日東電工、2027年3月期第2四半期決算、AI需要で営業利益12%増
日東電工の2027年3月期第2四半期決算を分析すると、AIデータセンターや半導体向け部材の需要を追い風に、売上収益は前年同期比8.7%増、営業利益は12.0%増と増収増益でした。円安も営業利益を196億円押し上げ、親会社株主に帰属する中間利益は11.0%増の765億円です。年間配当予想を72円に引き上げ、自己株式取得も決めました。

決算の数字第2四半期累計
期初から6ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,584億円 | +8.7% | 1.1兆円 | 50% |
| 営業利益 | 1,058億円 | +12.0% | 2,000億円 | 53% |
| 純利益 | 765億円 | +11.0% | 1,420億円 | 54% |
| 営業利益率 | 19.0% | |||
この決算のポイント
- 1インダストリアルテープはAIデータセンター向け材料などが伸び、営業利益が前年同期比51.3%増の358億円
- 2オプトロニクスは売上収益0.3%増にとどまり、営業利益は4.1%減の739億円
- 3年間配当予想を60円から72円に引き上げ、前期実績から20%増とした
- 42027年3月期の通期予想は据え置き、売上収益1兆1,100億円、営業利益2,000億円を見込む
- 5最大500億円、1,700万株の自己株式取得を決議し、資本効率と株主還元の向上を目指す
業績のポイント
日東電工株式会社(日東電工)の2027年3月期中間期は、売上収益が前年同期比8.7%増の5,583億円、営業利益が12.0%増の1,058億円、親会社の所有者に帰属する中間利益が11.0%増の765億円でした。売上収益は448億円、営業利益は113億円、中間利益は76億円それぞれ前年同期から増えています。
- AI・データセンター需要: データセンターや半導体の生産に使う部材の需要が伸び、関連製品の販売を押し上げました。
- ハイエンドスマートフォン: 組み立て用部材や高精度基板などの需要が堅調でした。
- 為替: 対米ドルの円安が営業利益を196億円押し上げました。
- 価格対応: 原材料価格の高騰に対し、販売価格の適正化を進めて利益への影響を抑えました。
営業利益の増加額を円安効果が上回っており、為替を除く事業要因には弱さも残ったとみられます。一方、増益を支えたデータセンター・半導体関連は構造的な需要拡大が期待される分野で、スマートフォン向けと合わせて成長の柱になっています。中間利益の増加に加え、基本的1株当たり中間利益も前年同期の101.32円から115.32円に上昇しました。
- インダストリアル+16.1%
- オプトロニクス+0.3%
- ヒューマンライフ+21.0%
セグメント別動向
インダストリアルテープは売上収益が2,081億円、営業利益が358億円となり、前年同期比でそれぞれ16.1%増、51.3%増でした。ハイエンドスマートフォンの電池固定用テープや、AIデータセンター向け半導体メモリ・セラミックコンデンサーの工程材料が伸びました。原材料高に対する販売価格の適正化も利益を支えています。
オプトロニクスは売上収益が2,707億円と前年同期比0.3%増でしたが、営業利益は740億円で4.1%減でした。回路材料ではスマートフォン向け高精度基板の新製品や、生成AI向けデータセンターで使う大容量HDD向けCISが伸長しました。一方、情報機能材料ではメモリ半導体価格の高騰を受け、ハイエンドノートパソコンやタブレット端末向け光学フィルムの需要が大きく落ち込みました。
ヒューマンライフは売上収益が843億円と21.0%増え、営業損益は前年同期の16億円の赤字から10億円の黒字に転じました。核酸医薬の受託製造で大型案件が商用生産に移り、核酸材料やインドを中心とした排水処理用膜、おむつ向け衛生材料も増収に寄与しました。
その他は新規事業を含み、売上収益は0.18億円、営業損失は41億円でした。先端半導体、環境ソリューション、医療デバイスの事業化に向けて経営資源を投じており、現時点では育成投資が先行しています。成長分野が伸びる一方、オプトロニクスでは製品群による明暗が分かれ、需要構成の変化が課題です。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| インダストリアルテープ | 2,081億円 | 37% | 358億円 | 17.2% |
| オプトロニクス | 2,707億円 | 49% | 740億円 | 27.3% |
| ヒューマンライフ | 843億円 | 15% | 10億円 | 1.2% |
| その他 | 18百万円 | 0% | -41億円 | -22788.9% |
通期見通し
日東電工は2027年3月期の連結業績予想を据え置き、売上収益1兆1,100億円、営業利益2,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,420億円を見込みます。売上収益は前期比8.0%増、営業利益は8.9%増の計画です。
| 指標(億円) | 前回予想 | 今回予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 11,100 | 11,100 | 10,282 |
| 営業利益 | 2,000 | 2,000 | 1,836 |
会社は、データセンター・半導体向けとハイエンドスマートフォン向け部材の需要が想定を上回る一方、ハイエンドノートパソコンやタブレット向け光学フィルムは弱含むと説明しています。通期予想は変えず、こうした強弱を踏まえてセグメント別の業績予想を見直しました。業績全体では成長を見込むものの、下期は電子機器向け光学フィルムの回復度合いが計画達成の焦点になります。
