ANA、2027年3月期第2四半期決算、売上17.5%増も燃油費で営業減益

ANAの2027年3月期第2四半期決算は、訪日需要やレジャー需要を取り込み、売上高が前年同期比17.5%増の1兆3,987億円となりました。一方、燃油費などの増加で営業利益は9.7%減の881億円、純利益は11.8%減の670億円です。通期予想は売上高を上方修正したものの、営業利益は据え置き、コスト上昇を織り込みました。

決算の数字第2四半期累計
期初から6ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1.4兆円 | +17.5% | 2.9兆円 | 49% |
| 営業利益 | 882億円 | -9.7% | 1,500億円 | 59% |
| 純利益 | 671億円 | -11.8% | 990億円 | 68% |
| 営業利益率 | 6.3% | |||
この決算のポイント
- 1国際線旅客の好調やNCAの連結効果で、売上高は前年同期比17.5%増の1兆3,987億円
- 2燃油費などが重荷となり、営業利益は前年同期比9.7%減の881億円
- 3航空関連事業の営業利益は前年同期比164.9%増の104億円と伸長
- 4通期売上高予想を前回から1,000億円上方修正、営業利益予想は1,500億円で据え置き
- 5普通株式の年間配当予想は1株60円、前年実績の65円から減配の見込み
業績のポイント
ANA(ANAホールディングス)の2027年3月期中間期は、売上高が前年同期比17.5%増の1兆3,987億円となる一方、営業利益は9.7%減の881億円、親会社株主に帰属する中間純利益は11.8%減の670億円でした。売上高の増加が利益の伸びにつながらず、需要拡大と燃油高が同時進行した決算です。
- 旅客需要: 訪日客やレジャー需要を取り込み、国際線の旅客収入は前年同期比21.2%増。国内線の旅客収入も1.0%増でした。
- 貨物・連結効果: 半導体関連など高単価貨物の需要を取り込み、NCAの収入も加わりました。NCAの貨物収入は前年同期比187.7%増ですが、前年同期は7月以降の実績である点に留意が必要です。
- 費用負担: 燃油費などの増加が営業利益を圧迫しました。営業利益率は前年同期の約8.2%から約6.3%に低下しています。
航空需要の回復を売上に結び付けた一方、燃油価格や為替の変動が利益を左右する構造が改めて表れました。前年同期には負ののれん発生益などの特別利益があり、今期の純利益比較にはその差も影響しています。売上の勢いだけでなく、コストを吸収できる運賃や搭乗率を維持できるかが注目点です。
セグメント別動向
主力の航空事業は増収ながら減益となり、航空関連事業は利益を大きく伸ばしました。セグメント売上高はセグメント間取引を含む開示額で、構成比は各セグメント売上高の合計に対する比率です。
航空事業は売上高1兆2,892億円(前年同期比19.2%増)、営業利益801億円(同15.8%減)でした。国際線では訪日・日本発レジャー需要が旺盛で、国際線旅客の利用率も前年同期から3.0ポイント上昇。一方、燃油費などの増加が利益を押し下げました。
航空関連事業は売上高1,898億円(同9.2%増)、営業利益104億円(同164.9%増)でした。国際エクスプレス貨物の取扱高や、外国航空会社からの機内食関連業務の受託が増え、主要セグメントの中で利益の伸びが目立ちます。
- 旅行事業: 売上高319億円(前年同期比5.5%減)、営業利益9億円(同221.1%増)。ハワイ旅行や国内ダイナミックパッケージの集客が弱かった一方、コスト管理が利益を支えました。
- 商社事業: 売上高753億円(同3.3%増)、営業利益29億円(同18.9%減)。空港物販は好調でしたが、前年の大阪・関西万博関連需要の反動や人件費増が響きました。
- その他: 売上高251億円(同9.5%増)、営業利益14億円(同3.2%増)。不動産関連や航空保安事業の取扱高が増加しました。
| セグメント | 売上高(億円) | 構成比 | 営業利益(億円) | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 航空事業 | 12,892 | 81.3% | 801 | 6.2% |
| 航空関連事業 | 1,899 | 12.0% | 105 | 5.5% |
| 旅行事業 | 320 | 2.0% | 9 | 2.9% |
| 商社事業 | 754 | 4.7% | 29 | 3.9% |
| その他 | 252 | 1.6% | 14 | 5.7% |
※表の売上高はセグメント間取引を含み、端数処理のため開示額と1億円程度異なる場合があります。航空事業が売上の大半を占めるため、旅客需要の強さがグループ全体の増収をけん引しました。利益面では航空関連事業の伸びが目立つものの、主力航空事業の減益を補うには至っていません。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 航空事業 | 1.3兆円 | 81% | 801億円 | 6.2% |
| 航空関連事業 | 1,899億円 | 12% | 105億円 | 5.5% |
| 旅行事業 | 320億円 | 2% | 9億円 | 2.9% |
| 商社事業 | 754億円 | 5% | 29億円 | 3.9% |
| その他 | 252億円 | 2% | 14億円 | 5.7% |
通期見通し
ANAは2027年3月期の売上高予想を前回から1,000億円引き上げて2兆8,700億円としました。営業利益予想は1,500億円で据え置き、経常利益と純利益は小幅に上方修正しています。
| 項目(億円) | 前回予想 | 今回予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 27,700 | 28,700 | 25,392 |
| 営業利益 | 1,500 | 1,500 | 2,174 |
| 経常利益 | 1,370 | 1,390 | 2,197 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 960 | 990 | 1,691 |
