第一三共、2027年3月期第2四半期決算、増収増益で通期予想を維持

第一三共の2027年3月期第2四半期決算は、売上収益が前年同期比19.7%増の1兆1,672億円、営業利益が34.4%増の1,937億円、親会社株主に帰属する中間利益が15.8%増の1,515億円となり、増収増益でした。エンハーツなど主力品の伸長と円安が売上を押し上げ、研究開発費や販売費が増えたものの、会社は通期予想を据え置きました。主力薬の成長で中間期は増収増益です。

決算の数字第2四半期累計
期初から6ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1.2兆円 | +19.7% | 2.3兆円 | 50% |
| 営業利益 | 1,938億円 | +34.4% | 3,200億円 | 61% |
| 純利益 | 1,515億円 | +15.8% | 2,510億円 | 60% |
| 営業利益率 | 16.6% | |||
この決算のポイント
- 1コア営業利益は前年同期比46.9%増の2,213億円。売上増や為替の影響が利益を押し上げた
- 2欧米でエンハーツ、ダトロウェイが伸長。為替の追い風もあり、売上収益は19.7%増
- 3通期の売上収益予想は2兆3,400億円で据え置き。中間期の売上進捗率は約49.9%
- 4年間配当予想は前期の78円から100円へ増配。中間配当は1株50円
- 5自己株式の取得枠を上限1,000億円、3,000万株として設定し、取得した株式を消却
業績のポイント
第一三共(正式社名は第一三共株式会社)は、2027年3月期中間期に売上収益、営業利益、親会社株主に帰属する中間利益のいずれも前年同期を上回りました。売上収益は前年同期比19.7%増、営業利益は34.4%増、親会社株主に帰属する中間利益は15.8%増です。
- コア営業利益: 2,213億円で前年同期比46.9%増。売上収益の増加や円安の影響などが寄与
- 税引前中間利益: 1,928億円で前年同期比18.2%増。営業利益の増加に対し、金融費用の増加などが利益の伸びを抑えた
- 基本的1株当たり中間利益: 83.22円で、前年同期の70.55円から上昇
- 営業利益とコア営業利益の差: 事業再編費用などをコア外の費用として計上し、営業利益の伸びはコア営業利益を下回った
売上をけん引したのは、がん領域の主力薬エンハーツやダトロウェイの伸長と円安です。一方、アストラゼネカとの共同開発に伴う費用などで販売費・一般管理費が増え、5つのDXd ADCや次世代製品群「Next Wave」への投資拡大で研究開発費も増加しました。売上の勢いが利益にも波及した一方、開発投資や事業再編費用を含むコストの動きも、今後の利益率を見るうえで重要です。
セグメント別動向
第一三共は医薬品事業の単一セグメントで事業を展開しており、短信では報告セグメント別の業績を開示していません。地域別の売上高表もこの資料の抜粋では数値を確認できないため、ここでは製品動向と会社が説明した増減要因を整理します。
がん領域の主力品は、エンハーツやダトロウェイが伸長し、全社の増収に貢献しました。為替の影響も売上を押し上げましたが、製品・地域によっては減収要因もあり、全ての市場で一様に伸びたわけではありません。
- エンハーツ: 米国、欧州、中国などで乳がんを含む複数の治療段階・がん種への承認を取得。適応拡大が販売機会の広がりにつながる
- ダトロウェイ: 米国・欧州で乳がんの一次治療などの承認を取得し、日本でも承認。臨床開発と販売地域の拡大を進めた
- 地域・製品間の差: 主力品の伸長がある一方、製品によって減収影響も発生。為替換算による押し上げも含まれる
同社の成長は、主力薬の販売拡大だけでなく、承認取得を通じた適応症・地域の拡大に支えられています。単一セグメントのため事業間の損益比較はできませんが、エンハーツなどの製品がどの地域で、どの治療段階まで普及するかが、今後の成長を左右する焦点です。
財務状況と資本政策
中間期末の総資産は前期末から増加し、親会社所有者帰属持分比率は前期末を下回りました。株主還元では、年間配当を前期比22円増の100円とする予想を掲げています。
| 項目 | 2027年3月期中間期・予想 | 前期末・前期実績との比較 |
|---|---|---|
| 総資産 | 4兆2,586億円 | 前期末比2,623億円増 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 41.3% | 前期末の42.1%から0.8ポイント低下 |
| 中間配当 | 1株50円 | 前年中間期の39円から11円増 |
| 年間配当予想 | 1株100円 | 前期実績78円から22円増 |
| 自己株式取得枠 | 上限1,000億円、3,000万株 | 取得した株式を消却 |
会社は現金及び現金同等物、棚卸資産、有形固定資産の増加などを背景に、総資産が前期末を上回ったと説明しています。キャッシュフロー計算書も開示されていますが、ここで確認できる抜粋には各活動の金額が判読可能な形で示されていません。配当は累進配当を基本方針とし、成長投資と株主還元を総合的に判断する考えで、自己株式取得も資本政策の選択肢に位置付けています。
通期見通し
第一三共は2027年3月期の通期業績予想を前回公表値から変更しませんでした。中間期は増収増益ですが、会社は計画を維持し、売上収益2兆3,400億円、営業利益3,200億円を見込んでいます。
