スズキ、2027年3月期第1四半期決算、売上高22%増も原材料高で通期減益予想

スズキが2027年3月期第1四半期決算を発表し、売上収益は前年同期比22.0%増の1兆7,058億円、営業利益は11.2%増の1,580億円と増収増益となった。しかし、中東情勢に伴う原材料価格の高騰を受け、通期の営業利益予想を5,400億円(前期比13.3%減)に下方修正し、減益見通しを示した。四半期純利益は金融資産の評価益などにより80.0%増の1,836億円と大幅に伸びた。インド需要が好調で四輪販売を牽引した一方、原材料高が通期業績を圧迫する構図だ。
決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1.7兆円 | +22.0% | 6.9兆円 | 25% |
| 営業利益 | 1,580億円 | +11.2% | 5,400億円 | 29% |
| 純利益 | 1,836億円 | +80.0% | 4,200億円 | 44% |
| 営業利益率 | 9.3% | |||
業績のポイント
当第1四半期(2026年4〜6月)の連結売上収益は1兆7,058億円(前年同期比22.0%増)と大幅な増収を達成した。営業利益は1,580億円(同11.2%増)にとどまったが、税引前四半期利益は2,832億円(同61.2%増)、親会社の所有者に帰属する四半期純利益は1,836億円(同80.0%増)と急拡大した。これは保有する金融資産の評価益が1,306億円の金融収益を生み出したためで、本業の好調に加えて財務面での追い風が吹いた形だ。
売上増加の主因は、主力の四輪事業でインドやパキスタンでの販売台数が伸びたことにある。インドでは前年のGST(物品サービス税)改定以降の需要回復が続き、パキスタンでも旺盛な需要を取り込んだ。為替の円安進行も収益を押し上げた。一方、中東情勢の緊迫化による原材料価格の高騰が収益を圧迫しており、通期ではその影響がさらに強まると見られている。
セグメント別動向
四輪事業の売上収益は1兆5,417億円(前年同期比22.6%増)、営業利益は1,343億円(同12.5%増)と、全体をけん引した。インドでのGST改定効果が持続し、パキスタンでも販売が拡大。売上構成の改善や原価低減も寄与した。
二輪事業は売上収益1,244億円(同18.7%増)、営業利益144億円(同13.1%増)。インドや中南米での堅調な販売に加え、欧州での拡販が奏功した。
マリン事業は売上収益368億円(同15.6%増)と伸びたが、営業利益は85億円(同6.8%減)と減益。原材料高などが利益を圧迫した。
その他事業(電動車いす、太陽光発電など)は売上収益28億円(同14.1%減)、営業利益7億円(同7.3%減)と低調だった。
各セグメントの業績は下表の通り:
| セグメント | 売上収益 (百万円) | 営業利益 (百万円) | 営業利益率 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|
| 四輪事業 | 1,541,689 | 134,322 | 8.7% | 90.4% |
| 二輪事業 | 124,431 | 14,436 | 11.6% | 7.3% |
| マリン事業 | 36,846 | 8,544 | 23.2% | 2.2% |
| その他事業 | 2,802 | 706 | 25.2% | 0.2% |
| 合計 | 1,705,769 | 158,010 | 9.3% | 100% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 四輪事業 | 1.5兆円 | 90% | 1,343億円 | 8.7% |
| 二輪事業 | 1,244億円 | 7% | 144億円 | 11.6% |
| マリン事業 | 368億円 | 2% | 85億円 | 23.2% |
| その他事業 | 28億円 | 0% | 7億円 | 25.2% |
通期見通し
2027年3月期通期の連結業績予想を修正した。売上収益は前回予想の6兆8,000億円から6兆9,000億円(前期比9.6%増)に上方修正。為替前提を円安方向に見直したことや、世界販売の堅調が背景。一方、営業利益は前回予想の5,700億円から5,400億円(同13.3%減)へ下方修正した。事業活動面では為替効果や販売増、原価低減で800億円の増益要因があるが、中東情勢に起因する原材料価格の高騰がそれを上回るため、300億円の減額となる。税引前利益は7,200億円(同1.5%減)、親会社の所有者に帰属する当期純利益は4,200億円(同4.4%減)を見込む。
前期比では営業減益だが、為替や金融収益を考慮すると最終利益は高水準を維持する見通しだ。配当は中間25円、期末26円の年間51円(前期比5円増配)を予定している。
