大塚HD、2026年12月期第3四半期決算、利益予想を上方修正し事業利益19%増

大塚HDの2026年12月期第3四半期決算を分析すると、1〜9月の売上収益は前年同期比12.3%増、営業利益は4.0%増、親会社の所有者に帰属する利益は8.2%増となった。医療関連の主力薬やロイヤリティ収入、健康関連製品が伸び、利益予想を引き上げる増益決算となった。通期の売上収益予想は据え置く一方、コスト管理などを背景に営業利益予想を4.1%引き上げ、年間配当も前期比で増やす計画だ。

決算の数字第3四半期累計
期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2.0兆円 | +12.3% | 2.7兆円 | 75% |
| 営業利益 | 4,237億円 | +4.0% | 4,880億円 | 87% |
| 純利益 | 3,221億円 | +8.2% | 3,700億円 | 87% |
| 営業利益率 | 20.7% | |||
この決算のポイント
- 1医療関連の主力薬やロイヤリティ収入が寄与し、事業利益は前年同期比19.2%増の4,368億円
- 2医療関連事業の売上収益は14.2%増、レキサルティは21.4%増、エビリファイ アシムトファイは66.6%増
- 3通期営業利益予想を4,690億円から4,880億円へ4.1%引き上げ、売上収益予想は据え置き
- 4年間配当予想は前期の140円から200円へ増額、自己株式の取得と消却も実施
- 5トランセンド社を7億米ドルで買収し、PTSD治療薬候補TSND-201の開発を進める
業績のポイント
大塚HD(大塚ホールディングス)の2026年1〜9月期は、売上収益が前年同期比12.3%増の2兆424億円、営業利益が4.0%増の4,237億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が8.2%増の3,221億円だった。売上収益の増加額は2,236億円で、全事業セグメントが増収となった。
- 事業利益: 19.2%増の4,368億円。医療関連の主力製品やロイヤリティ収入の伸びが寄与した。
- 1株利益: 612.03円と前年同期の560.81円から上昇。自己株式取得による株式数の変化も影響する。
- 研究開発費: 4.7%増の2,603億円。臨床開発の進展などを受けて投資を続けた。
売上成長が事業利益の伸びを上回る背景には、レキサルティやロンサーフ、持続性注射剤などの販売拡大に加え、ロイヤリティ収入と米国輸液事業の寄与がある。一方、営業利益の伸びが事業利益より小さいのは、前年同期にその他の収益が多く計上されていた反動などが表れているためだ。経常的な収益力を示す独自指標の事業利益は、売上総利益の増加や費用管理を反映して、より高い伸びとなった。
セグメント別動向
医療関連事業が全体の成長をけん引し、ニュートラシューティカルズ関連事業や消費者関連事業、その他の事業も増収となった。各セグメントの売上収益と事業利益の前年同期比は次の通り。
- 医療関連事業は売上収益が14.2%増、事業利益が21.4%増。レキサルティは米国と日本で処方が伸び、売上収益は21.4%増の2,964億円。エビリファイ アシムトファイも1カ月製剤などからの切り替えが進み、66.6%増の429億円となった。一方、サムスカ/ジンアークは米国で後発医薬品が浸透し、31.1%減の1,251億円だった。
- ニュートラシューティカルズ関連事業は売上収益が6.9%増、事業利益が3.9%増。ネイチャーメイドなどの販売が米国で好調だったほか、女性の健康カテゴリーではエクエルが新規・定期顧客の拡大で伸びた。ポカリスエットは国内で天候不順の影響を受けたが、海外販売が増えた。
- 消費者関連事業は売上収益が4.5%増、事業利益が15.8%増。クリスタルガイザーやマッチは国内の天候の影響で販売数量が前年を下回った一方、持分法投資利益の増加などが利益を押し上げた。
- その他の事業は売上収益が12.8%増、事業利益が9.9%増。自動車・電子機器向け機能化学品の出荷や、医薬品共同物流の拡大が寄与した。
医療関連事業では、成長製品の伸びがサムスカ/ジンアークの後発品影響を補った。ニュートラシューティカルズ関連事業は、国内飲料の天候リスクを抱えながら、海外ブランドや女性の健康、健康維持を支える製品群が成長を支えている。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 医療関連事業 | 1.5兆円 | 72% | 3,802億円 | 26.0% |
| ニュートラシューティカルズ関連事業 | 4,606億円 | 23% | 560億円 | 12.2% |
| 消費者関連事業 | 269億円 | 1% | 245億円 | 90.9% |
| その他の事業 | 943億円 | 5% | 72億円 | 7.6% |
通期見通し
大塚HDは2026年12月期の営業利益予想を前回の4,690億円から4,880億円へ、19億円引き上げた。売上収益の予想は2兆7,250億円で据え置いた一方、事業利益や親会社の所有者に帰属する当期利益も上方修正した。
| 項目(億円) | 前回予想 | 今回予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 27,250 | 27,250 | 24,689 |
| 事業利益 | 4,700 | 5,000 | 4,461 |
| 営業利益 | 4,690 | 4,880 | 4,794 |
| 親会社帰属当期利益 | 3,550 | 3,700 | 3,632 |
会社は、医療関連事業でレキサルティやボイザクトなどが好調な一方、ニュートラシューティカルズ関連事業では機能性飲料が前回想定を下回ると見込む。売上収益全体は前回予想の範囲内としつつ、販売管理費の抑制や研究開発費の見直しで利益を上積みする計画だ。研究開発費の通期予想は3,730億円と、前回から120億円引き下げた。
財務状況と資本政策
9月末の総資産は4兆3,233億円で、2025年末から1,257億円増加した。自己資本に相当する親会社所有者帰属持分比率は74.4%と、前期末から2.1ポイント上昇している。
