東ソー、2027年3月期第1四半期決算、純利益198%増で通期予想を初開示

東ソーが発表した2027年3月期第1四半期決算は、中東情勢の緊迫化を背景としたナフサ価格上昇による在庫評価差益の大幅な改善や、付加価値素材・高機能材料の出荷増加により、営業利益が前年同期比93.9%増の312億円、親会社純利益が同198.0%増の195億円と急伸した。純利益が前年同期の3倍に拡大する中、通期業績予想を初めて公表し、売上高1兆1,700億円、純利益590億円を見込む。配当は年間100円を維持する方針だ。
決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,742億円 | +11.8% | 1.2兆円 | 23% |
| 営業利益 | 312億円 | +93.9% | 1,050億円 | 30% |
| 純利益 | 195億円 | +198.0% | 590億円 | 33% |
| 営業利益率 | 11.4% | |||
業績のポイント
東ソー(東ソー株式会社)の2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)連結決算は、売上高が前年同期比11.8%増の2,742億円、営業利益が同93.9%増の312億円、経常利益が同143.6%増の343億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同198.0%増の195億円と、大幅な増収増益を達成した。
最大の押し上げ要因は、ナフサ価格急騰による在庫評価差益の急拡大だ。国産ナフサ価格は前年同期の66,300円/KLから118,500円/KLへ約8割上昇。これにより基礎素材を中心に棚卸資産評価差が大きく改善し、営業利益を151億円押し上げた。また、為替が1ドル=144.6円から159.6円へ円安に振れ、16億円超の為替差益を計上したことも経常利益の急増に寄与した。
半導体向け石英ガラスやスパッタリングターゲットなどの高機能材料、クロロプレンゴムやエチレンアミンなどの付加価値素材の出荷が伸びたことも、利益拡大を後押し。一方、水処理エンジニアリングは増収ながら、前年の好採算案件の反動で営業減益となった。
通期業績予想については、前回(2026年3月期決算時)「未定」としていたが、今回初めて公表。売上高1兆1,700億円、営業利益1,050億円、純利益590億円を見込む。前提として、上期(4~9月)の国産ナフサ104,250円/KL、下期(10~3月)77,000円/KL、為替は上下期ともに160円/US$弱を想定している。
セグメント別動向
当期から報告セグメントが従来の4区分から、基礎素材、付加価値素材、バイオサイエンス、高機能材料、水処理エンジニアリングの5区分に変更された。前年同期の数値も新区分に組み替えて比較している。
| セグメント | 売上高(億円) | 前年差 | 営業利益(億円) | 前年差 |
|---|---|---|---|---|
| 基礎素材 | 1,248 | +131 | 57 | +90(黒字化) |
| 付加価値素材 | 429 | +52 | 82 | +43 |
| バイオサイエンス | 154 | 0 | 57 | +11 |
| 高機能材料 | 343 | +42 | 32 | +7 |
| 水処理エンジニアリング | 420 | +42 | 66 | △6 |
| その他 | 148 | +23 | 19 | +6 |
基礎素材は、エチレン・プロピレン等の出荷は定修や原料高で減少したが、売上高はナフサ価格転嫁により11.7%増の1,248億円。営業利益は、原燃料価格上昇による交易条件悪化があったものの、在庫評価差の大幅改善で前年同期の34億円の赤字から57億円の黒字へ転換した。なお、苛性ソーダは海外市況下落で輸出価格が低下したが、MDIは中東情勢の影響で海外市況が上昇し価格・出荷とも好調だった。
付加価値素材は、クロロプレンゴムやエチレンアミンが中東情勢による代替需要や円安を追い風に出荷が増加し、売上高13.9%増の429億円。営業利益は82億円と倍増した。HDI系硬化剤も海外市況上昇が追い風となった。
バイオサイエンスは、計測関連が欧州で減少したが、体外診断用医薬品やヘモグロビン分析装置用試薬が国内外で伸び、売上高は前年並み。為替影響と製品構成改善で営業利益は24%増の57億円。
高機能材料は、AI需要を背景に半導体製造装置用の石英ガラスが国内・東アジアで伸び、スパッタリングターゲットも海外で拡大。ハイシリカゼオライトは自動車用途などが堅調。売上高13.8%増の343億円、営業利益29.1%増の32億円。半導体需要が高機能材料をけん引する構図が鮮明だ。