業績予想の比較:
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 (百万円) | 6,800,000 | 6,900,000 | 6,292,967 |
| 営業利益 (百万円) | 570,000 | 540,000 | 622,909 |
| 税引前利益 (百万円) | 660,000 | 720,000 | 730,744 |
| 親会社帰属純利益 (百万円) | 380,000 | 420,000 | 439,267 |
財務状況と資本政策
当四半期末の総資産は6兆7,984億円となり、前期末比1,615億円増加した。利益の積み上げに加え、金融資産の時価上昇が寄与した。負債は2兆4,612億円と前期末比225億円減少。借入金については世界情勢の不安定さを踏まえ、現在の水準を当面維持する方針。資本合計は4兆3,371億円(同1,840億円増)、親会社所有者帰属持分比率は52.1%(前期末51.0%)と財務基盤は一層強化された。
キャッシュ・フロー面では、営業活動で864億円の収入(前年同期640億円)、投資活動で44億円の支出(同273億円)、財務活動で548億円の支出(同341億円)となり、現金及び現金同等物は1兆66億円に増加した。
株主還元では、2027年3月期の年間配当を51円(中間25円、期末26円)と前期比5円の増配を予定。自社株買いについては記載がない。
リスクと課題
決算短信で言及された主なリスク要因は以下の通り:
- 地政学リスク:中東情勢の緊迫化が原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱を引き起こす可能性
- 原材料価格の変動:鋼材や非鉄金属などの価格上昇が収益を圧迫。通期見通しの下方修正にも直結
- 為替相場の変動:前提為替レートの変更が業績に影響。円安は増収要因だが、急激な変動はリスク
- 主要市場の経済情勢:インド、ASEAN、欧州など各地の景気動向や需要変化が販売に影響
- 競争環境:世界的な電動化シフトや新興メーカーとの競争激化に対する適応が必要
これらのリスクに対し、会社は「稼ぐ力」の改善活動(売上構成の改善、原価低減、固定費削減)を加速させるとしている。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/5)
1,926円
最新終値(2026/10/23)
2,071.5円+7.6%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#スズキ#決算#決算分析#四半期決算#増収増益#通期下方修正#原材料高#インド事業#自動車#配当増額#為替影響#中東リスク
この記事はいかがでしたか?
クリックで反応を送信(登録不要)
コメント
スズキの第1四半期は増収増益と好スタートを切ったが、通期の営業減益見通しが安心を妨げる。インド市場での強さは健在で、四輪販売が全体を牽引する構図は変わらない。しかし、中東情勢に絡む原材料高が利益を直撃しており、為替の追い風だけでは補いきれない厳しさがある。
注目すべきは金融収益の大幅な上振れで、これが純利益を押し上げている点だ。本業の収益力が試される中、会社が掲げる「稼ぐ力」の改善がどこまで効果を発揮できるかがカギとなる。配当増額はポジティブだが、営業利益の下方修正は市場の期待に冷や水を浴びせる可能性もある。今後の原材料価格の動向とインド市場の持続性に目を離せない。
Googleで業界ダイジェストを優先表示
Google検索の「トップニュース」やAIによる概要で、当サイトの記事が見つけやすくなります。
この記事を引用・シェアする
転載・引用は無料・許可不要(出典明記のみでOK)
https://www.gyokaidigest.com/companies/suzuki/report/2027-Q1
関連記事
同社の関連記事
乗用車メーカーの最新記事
- 決算解説トヨタ2027年3月期 第1四半期トヨタ、2027年3月期第1四半期決算は10%増収も営業益8%減、純益75%増で通期54兆円へ

- 決算解説ホンダ2027年3月期 第1四半期ホンダ、2027年3月期第1四半期決算、営業利益117%増で通期予想を上方修正

- 決算解説日産2027年3月期 第1四半期日産、2027年3月期第1四半期決算、営業利益779億円と黒字転換、売上高9.5%増

- 決算解説マツダ2027年3月期 第1四半期マツダ、2027年3月期第1四半期決算、営業利益328億円で黒字転換

- M&A・提携トヨタ9月16日トヨタ、中国合弁再編へ:市場縮小が収益構造に与える影響と投資視点

- 業務提携/共同開発契約日産8月31日日産とホンダ、次世代SDV向けECUとソフトウェア共通化で共同開発契約