| 項目 | 2026年1〜9月期・9月末 | 前年同期・前期末との比較 |
|---|---|---|
| 総資産(億円) | 43,233 | 前期末比1,257億円増 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 74.4% | 前期末の72.3%から上昇 |
| 営業キャッシュフロー(億円) | 3,341 | 前年同期比153億円増 |
| 投資キャッシュフロー(億円) | -2,062 | 前年同期より支出939億円増 |
| 年間配当(円) | 200 | 前期の140円から増配予想 |
営業キャッシュフローで投資と株主還元を賄いきれず、現金及び現金同等物は期末に4,725億円となり、年初から622億円減った。投資キャッシュフローの支出増加には、TSND-201の取得に伴う無形資産の計上などが影響している。
年間配当は中間100円、期末予想100円で、前期の年間140円から増える計画だ。自己株式は市場買付で約4,999億円ではなく約500億円を取得し、10月30日には取得済みの453万7,700株を12月に消却する決議を公表した。成長投資を続けながら、資本効率の向上と株主還元を進める方針がうかがえる。
戦略トピック
大塚製薬は2026年6月、米国のTranscend Therapeutics(トランセンド社)の買収を完了し、PTSD治療薬候補TSND-201を開発パイプラインに加えた。取得対価は7億米ドルで、開発品の売上収益に応じて最大5億2,500万米ドルを追加で支払う可能性がある。
TSND-201はメチロンを有効成分とする迅速作用型の治療薬候補で、米国で2026年4月に第3相試験を開始した。買収に関連し、仕掛研究開発として約1,143億円を無形資産に計上している。
大塚HDは精神・神経、がん、自己免疫、希少疾患などを重点領域とし、医療上の未充足ニーズに対応する新薬開発を進める。今回の買収は、既存製品の販売拡大だけでなく、新たな治療選択肢を将来の成長につなげる投資といえる。
研究開発・成長投資
1〜9月の研究開発費は2,603億円で、前年同期比4.7%増だった。医療関連事業に約2,463億円を投じ、PTSD治療薬候補TSND-201の第3相試験や、胆道がん治療薬候補フチバチニブの臨床試験、抗体薬物複合体ARC-02の開発などを進めた。
- 医療関連: 臨床開発費が増えた一方、為替影響を除く研究開発費は前年同期並みと会社は説明した。
- ニュートラシューティカルズ関連: 研究開発費は約91億円。健康維持・増進や社会課題の解決につながる製品開発を進める。
- 開発計画の見直し: 一部プロジェクトの中止などを反映し、通期の研究開発費予想を前回から120億円減らした。
費用を一律に削るのではなく、成長ドライバーの臨床開発を続けながら開発計画を選別する姿勢が示されている。研究開発の進展が将来の製品化や収益につながるか、試験結果と承認状況を追う必要がある。
リスクと課題
通期見通しは利益面で引き上げられたものの、医薬品の競争環境や天候、政策変更など、事業ごとに異なる不確実性が残る。会社は現時点で中東情勢や米国の医薬品価格制度、関税政策の業績影響を限定的と仮定している。
- 後発医薬品との競争: サムスカ/ジンアークは米国で独占販売期間終了後に後発品が浸透し、売上収益が前年同期比31.1%減となった。主力薬の独占期間や競合状況が今後の売上を左右する。
- 天候と販売数量: 国内のポカリスエットは7〜9月の天候不順などで販売数量が前年を下回った。機能性飲料の通期売上が前回予想に届かない見込みで、天候が需要に影響する。
- 医薬品開発の不確実性: 臨床試験の結果や承認時期は確約できず、開発中止や遅れは将来の成長機会に影響する。実際に一部開発品では戦略上の中止が公表された。
- 政策・地政学リスク: 米国の薬価制度や関税政策、中東情勢が想定から変化すれば、費用や収益、資産評価に影響する可能性がある。
幅広い製品群と高い自己資本比率は支えとなる一方、医薬品では大型製品の販売動向や開発成果が利益の振れにつながる。会社の通期予想が前提とする外部環境が変化する場合、実績との乖離に注意したい。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/30)
12,015円
最新終値(2026/10/30)
12,015円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/30更新
大塚HDをライバルと比較
年収・業績・株価を並べて製薬業界の今
掲載24社大塚HDは製薬業界の掲載24社中、売上高で3位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +10.9%全業界 +14.9%
- 今期計画 営業利益
- +12.2%全業界 +13.0%
- 予想の上方修正
- 7社下方 1社
- 営業利益率(業界)
- 13.9%
- 大塚HD+43.5%
- 製薬(業界平均)+10.9%
- 全業界+14.9%
- 足元の業績今期第1四半期累計は11社合計で売上高+14.2%・営業利益+55.2%(前年同期比)。通期計画に対する進捗が標準ペースを上回る企業は9社、下回る企業は8社。
- 予想修正今期予想を上方修正したのは7社、下方修正は1社。修正幅が最も大きいのは大塚HD(営業利益+35.6%)。






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大塚HDの強みは、医療用医薬品の成長と、ポカリスエットやネイチャーメイドなど健康関連製品の幅広さを併せ持つことだ。今回も医療関連の主力薬が伸び、事業利益の増加と通期予想の引き上げにつながった。
一方、売上予想を据え置いたまま利益予想を上げた背景には、経費抑制や研究開発計画の見直しがある。今後は、こうした効率化を維持しつつ新薬開発を進められるか、またサムスカ/ジンアークのような後発品の影響を新製品の成長で補えるかが焦点となる。
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