会社は、堅調な旅客・貨物需要を見込み、売上高予想を前回比3.6%増額しました。ただし、為替・燃油市況の費用増を見込むため、営業利益は増額していません。前提とする為替レートは1ドル160円(前回155円)、ドバイ原油は1バレル90ドル(同75ドル)、シンガポール・ケロシンは150ドル(同90ドル)です。需要の上振れがコスト増をどこまで吸収できるかが、下期の焦点になります。
財務状況と資本政策
中間期末の総資産は前期末比639億円減の3兆8,911億円、自己資本比率は36.7%と前期末から1.0ポイント低下しました。営業活動によるキャッシュ・フローは1,360億円の収入で、投資活動も有価証券の償還などにより1,817億円の収入となりました。
- 財務基盤: 純資産は前期末から637億円減の1兆4,388億円。中間純利益を計上した一方、配当支払いや自己株式取得などが減少要因です。
- キャッシュフロー: フリー・キャッシュ・フローは3,178億円の収入、現金及び現金同等物は期首から2,325億円増の9,689億円でした。投資活動の収入には有価証券の償還が寄与しています。
- 有利子負債: 前期末から267億円増の1兆1,984億円。設備投資や資金調達の動向と合わせ、負債の推移を確認したいところです。
- 普通株式配当: 中間配当は1株30円、年間予想は60円。前期実績の65円から5円減る見通しで、予想の変更はありません。
- 自己株式取得: 財務活動のキャッシュ・フローには自己株式取得などによる740億円の支出が計上されています。
航空機などへの設備投資を進める一方、期末の現金残高は増加しました。普通株式の年間配当予想は前期を下回り、利益見通しも前期比で減益です。株主還元と財務余力の両立に加え、社債型種類株式の取得を将来どのように判断するかも、財務政策の確認点です。
戦略トピック
ANAは国内線ネットワークや貨物事業の効率化を進めるとともに、空港リテールの成長にも手を打っています。需要を取り込むだけでなく運航・販売体制を再編し、既存事業の収益力を高める方針です。
- 国内線の提携: アイベックスエアラインズと包括的業務提携に合意しました。2029年度をめどにANA側が路線便数の計画や販売を担い、同社が運航する体制を目指します。
- 機材の手当て: アイベックスエアラインズが運航する機材として、エンブラエルE190-E2型機を8機追加発注しました。経営資源の活用と国内航空ネットワークの維持・強化を狙います。
- 貨物事業の統合: ANA Cargo、日本貨物航空、NCA Japanの3社を2027年4月1日に統合する予定で、新ブランドを「ANA Nippon Cargo」としました。
- リテールの拡大: 全日空商事は食品・雑貨物販のAKOMEYA TOKYOを完全子会社化することを決定しました。空港販売網とブランド・マーケティング力を組み合わせる考えです。
提携や統合は、路線運営の効率化や貨物ネットワークの最適化、物販事業の成長につながる可能性があります。一方で、実際の利益貢献は各施策の実行や需要動向に左右されます。設備投資や統合後の運営コストに対し、どの程度の収益改善が得られるかが今後の評価材料です。
リスクと課題
会社は地政学リスクや自然災害への警戒を示し、業績予想も為替・燃油価格の前提を引き上げました。航空需要が堅調でも、外部環境の変化が費用や運航に波及する可能性があります。
- 燃油価格・為替: 原油やケロシン価格、円相場の変動は燃油費などに影響します。会社は前回予想より厳しい市況前提を置いており、想定を超える上昇は利益を圧迫するおそれがあります。
- 地政学リスク: ウクライナや中東地域の情勢などが懸念材料です。路線運営や航空貨物の需要・輸送環境に影響する可能性があります。
- 自然災害・運航継続: 台風などの悪天候や災害は欠航・遅延につながります。ANAは北海道に運航管理施設を新設し、羽田との2拠点体制で事業継続計画の実効性を高めています。
- 貨物の競争環境: 北米で競争環境が変化し、国際線貨物の輸送重量は前年同期をわずかに下回りました。高単価貨物の取り込みを続けられるかが収益維持の課題です。
通期予想は増収を見込む一方、営業利益は前期実績を下回る計画です。燃油・為替の変動に加え、需要の強さを運賃や搭乗率に反映し、コスト増を吸収できるかが利益回復の鍵となります。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/29)
2,862.5円
最新終値(2026/10/29)
2,862.5円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/29更新
ANAをライバルと比較
年収・業績・株価を並べて航空運送業界の今
掲載3社ANAは航空運送業界の掲載3社中、売上高で1位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +8.8%全業界 +16.0%
- 今期計画 営業利益
- −21.6%全業界 +11.7%
- 予想の上方修正
- 1社下方 0社
- 営業利益率(業界)
- 9.8%
- ANA+3.1%
- 航空運送(業界平均)+8.8%
- 全業界+16.0%
- 予想修正今期予想を上方修正したのは1社、下方修正は0社。修正幅が最も大きいのは日本空港ビル(営業利益+2.5%)。
- 会社計画2027年度の会社計画(3社合計)は売上高+9.0%・営業利益−21.6%。営業利益の伸びは全業界の計画(+11.7%)を下回る。



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今回の決算は、旅客・貨物の需要を背景に売上を伸ばしながら、燃油費の増加で利益が縮むという航空会社らしい難しさが表れています。売上高の上方修正に対して営業利益予想を据え置いた点は、需要の強さだけでは利益成長を保証しないことを示しています。
今後は、国際線の搭乗率や高単価貨物の取り込みが続くかに加え、燃油・為替コストを運賃や効率化でどこまで吸収できるかが焦点です。国内線提携や貨物会社統合は中長期の効率向上につながる可能性があり、施策の実行と採算改善を追いたい決算です。
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