野村総研、2027年3月期第1四半期決算、増収増益で営業利益12%増、金融ITが牽引

野村総研の2027年3月期第1四半期決算を分析すると、売上収益が前年同期比7.5%増の2,104億55百万円、親会社株主に帰属する四半期利益が12.4%増の292億14百万円と、増収増益を達成した。金融ITソリューションとIT基盤サービスが牽引し、営業利益は12.0%増の417億11百万円となった。一方、コンサルティングと産業ITソリューションは利益が減少し、成長の質に課題も残る。
決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,105億円 | +7.5% | 8,500億円 | 25% |
| 営業利益 | 417億円 | +12.0% | 1,750億円 | 24% |
| 純利益 | 292億円 | +12.4% | 1,190億円 | 25% |
| 営業利益率 | 19.8% | |||
業績のポイント
野村総研(野村総合研究所)の2027年3月期第1四半期決算は、売上収益が前年同期比7.5%増の2,104億55百万円、営業利益が12.0%増の417億11百万円、親会社株主に帰属する四半期利益が12.4%増の292億14百万円となり、増収増益を達成した。営業利益率は19.8%と前年同期から0.8ポイント改善し、EBITDAマージンも26.0%へ上昇した。1株当たり四半期利益は51.42円と前年同期の45.43円から向上した。増収増益の主因は、金融ITソリューションとIT基盤サービスが好調だったことによる。一方、コンサルティングは公共案件の受注遅れで減益、産業ITソリューションは新規案件の利益寄与が限定的で減益となり、セグメント間で明暗が分かれた。
セグメント別動向
セグメント別では、最大の金融ITソリューションが売上収益1,205億17百万円(前年同期比8.9%増)、営業利益207億42百万円(同18.9%増)と大幅増益。良好な受注環境と運用サービス増加が収益性を押し上げ、営業利益率は17.2%へ1.4ポイント上昇した。中計2028で注力する金融ビジネスプラットフォームや豪州を中心としたグローバル事業の伸長も寄与している。
IT基盤サービスは売上収益576億80百万円(同10.3%増)、営業利益110億96百万円(同24.8%増)と、4セグメント中最も高い利益成長率だった。デジタルセキュリティ事業とDWP(デジタルワークプレイス)ソリューションが好調で、営業利益率は19.2%と2.2ポイント改善した。サイバー脅威の高まりを背景に、セキュリティ需要が追い風となっている。
コンサルティングは売上収益150億52百万円(同4.4%増)と増収だったが、営業利益は29億1百万円(同8.7%減)と減益。AIコンサルティング案件の受注は増えたものの、公共案件の受注獲得が遅れ、稼働率が低下した。営業利益率は19.3%へ2.8ポイント低下した。
産業ITソリューションは売上収益587億80百万円(同3.8%増)に対し、営業利益は67億11百万円(同10.9%減)と減益。新規案件が立ち上がり過程にあり、利益貢献が限定的だった。営業利益率は11.4%と1.9ポイント低下し、4セグメント中で最も低い水準となった。
| セグメント | 売上収益(百万円) | 前年同期比 | 営業利益(百万円) | 前年同期比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンサルティング | 15,052 | +4.4% | 2,901 | -8.7% | 19.3% |
| 金融ITソリューション | 120,517 | +8.9% | 20,742 | +18.9% | 17.2% |
| 産業ITソリューション | 58,780 | +3.8% | 6,711 | -10.9% | 11.4% |
| IT基盤サービス | 57,680 | +10.3% | 11,096 | +24.8% | 19.2% |
なお、当第1四半期より従来産業ITソリューションに含めていたNRI Australia Limitedを金融ITソリューションに区分変更しており、前期比較も変更後の数値で行っている。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| コンサルティング | 151億円 | 7% | 29億円 | 19.3% |
| 金融ITソリューション | 1,205億円 | 57% | 207億円 | 17.2% |
| 産業ITソリューション | 588億円 | 27% | 67億円 | 11.4% |
| IT基盤サービス | 577億円 | 9% | 111億円 | 19.2% |
財務状況と資本政策
第1四半期末の総資産は9,063億90百万円と前期末から5.6%減少した。主因は、営業債権が573億9百万円減少した一方、契約資産が86億47百万円増加し、定期預金の払い戻しでその他の金融資産が470億11百万円減少したことなどによる。親会社所有者帰属持分比率は41.2%と前期末の45.2%から4.0ポイント低下した。有利子負債はほぼ横ばいだが、自己株取得で資本が減少したため、グロスD/Eレシオは0.55倍、ネットD/Eレシオは0.19倍へ上昇した。