財務状況と資本政策
中間期末の総資産は1兆4,591億円で、2026年3月末から174億円増加しました。親会社所有者帰属持分比率は78.9%と、前期末の79.6%から0.7ポイント低下しています。
| 項目 | 2027年3月期中間期 | 前年同期・前期比 |
|---|---|---|
| 営業キャッシュフロー(億円) | 1,088 | 前年同期750から増加 |
| 投資キャッシュフロー(億円) | -626 | 前年同期-563から支出増 |
| 財務キャッシュフロー(億円) | -743 | 前年同期-830から支出減 |
| 期末現金同等物(億円) | 3,324 | 前期末3,598から減少 |
| 年間配当予想(円) | 72 | 前期実績60から12円増 |
配当は中間を30円から36円に引き上げ、期末予想も36円とし、年間では前期比20%増の72円を予定します。また、2026年11月から2027年3月までに最大1,700万株、取得総額500億円を上限とする自己株式取得を決議しました。中間期には既に約502億円の自己株式取得を実施し、取得株式の一部に当たる1,547万株を10月20日に消却しています。成長投資と並行して、手元流動性や株主資本を適正化し、資本効率とROEを高める方針です。
研究開発・成長投資
研究開発費は中間期に260億円となり、前年同期の233億円から11.7%増加しました。有形固定資産・無形資産の取得による支出も565億円と、前年同期の511億円を上回っています。
- 重点分野: 先端半導体、環境ソリューション、医療デバイスなどを新たな成長候補として育成しています。
- 事業化の方向: 新規事業ではPlanetFlags/HumanFlagsの候補テーマに経営資源を集中し、早期の事業化を目指しています。
- 既存事業の拡張: 核酸医薬の受託製造や核酸材料、データセンター向け材料など、需要拡大が見込める領域に対応しています。
研究開発費の増加は、足元のAI・半導体関連需要を取り込むだけでなく、次の収益源を育てる動きと重なります。ただし、新規事業セグメントは営業赤字が続いており、投資を将来の売上や利益につなげられるかが重要です。
リスクと課題
中間期は増収増益でしたが、為替や特定市場の需要変動が業績を左右しています。下期は成長分野の需要継続と、弱含む電子機器向け市場の回復が注目点です。
- 為替変動: 円安は営業利益を押し上げましたが、為替が反転すれば利益の下押し要因となる可能性があります。
- 光学フィルム需要: メモリ半導体価格の高騰に伴う顧客の生産調整が、ノートパソコン・タブレット向け需要を押し下げています。
- 原材料・エネルギー価格: 中東情勢の緊迫化やインフレによるコスト上昇が続けば、販売価格への転嫁が遅れた場合に採算を圧迫します。
- 地域別の景気差: 中国では内需の弱さが残り、欧州ではエネルギー価格やインフレが景気の重荷となっています。
- 新規事業の収益化: 先端半導体、環境、医療分野は投資が先行しており、事業化の遅れは赤字の長期化につながり得ます。
会社自身も、実際の業績はさまざまな要因で予想と大きく異なる可能性があるとしています。通期予想を達成できるかは、データセンター関連の勢いを維持しつつ、光学フィルムの弱さやコスト上昇をどこまで補えるかにかかっています。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/27)
3,600円
最新終値(2026/10/27)
3,600円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/27更新
化学業界の今
掲載60社日東電工は化学業界の掲載60社中、売上高で15位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +26.0%全業界 +16.1%
- 今期計画 営業利益
- +23.4%全業界 +10.8%
- 予想の上方修正
- 15社下方 0社
- 営業利益率(業界)
- 8.8%
- 日東電工−8.0%
- 化学(業界平均)+26.0%
- 全業界+16.1%
- 足元の業績今期第1四半期累計は43社合計で売上高+12.9%・営業利益+48.2%(前年同期比)。通期計画に対する進捗が標準ペースを上回る企業は27社、下回る企業は4社。
- 予想修正今期予想を上方修正したのは15社、下方修正は0社。修正幅が最も大きいのは大阪有機(営業利益+45.3%)。





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今回の決算は、AIデータセンターや半導体向けの需要を捉えた製品群が、日東電工の業績を押し上げた点が目を引きます。インダストリアルテープの利益の伸びに加え、ヒューマンライフが黒字転換したことも、成長領域の広がりを示しています。
一方、営業利益の増加額を円安効果が上回っているため、事業そのものの収益力がどれほど改善したかは、為替影響を分けて見る必要があります。オプトロニクスの売上が横ばいで利益が減った点も見逃せません。
増配と自己株式取得は株主還元を強める動きですが、研究開発や設備投資、新規事業の育成との両立が問われます。投資家はデータセンター需要の持続性と光学フィルムの回復を、就活生は既存の高収益事業と新規事業の投資配分を次の注目点にするとよいでしょう。
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