清水建設・2026年3月期通期、営業利益67.1%増の1,186億円——国内建築の採算改善が寄与、配当は前期比約1.9倍の72円へ大幅増配

清水建設が発表した2026年3月期決算は、売上高が前期比 5.8%増 の 2兆578億円 、営業利益が同 67.1%増 の 1,186億円 と大幅な増収増益を達成した。資材高の影響を吸収し、国内建築工事における徹底した採算改善が利益を押し上げたほか、政策保有株式の売却による特別利益の計上で純利益は 91.8%増 の 1,266億円 に達した。強固な業績を背景に、年間配当は前期の38円から 72円 へと大幅に引き上げられ、株主還元への積極的な姿勢が鮮明となっている。
決算の数字通期
1年間の確定値(前年比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 今期予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2.1兆円 | +5.8% | 2.3兆円 |
| 営業利益 | 1,187億円 | +67.1% | 1,530億円 |
| 純利益 | 1,266億円 | +91.8% | 1,300億円 |
| 営業利益率 | 5.8% | ||
業績のポイント
2026年3月期の業績は、売上・各段階利益ともに高い成長を記録した。売上高は 2兆578億円 (前年比 +5.8% )、営業利益は 1,186億円 (同 +67.1% )、純利益は 1,266億円 (同 +91.8% )となった。建設業界全体では資材価格の高止まりや人手不足が続く厳しい環境にあったが、同社は採算性を重視した受注戦略と工程管理の徹底により、主力である国内建築事業の収益力を劇的に回復させた。
特筆すべきは、最終的な利益を押し上げた特別利益の計上である。政策保有株式の縮減を加速させ、投資有価証券売却益 881億円 を計上したことが、純利益の過去最高水準への押し上げに寄与した。また、あおみ建設の連結子会社化に伴う「負ののれん発生益」 59億円 も利益を底上げする要因となった。
| 指標 | 2025年3月期実績 | 2026年3月期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆9,443億円 | 2兆578億円 | +5.8% |
| 営業利益 | 710億円 | 1,186億円 | +67.1% |
| 経常利益 | 716億円 | 1,223億円 | +70.7% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 660億円 | 1,266億円 | +91.8% |
セグメント別動向
主力の建設事業が全体の成長を牽引した。清水建設単体の建設事業は、売上高が 1兆4,774億円 (前年比 +7.0% )、セグメント利益は 906億円 (同 +60.7% )と大幅な増益を記録。前期に苦しんだ不採算案件の消化が進み、新しく受注した採算性の高い案件が寄与し始めたことが主因だ。
道路舗装事業(日本道路)は、売上高 1,683億円 (同 +2.5% )、セグメント利益 105億円 (同 +7.0% )と堅調に推移した。日本道路の完全子会社化により、グループ内での施工連携や管理体制の効率化が進んでいる。一方、投資開発事業は、売上高 531億円 (同 0.8%減 )、利益 167億円 (同 0.8%減 )と横ばいで推移した。
| セグメント名 | 売上高 | セグメント利益 | 前年比(利益) |
|---|---|---|---|
| 当社建設事業 | 1兆4,774億円 | 906億円 | +60.7% |
| 当社投資開発事業 | 531億円 | 167億円 | △0.8% |
| 道路舗装事業 | 1,683億円 | 105億円 | +7.0% |
| その他 | 4,892億円 | 305億円 | +22.4% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 当社建設事業 | 1.5兆円 | 72% | 907億円 | 6.1% |
| 当社投資開発事業 | 532億円 | 3% | 167億円 | 31.5% |
| 道路舗装事業 | 1,683億円 | 8% | 106億円 | 6.3% |
財務状況と資本政策
財務基盤は着実に強化されている。総資産は前期末比 1,301億円増 の 2兆6,543億円 となった。自己資本比率は、利益の蓄積と資本効率の向上により、前期の34.1%から 36.8% へと2.7ポイント改善している。同社は資本効率の向上(ROE向上)を経営の最優先課題の一つに掲げている。
資本政策において最も注目されるのが、政策保有株式の大幅な縮減である。2026年3月末までに連結純資産の20%以下という目標に対し、実質的な合意ベースでの保有比率は 9.1% まで低下し、目標を前倒しで達成しつつある。この売却資金は、成長投資や株主還元に充てられている。配当については、配当性向 40% を目安とする方針のもと、年間配当を前期の38円から 72円 (中間22円・期末50円)へと大幅に増額した。
リスクと課題
業績は回復基調にあるが、外部環境には依然として懸念材料が多い。会社側は以下のリスクを挙げ、注視を続ける方針を示している。
- 建設コストの上昇継続: 資材価格の高止まりに加え、エネルギー価格の変動が完成工事原価を圧迫するリスクがある。
- 深刻な人手不足: 建設業界全体で進む担い手不足により、労務費の上昇が避けられない状況にある。
- 海外経済の不確実性: 中東情勢や米国の通商政策など、地政学リスクが民間設備投資の意欲に与える影響が懸念される。
- 不採算案件のリスク: 受注時の見積精度向上に努めているものの、想定外の工期遅延や仕様変更による追加費用の発生リスクを完全には排除できない。
通期見通し
2027年3月期についても、増収増益の継続を見込む。売上高は 2兆3,100億円 (前期比 +12.3% )、営業利益は 1,530億円 (同 +28.9% )を予想。国内における公共投資の底堅さと、民間設備投資の持ち直しを背景に、さらなる収益性の向上を目指す構えだ。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆578億円 | 2兆3,100億円 | +12.3% |
| 営業利益 | 1,186億円 | 1,530億円 | +28.9% |
| 純利益 | 1,266億円 | 1,300億円 | +2.7% |
| 年間配当 | 72.00円 | 77.00円 | +6.9% |
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/5/11)
3,131円
最新終値(2026/10/23)
2,029円-35.2%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#清水建設#建設業界#増収増益#大幅増配#採算改善#政策保有株式#株主還元#日本道路#あおみ建設#過去最高益
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コメント
清水建設の今回の決算は、長く続いた「建設不況」のトンネルを抜け出し、利益重視の経営へと鮮やかに転換したことを印象付ける内容です。
特に注目すべきは、以下の3点です。
- 利益率の劇的な改善: 国内建築事業において、売上増加率を大きく上回る利益成長を達成しており、受注時の選別と徹底したコスト管理が功を奏しています。
- 攻めの資産整理: 政策保有株式の縮減を単なる目標に留めず、売却益を配当原資や成長投資へ回すという循環を作り出しており、資本効率を意識する投資家から高く評価されるでしょう。
- ポートフォリオの多角化: 道路舗装(日本道路)の完全子会社化や、海洋土木に強みを持つ「あおみ建設」の買収など、単なる建築・土木に依存しない強固な事業基盤の構築が着々と進んでいます。
今後は、人手不足という構造的な課題に対し、DXや建設ロボットなどの技術投資がどれだけ利益率のさらなる押し上げに貢献できるかが焦点となります。
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