松井証券、2027年3月期第2四半期決算、営業利益61%増で中間純利益も拡大

松井証券の2027年3月期第2四半期決算を分析すると、営業収益は前年同期比42.8%増、営業利益は60.6%増、中間純利益は59.7%増となり、大幅な増収増益でした。国内株式市場の活況を背景に、同社の株式等委託売買代金が100%増え、手数料収入や信用取引収益が伸びました。株式市場の活況を利益成長に結びつけた中間決算ですが、業績予想は相場環境の不確実性を理由に開示していません。

決算の数字第2四半期累計
期初から6ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 |
|---|---|---|
| 売上高金融費用控除後 309億円+38.2% | 340億円 | +42.8% |
| 営業利益 | 165億円 | +60.6% |
| 純利益 | 104億円 | +59.7% |
| 営業利益率 | 48.4% |
この決算のポイント
- 1株式等委託売買代金は前年同期比100%増、委託手数料収入は42.5%増
- 2金融収支は48.1%増の117億円、信用取引残高の増加などが寄与
- 3販売費・一般管理費は19.2%増、取引所費用や広告宣伝費が膨らむ
- 4中間期末の総資産は前期末比9.0%増、自己資本比率は5.9%
- 5通期業績予想と2027年3月期の年間配当予想は、いずれも未定
業績のポイント
松井証券は2027年3月期中間期に、営業収益340億48百万円(前年同期比42.8%増)、営業利益164億84百万円(同60.6%増)、中間純利益104億35百万円(同59.7%増)を計上しました。経常利益も165億28百万円(同62.8%増)と大きく伸びています。
- 市場取引の拡大: 東京・名古屋の二市場の株式等売買代金は前年同期比88%増、松井証券の株式等委託売買代金は100%増となりました。
- 手数料収入の増加: 受入手数料は161億9百万円と42.0%増加。無料となる一日信用取引の割合が増え、手数料率は低下したものの、売買代金の伸びが上回りました。
- 金融収支の拡大: 金融収支は117億35百万円と48.1%増加。信用取引買残高の増加や顧客分別金信託の収益分配金増加が、支払利息の増加を補いました。
- 費用と特別損失: 販売費・一般管理費は143億74百万円と19.2%増加。金融商品取引責任準備金繰入れ12億61百万円を含む特別損失も計上しました。
日経平均株価は中間期中に大きく上昇し、半導体関連株などを中心に個人投資家の売買が活発になりました。営業利益の伸びが営業収益の伸びを上回った一方、広告宣伝費や取引所などに支払う費用も増えており、取引活況への依存とコスト増の両面を確認する必要があります。
- 営業利益+60.6%
- 経常利益+62.8%
- 中間純利益+59.7%
セグメント別動向
松井証券は証券業を主な事業としており、決算短信では複数の事業セグメントに分けた業績を開示していません。以下では、証券業の主な収益項目と関連事業の動きを整理します。
- 受入手数料: 161億9百万円と前年同期比42.0%増えました。中心となる委託手数料は154億21百万円で42.5%増加し、売買代金の拡大が手数料率の低下を補いました。
- 金融収支: 金融収益は149億25百万円と前年同期比58.1%増え、金融費用を差し引いた金融収支も48.1%増の117億35百万円となりました。信用取引買残高の増加などが増収を支えました。
- トレーディング損益: 30億5百万円と前年同期比1.6%減でした。主にFX取引から利益を得たものの、他の収益項目のような伸びには至りませんでした。
- 費用面: 販売費・一般管理費は143億74百万円と19.2%増加。取引関係費が30.8%増、事務費が16.1%増となり、売買活発化に伴う費用や事務委託費が膨らみました。
同社の収益は、株式委託手数料と信用取引に関わる金融収益が大きな柱です。株式相場が活況であれば取引増が収益を押し上げますが、無料取引の広がりや顧客の取引構成によって手数料率が変わるため、売買代金だけでなく収益の質も注目点です。
- 受入手数料+42.0%
- 委託手数料+42.5%
- 金融収支+48.1%
- トレーディング-1.6%
財務状況と資本政策
中間期末の総資産は1兆4,764億79百万円で、2026年3月末から9.0%増えました。自己資本比率は前期末の6.1%から5.9%へ低下しています。
| 項目 | 2027年3月期中間期末 | 前期末比・前期実績 |
|---|---|---|
| 総資産 | 1兆4,764億79百万円 | +9.0% |
| 純資産 | 869億86百万円 | +5.6% |
| 自己資本比率 | 5.9% | -0.2ポイント |
| 前期の年間配当 | 1株50円 | 中間25円、期末25円 |