| 指標 | 前回予想 | 今回予想 | 前期比予想 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆3,400億円 | 2兆3,400億円 | +10.2% |
| コア営業利益 | 3,600億円 | 3,600億円 | +15.6% |
| 営業利益 | 3,200億円 | 3,200億円 | +24.0% |
| 親会社株主に帰属する当期利益 | 2,510億円 | 2,510億円 | -10.3% |
中間期の売上収益は通期予想の約49.9%、営業利益は約60.6%に相当します。主力品の伸びと円安が進捗を支える一方、通期の親会社株主に帰属する当期利益は前期比で減少する予想です。短信は予想を据え置いた理由の詳細までは示しておらず、下期の販売動向、開発費や事業再編費用、為替の変化が計画達成の確認点となります。
研究開発・成長投資
第一三共は、5つのDXd ADCの製品価値を高める投資と、次の成長を担う「Next Wave」の創出を進めています。研究開発費は前年同期比で増加しており、主力品の適応拡大と次世代の創薬基盤づくりを並行させる方針です。
- DXd ADC: トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)など5品目に経営資源を集中し、臨床開発を加速
- 適応拡大: エンハーツは乳がんや固形がんなどで承認を取得。ダトロウェイも乳がんの治療で米国、欧州、日本などの進展があった
- Next Wave: 標準治療を変える製品群の創出を目指し、グローバル臨床開発を推進
- 技術基盤: ADC技術を深めるとともに、ADC以外の複数のモダリティにも研究開発を広げ、2030年度までにDXd ADCに続く複数のBGTを特定する目標
研究開発費の増加は短期利益を抑える要因ですが、承認や適応拡大が進めば販売機会の拡大につながります。投資家にとっては、既存の主力製品が成長を続けるかに加え、開発中の候補が次の収益の柱に育つかが中長期の評価材料です。
リスクと課題
主力薬の販売拡大と適応症の追加が成長を支える一方、医薬品開発には承認や臨床試験の不確実性が伴います。会社が挙げた事業環境や開発状況を踏まえると、次の点に注意が必要です。
- 為替変動: 円安は円換算の売上や利益を押し上げましたが、為替が反転すれば業績の下押し要因になり得る
- 主力品への依存: エンハーツなどの成長が業績を支える構図であり、販売動向や競争環境の変化が全社業績に影響する
- 臨床開発・承認: 試験結果や審査の進展によって、製品化や適応拡大の時期、販売機会が変わる可能性がある
- 開発候補の不確実性: イフィナタマブ デルクステカンでは、米国で進行期小細胞肺がんを対象とした承認申請を自主的に取り下げた。開発計画や期待収益への影響を見極める必要がある
- 費用の増加: 研究開発費や共同開発に伴う販売費などが増えており、売上成長が利益の伸びに結び付くかが課題
同社は主力品の適応拡大と次世代候補への投資を同時に進めています。販売の伸びだけでなく、臨床試験の結果、承認取得、投資費用の回収が計画どおり進むかを継続して確認する必要があります。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/30)
2,754円
最新終値(2026/10/30)
2,754円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/30更新
第一三共をライバルと比較
年収・業績・株価を並べて製薬業界の今
掲載24社第一三共は製薬業界の掲載24社中、売上高で5位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +10.9%全業界 +14.9%
- 今期計画 営業利益
- +12.2%全業界 +13.0%
- 予想の上方修正
- 7社下方 1社
- 営業利益率(業界)
- 13.9%
- 第一三共−24.9%
- 製薬(業界平均)+10.9%
- 全業界+14.9%
- 足元の業績今期第1四半期累計は11社合計で売上高+14.2%・営業利益+55.2%(前年同期比)。通期計画に対する進捗が標準ペースを上回る企業は9社、下回る企業は8社。
- 予想修正今期予想を上方修正したのは7社、下方修正は1社。修正幅が最も大きいのは大塚HD(営業利益+35.6%)。






タグ#第一三共#決算#決算分析#四半期決算#増収増益#エンハーツ#DXd ADC#増配#研究開発投資
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エンハーツなどの主力薬の販売拡大と承認地域・適応症の広がりが、今回の増収増益を支えました。中間期の営業利益進捗は通期予想を上回るペースですが、会社は予想を据え置いており、下期の為替や開発費、製品ごとの販売差を慎重に見ている印象です。
注目したいのは、主力品の成長を次の創薬技術へつなげられるかです。研究開発費の増加は短期的な負担になる一方、主力薬の適応拡大と次世代候補の成果が両立すれば、中長期の収益基盤を強める可能性があります。
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- 2026年3月期 通期
- 2026年3月期 第3四半期




