上位ですが、一時要因を除いた成長の持続性が問われます。
就活生や転職希望者は、企業名だけでなく事業の成長分野も見ておきたいところです。がん領域やアルツハイマー病など、重点領域への投資が強まっています。研究開発、薬事、製造、海外事業など、必要な人材も広がります。
一方、コスト削減や事業再編が続く企業では、組織変更が起きる可能性もあります。配属先の製品構成や海外展開、研究開発の優先順位まで確認すると、入社後の仕事を想像しやすくなります。
タグ#大手製薬#医薬品業界#2026年3月期決算#中外製薬#武田薬品工業#アステラス製薬#第一三共#新薬開発#特許切れ#薬価改定
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