水処理エンジニアリングは、台湾の半導体大型案件や米国案件が進捗し、売上高は11.1%増の420億円に拡大。しかし、前年の好採算プラント案件の反動で利益率が低下し、人件費やIT支出増も重なり、営業利益は8.7%減の66億円となった。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 基礎素材 | 1,248億円 | 46% | 57億円 | 4.6% |
| 付加価値素材 | 429億円 | 16% | 82億円 | 19.1% |
| バイオサイエンス | 154億円 | 6% | 57億円 | 37.0% |
| 高機能材料 | 343億円 | 13% | 32億円 | 9.3% |
| 水処理エンジニアリング | 420億円 | 15% | 66億円 | 15.7% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比600億円増の1兆4,689億円。現預金や売掛金、有形固定資産の増加が主因。負債は借入増加により504億円増の5,403億円、純資産は四半期純利益の計上などで95億円増の9,287億円。自己資本比率は57.3%と前期末の59.0%からやや低下したが、依然として高い水準を維持している。
キャッシュ・フローは、営業活動で0.4億円の収入にとどまった。税引前純利益は増加したが、運転資金の増加(売上債権+131億円、棚卸資産+107億円)と法人税等の支払増(167億円)が響き、前年同期比362億円の収入減。投資活動は設備投資支出の減少で200億円の支出(同58億円減)。フリー・キャッシュ・フローは196億円の支出となり、不足分は財務活動で補った。財務活動では短・長期借入金の純増で316億円の収入を確保。現金及び現金同等物の期末残高は1,902億円(前期末比136億円増)だ。
株主還元は、2026年3月期と同水準の年間配当100円(中間50円、期末50円)を予想。自社株買いの発表はないが、PBR1倍割れが続く中、今後資本効率の改善に向けた施策が注目される。
リスクと課題
会社が認識する主なリスクとして以下がある。
- 中東情勢の緊迫化:ナフサ・エネルギー価格の高騰と供給不安。在庫評価差益の押し上げ要因となったが、急反落時には逆に大きな評価差損を招く可能性がある。
- 為替変動:想定為替(上下期とも約160円/US$)より円高が進行すると、輸出採算や海外子会社の連結換算利益が悪化する。
- 原料・燃料コストの高止まり:ナフサや燃料価格が想定以上に高騰した場合、基礎素材を中心に交易条件が悪化。
- 中国経済の減速:不動産不況や内需低迷が継続。化学製品の需要に影響を及ぼす。
- 設備投資の増大:CFに見られるように、営業CFが大きく減少しFCFがマイナス。借入に依存する財務体質が強まっており、金利上昇リスクにも注意が必要。
通期業績予想は、上期に前提ナフサを104,250円/KL、下期を77,000円/KLと、現状の高い水準から大幅に低下する前提を置いており、ナフサ価格が高止まりすれば業績上振れ要因となる半面、急落すれば在庫評価差損が発生する可能性もある。
通期見通し
従来「未定」としていた2027年3月期通期連結業績予想を初めて公表。前回予想との比較は以下の通り。
| 項目 | 前回発表予想(A) | 今回発表予想(B) | 増減額(B-A) | 前期実績(2026年3月期) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高(億円) | - | 11,700 | - | 10,199 |
| 営業利益(億円) | - | 1,050 | - | 955 |
| 経常利益(億円) | - | 1,070 | - | 1,067 |
| 親会社純利益(億円) | - | 590 | - | 416 |
上期(中間期)の予想は売上高5,800億円、営業利益500億円。下期はナフサ価格が77,000円/KLに下落する前提で、営業利益は550億円を見込む。通期の為替前提は159~160円/US$程度で、現状とほぼ同水準。前期比で増収・増益だが、利益成長率は鈍化する見通し。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/4)
2,654円
最新終値(2026/10/23)
2,551.5円-3.9%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#東ソー#決算#決算分析#四半期決算#増収増益#化学#ナフサ#半導体#配当#上方修正
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