総資産の増加は、信用取引貸付金が前期末比20.3%増の5,094億93百万円となったことが主因です。その原資として短期借入金なども増加し、会社は金融機関との当座貸越契約やコミットメントラインで資金調達の安全性を確保しています。
中間純利益104億35百万円を計上した一方、前期末配当金64億40百万円を支払ったことで、純資産は前期末比5.6%増にとどまりました。2027年3月期の年間配当予想は未定で、今回の短信に自社株買いの発表はありません。キャッシュフロー計算書の数値は短信に記載されていないため、ここでは評価対象としていません。
リスクと課題
松井証券は、証券業の業績が株式市場の相場環境に大きく左右されるとして、通期業績予想を開示していません。今回の好業績が市場の活況に支えられた面を踏まえ、次の点が課題となります。
- 相場変動リスク: 株価の下落や売買の減少は、委託手数料収入を押し下げます。信用取引に起因する金融収益も、信用取引残高や市場環境の変化に影響されます。
- 金利環境の変化: 金利上昇は顧客分別金信託の収益分配金などにプラスとなる一方、調達資金の支払利息を増やす可能性があります。中間期も金融費用は前年同期より増加しました。
- 手数料競争と取引構成: 一日信用取引の割合が上がると手数料率が下がる場合があります。売買代金が伸びても、取引内容によって収益の伸びが異なる点に注意が必要です。
- 費用・準備金の増加: 取引活発化に伴う取引関係費や事務費の増加に加え、金融商品取引責任準備金の繰入れが利益を圧迫する要因になります。
中東情勢や米国の政策金利、半導体・AI関連株の動向などが国内株式市場を揺らし、同社も中間期中の株価変動を記述しています。市場の活況が続くかだけでなく、取引が鈍化した局面で費用をどこまで抑えられるかが、利益の持続性を判断するポイントです。
戦略トピック
松井証券は、個人投資家向けの情報発信と、株式・FX・米国株の取引環境改善を進めました。投資情報の提供に加え、企業のIR活動を支援する動画制作・配信サービスも始めています。
- 動画コンテンツの拡充: YouTube公式チャンネルで「MATSUI SUMMIT」や「インベスターマスター」を配信。登録者数は108万人、総再生回数は2億回に達し、ネット証券のチャンネルとして業界No.1の地位を維持しています。
- 企業IR支援: 動画制作のノウハウを生かし、企業向けの動画制作・配信サービスを開始しました。投資家向け情報発信の支援を、新たなサービスとして展開します。
- 株式・FX・米国株の利便性向上: 日本株アプリの売買分析画面やチャート機能を拡充し、FXでは人気通貨ペアのスプレッド縮小や取引ツール改善を実施。米国株では人気銘柄を上場初日から取引できる対応も進めました。
- セキュリティ対策: パスキーを導入し、専用ダイヤルや動画によるサポートを通じて利用を促進しています。
取引手数料だけで差別化するのではなく、投資情報や使いやすさ、安心して取引できる環境を通じて顧客との接点を広げる狙いがうかがえます。動画チャンネルの規模を企業IR支援にも活用し、既存の個人投資家向けサービス以外に収益機会を広げられるかが今後の注目点です。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/28)
1,063円
最新終値(2026/10/28)
1,063円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/28更新
松井証券をライバルと比較
年収・業績・株価を並べて証券業界の今
掲載13社松井証券は証券業界の掲載13社中、売上高で8位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +22.5%全業界 +17.1%
- 予想の上方修正
- 1社下方 0社
- 営業利益率(業界)
- 13.8%
- 松井証券+39.7%
- 証券(業界平均)+22.5%
- 全業界+17.1%
- 予想修正今期予想を上方修正したのは1社、下方修正は0社。修正幅が最も大きいのは日本取引所(営業利益+34.3%)。
- 会社計画2027年度の会社計画(2社合計)は営業利益+29.6%。営業利益の伸びは全業界の計画(+11.4%)を上回る。




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相場活況の追い風を受け、売買代金の増加が手数料と信用取引収益の双方を押し上げた決算です。特に、売買代金の伸びだけでなく、無料取引の比率上昇による手数料率低下を増収で補った点は、個人投資家向けネット証券の収益構造をよく表しています。
一方、年間業績予想を出さない方針のため、投資家は月次の売買代金や手数料収益を追う必要があります。次の焦点は、株式市場が落ち着いた場合にも、動画を含む情報発信や米国株・FXのサービス改善が顧客基盤と収益の安定につながるかです。
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