キャッシュフローは、営業活動で616億98百万円の収入(前年同期比25.6%増)を確保した。投資活動は定期預金の払い戻しにより360億88百万円の収入となり、フリー・キャッシュフローは977億87百万円と前年同期の2.15倍に拡大した。財務活動は自己株式取得710億56百万円と配当支払い240億90百万円により993億72百万円の支出となった。
同社は2026年4月に総額700億円(上限)の自己株取得を決議し、第1四半期中に147億71万株、699億99百万円を取得した。さらに6月には2,004万4,102株の自己株消却を実施。これらの施策により、発行済株式総数が減少し、1株当たり価値の向上が図られている。通期配当予想は前期比7円増の84円に引き上げられている。
リスクと課題
会社が認識するリスクとして、以下の点が挙げられる。
- 世界経済の不確実性:物価上昇の継続、金融資本市場の急速な変動、中東情勢の緊迫化など。
- 国内景気の下振れ:国内金利上昇や地政学リスクの高まりにより、企業のIT投資が抑制される可能性。
- セグメント別の課題:コンサルティングは公共案件の受注遅れによる稼働率低下、産業ITソリューションは新規案件の利益貢献が当面限定的であること。
- 為替・海外事業リスク:海外売上収益比率は13.4%にとどまるが、豪州を中心としたグローバル事業の拡大に伴い、為替変動や現地経済の影響を受ける可能性。
ただし、情報システム投資需要は堅調で、特にAI実装やデジタルセキュリティ領域は成長が見込まれる。
通期見通し
2027年3月期通期の業績予想は、売上収益8,500億円(前期比4.3%増)、営業利益1,750億円(同200.3%増)、親会社株主に帰属する当期利益1,190億円(同679.9%増)と、大幅な増益を見込む。前期は一時的な減損損失の影響で利益が大きく落ち込んだ反動もあり、増益率は極めて高い。本予想は期初から据え置かれており、第1四半期の進捗率は売上収益で24.8%、営業利益で23.8%と順調な滑り出しとなっている。
| 項目 | 通期予想 | 前期実績(参考) | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 850,000百万円 | 815,000百万円(推定) | +4.3% |
| 営業利益 | 175,000百万円 | 58,000百万円(推定) | +200.3% |
| 親会社株主に帰属する当期利益 | 119,000百万円 | 15,000百万円(推定) | +679.9% |
(注:前期実績は公表されていないため、増減率から逆算した推定値。実際の数値とは異なる可能性がある。)
戦略トピック
野村総研は2026年4月に新中期経営計画「NRIグループ中期経営計画(2026-2028)」を策定した。成長領域として、AIによるビジネス変革、デジタルセキュリティサービスの拡充、社会共創サービスの拡大の3つを掲げる。AI関連では、コンサルティングとITソリューションの連携強化や、金融ビジネスプラットフォームへのAI実装を進める。デジタルセキュリティでは、AIを組み込んだデジタルトラスト基盤の開発やグローバル体制の整備を図る。社会共創では、金融ビジネスプラットフォームの拡大と社会保障分野のソーシャルDXを推進する。
また、従業員持株インセンティブ・プラン「E-Ship」の再導入を発表しており、信託を通じて総額240億円の自社株取得を予定する(2026年8月4日~9月4日)。これにより、従業員の中長期的な企業価値向上へのインセンティブを強化する。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/7/30)
5,576円
最新終値(2026/10/23)
6,174円+10.7%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#野村総研#決算#決算分析#四半期決算#増収増益#金融IT#自社株買い#中計2028#野村総合研究所#AI戦略
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コメント
野村総研の第1四半期は、金融ITとIT基盤サービスが好調で全体を牽引した。特にIT基盤サービスの利益成長率24.8%は、デジタルセキュリティ需要の高まりを反映しており、中計の成長領域と合致している。一方、コンサルティングと産業ITの減益は一時的要因が大きいものの、公共案件の受注遅れは政府予算執行のタイミングに左右されやすく、下期での挽回が期待される。
資本政策は積極的で、700億円規模の自社株買いと消却によりROE改善が進む。通期予想は前期の減損影響からの大幅回復を見込むが、利益水準自体は過去のピークを超えるかどうかに注目。AI関連の受注拡大と、金融機関のIT投資意欲が今後の焦点となる。
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