IHI、2027年3月期第1四半期決算、営業利益250%増で通期予想を上方修正

IHIの2027年3月期第1四半期決算は、売上収益が前年同期比10.9%増の3,745億円、営業利益が同250.5%増の732億円と急拡大した。民間航空エンジンや防衛、原子力といった成長事業が業績をけん引し、主力の航空・宇宙・防衛セグメントを中心に大幅な採算改善が進んだ。通期業績予想も上方修正し、営業利益は前期比51.0%増の2,500億円を見込む。
決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,745億円 | +10.9% | 1.8兆円 | 20% |
| 営業利益 | 732億円 | +250.5% | 2,500億円 | 29% |
| 純利益 | 535億円 | +361.3% | 1,720億円 | 31% |
| 営業利益率 | 19.5% | |||
業績のポイント
IHI(株式会社IHI)の2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上収益3,745億48百万円(前年同期比10.9%増)、営業利益732億18百万円(同250.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益535億18百万円(同361.3%増)と、前年同期に比べて利益が大幅に拡大した。前年同期は営業利益が208億円にとどまっていたが、今期は一転して高水準の利益を確保。
増収増益の主因は、民間航空エンジン事業の旺盛な需要と、防衛・原子力といった成長事業の拡大だ。特に民間向け航空エンジンでは、小型機から大型機、ワイドボディ機まで幅広い製品群でスペアパーツ販売が好調に推移。また、防衛予算の増加を背景に防衛関連事業の受注が拡大し、原子力事業でも国内のライフサイクルビジネス(保守・サービス)需要が堅調だった。
一方、前年同期に計上された複数の事業譲渡に伴う減収要因があったものの、成長事業の伸びがこれを吸収。さらに、双腕過給機事業の採算改善や、保有する不動産の一部譲渡に伴う利益計上も営業利益を押し上げた。不動産譲渡益は営業利益に約100億円程度寄与したとみられる。
なお、2026年4月には、子会社のIHIエアロスペースがJAXAとの契約における虚偽報告問題で3カ月間の競争参加資格停止処分を受けた。現時点で業績への影響は軽微だが、今後のコンプライアンス強化が課題となる。
セグメント別動向
IHIは4つの報告セグメントで事業を展開。第1四半期の各セグメントの動向は以下の通り。
航空・宇宙・防衛は、民間航空エンジンのスペアパーツ販売が引き続き好調で、セグメント利益が大幅に拡大。特にボーイング737MAXやエアバスA320neo向けの小型エンジン「PW1100G-JM」のアフターマーケット需要が旺盛で、ワイドボディ機向けエンジンも堅調。防衛分野でも、防衛予算の増加を背景に装備品の受注・生産が拡大し、売上・利益ともに前年同期を大きく上回った。宇宙分野では、H3ロケットなどの打ち上げ需要に対応するため生産能力の増強を進めている。
資源・エネルギー・物流環境は、原子力事業の保守・サービス需要が堅調に推移。国内のコンバインドサイクル発電や原動機事業でも、ライフサイクルビジネス(長期保守契約)の拡大により安定収益を確保。物流環境事業では、港湾クレーンや物流システムの需要が底堅く、全体として増収増益となった模様だ。
産業・システム・汎用機械は、前年同期に苦戦した双腕過給機事業の採算が大幅に改善。価格適正化やコスト削減効果が表れ、黒字転換を果たした。また、圧縮機や分離装置、一般産業機械も堅調に推移し、セグメント全体の利益が回復。2025年4月に発表された物流・産業システム子会社(IF0)の豊田自動織機への譲渡計画は、今後の事業ポートフォリオ最適化の一環として注目される。
社会基盤は、橋梁・水門事業を中心に収益性が低く、前年同期に続いてセグメント損失を計上。建設コスト上昇や競争激化が響いた。ただし、立体駐車装置やパーキングシステムなどの一部製品では需要が回復しており、通期での赤字幅縮小を目指す。
| セグメント | 前年同期利益(推定) | 今期利益(推定) | 主な増減要因 |
|---|---|---|---|
| 航空・宇宙・防衛 | 黒字 | 大幅増益 | 民間エンジン・防衛好調 |
| 資源・エネルギー・物流環境 | 小幅黒字 | 増益 | 原子力・ライフサイクル拡大 |
| 産業・システム・汎用機械 | 赤字 | 黒字転換 | 過給機改善、価格適正化 |
| 社会基盤 | 赤字 | 赤字 | コスト高、競争激化 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 航空・宇宙・防衛 | - | - | - | - |
| 資源・エネルギー・物流環境 | - | - | - | - |
| 産業・システム・汎用機械 | - | - | - | - |
| 社会基盤 | - | - | - | - |
財務状況と資本政策
2027年3月期第1四半期末の総資産は2兆4,612億円と前期末から326億円増加。棚卸資産の増加が主因で、現金及び現金同等物は減少した。有利子負債を含む負債合計は1兆7,374億円と前期末比で微減。特に社債の償還や借入金の返済が進み、財務体質は改善傾向にある。親会社株主持分比率は28.3%(前期末26.9%)に上昇し、自己資本の充実が進んだ。
キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが支出超過(前年同期は収入超過)となった。棚卸資産の積み上がりや法人税等の支払いが影響した。投資活動では、不動産譲渡による収入があり収入超過。財務活動では、配当金の支払いや社債償還により支出超過となった。結果、現金及び現金同等物の四半期末残高は前期末比で減少した。
配当については、2025年10月の7分割を考慮した年間配当予想が23円(中間11.5円、期末11.5円)。前期の実績(分割後換算20円)から3円の増配となる見通しで、株主還元の強化がうかがえる。自社株買いの発表はなかったが、資本効率の改善と成長投資のバランスが今後の焦点だ。
通期見通し
IHIは第1四半期決算を受け、2027年3月期通期の業績予想を上方修正した。新たな予想は、売上収益1兆8,400億円(前期比12.0%増)、営業利益2,500億円(同51.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,720億円(同6.8%増)。
上方修正の最大の要因は、第1四半期の民間航空エンジン事業の好調さを反映したことだ。旺盛な航空需要が続くとの見方に加え、防衛・原子力分野でも堅調な受注が見込まれる。ただし、第2四半期以降の為替レートは1ドル=140円を前提としており、急激な円高が進めば業績の下押し要因となる。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 記載なし | 1兆8,400億円 | 1兆6,428億円 |
| 営業利益 | 記載なし | 2,500億円 | 1,655億円 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 記載なし | 1,720億円 | 1,610億円 |
前期比で営業利益が51%増という大幅増益を見込む背景には、成長事業への集中と不採算事業の整理が進んでいることがある。
リスクと課題
IHIが決算短信で言及する主なリスクと課題は以下の通り。
- 世界経済の不確実性:地政学的リスク(ウクライナ情勢、中東情勢)の長期化、米国の通商政策の先行き不透明感が、航空需要や設備投資に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 中国経済の減速:不動産市場の低迷や内需の伸び悩みが続けば、建機向け過給機や産業機械の需要に影響が出る恐れがある。
- 原材料・エネルギー価格の高止まり:インフレによるコスト上昇が収益を圧迫するリスクがある。
- 為替変動:対ドルをはじめとする急激な円高は、輸出競争力の低下や海外子会社の利益減少につながる。
- 競争環境:航空エンジン市場ではGE、ロールス・ロイスとの激しい競争があり、技術開発やコスト競争で遅れを取らないための継続的な投資が必要。
- コンプライアンス:2026年4月に発覚したJAXA向け契約における虚偽報告問題を受け、内部統制の強化と信頼回復が急務となっている。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/5)
2,691.5円
最新終値(2026/10/23)
2,450円-9.0%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#IHI#決算#決算分析#第1四半期決算#増収増益#上方修正#航空エンジン#防衛#原子力#配当増額
この記事はいかがでしたか?
クリックで反応を送信(登録不要)
コメント
今期のIHIは、民間航空エンジン事業の急回復が鮮明で、アフターマーケット需要の強さが際立つ。防衛・原子力も堅調で、長らく課題だった過給機事業の黒字化も達成し、ポートフォリオ改革が着実に進んでいる印象だ。一方、社会基盤の不振やコンプライアンス問題は早期の改善が望まれる。
通期見通しの上方修正はポジティブだが、為替前提(1ドル140円)にやや強気な印象も。現在の為替水準を考慮すると、さらなる上振れ余地もあれば、逆に円高リスクも抱える。中計の達成に向けて、成長投資と株主還元のバランスに注目したい。
Googleで業界ダイジェストを優先表示
Google検索の「トップニュース」やAIによる概要で、当サイトの記事が見つけやすくなります。
この記事を引用・シェアする
転載・引用は無料・許可不要(出典明記のみでOK)
https://www.gyokaidigest.com/companies/ihi/report/2027-Q1
関連記事
同社の関連記事
重工業・防衛・エネルギー機械の最新記事
- 決算解説三菱重工2027年3月期 第1四半期三菱重工、2027年3月期第1四半期決算、売上高15%増、事業利益65%増

- 決算解説川崎重工2026年3月期 通期川崎重工・2026年3月期通期、純利益23%増の1081億円——航空宇宙とロボットが牽引、配当増額と株式分割も発表

- 決算解説住友重機2026年12月期 第2四半期住友重機、2026年12月期第2四半期決算、営業利益73%増で通期予想を上方修正

- 決算解説カナデビア2027年3月期 第1四半期カナデビア、2027年3月期第1四半期決算、純損益が黒字転換し通期予想据え置き

- 中期ビジョン進捗川崎重工10月6日川崎重工業、2030年売上3.3兆円超を目標 防衛事業の上方修正と約2,000億円の成長投資で収益力強化へ

- 吸収合併住友重機6月29日住友重機械工業、連結子会社2社を吸収合併 – クレーン事業を再編強化






