武田薬品、2027年3月期第2四半期決算、純利益3倍で通期予想を上方修正

武田薬品の2027年3月期第2四半期決算は、売上収益が前年同期比8.4%増、営業利益が60.4%増、親会社株主に帰属する中間利益が171.8%増となりました。円安に加え、前年同期に計上した減損損失の縮小などが利益を押し上げ、会社は通期予想を上方修正しました。一方、為替影響を除く売上収益は1.0%減で、基礎的な成長力の見極めも必要です。

決算の数字第2四半期累計
期初から6ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2.4兆円 | +8.4% | 4.7兆円 | 51% |
| 営業利益 | 4,067億円 | +60.4% | 4,530億円 | 90% |
| 純利益 | 3,056億円 | +171.8% | 2,090億円 | 146% |
| 営業利益率 | 16.9% | |||
この決算のポイント
- 1Core営業利益は7,106億円で前年同期比11.2%増、恒常為替ベースでは0.7%増。
- 2新製品の売上は恒常為替ベースで17.3%増。消化器系疾患ではENTYVIOが伸びた。
- 3通期営業利益予想を4,530億円へ7.9%引き上げ、純利益予想は2,090億円。
- 4年間配当予想は204円で、前期の200円から4円増。中間配当は102円。
- 5営業キャッシュ・フローは4,319億円と前年同期比27.2%減。運転資本の増加などが影響。
業績のポイント
武田薬品(武田薬品工業)は2026年4~9月期、売上収益が2兆4,070億円(前年同期比8.4%増)、営業利益が4,067億円(同60.4%増)、親会社の所有者に帰属する中間利益が3,056億円(同171.8%増)となりました。営業利益率は16.9%で、前年同期の11.4%から上昇しました。
| 指標 | 前年同期 | 当期 | 増減額 |
|---|---|---|---|
| 売上収益(億円) | 22,195 | 24,070 | +1,875 |
| 営業利益(億円) | 2,536 | 4,067 | +1,532 |
| 親会社帰属利益(億円) | 1,124 | 3,056 | +1,932 |
| 基本的EPS(円) | 71.57 | 192.53 | +120.96 |
営業利益の増加は、前年同期に大きかった製品関連の無形資産償却・減損が減ったことが最大の押し上げ要因です。会計上の費用減が利益を大きく押し上げた一方、Core営業利益は7,106億円、前年同期比11.2%増にとどまり、恒常為替ベースでは0.7%増でした。中間利益には、繰延税金資産の回収可能性見直しなどによる税金費用の減少も寄与しています。
売上収益の増加は主に円安によるもので、為替影響を除く恒常為替ベースでは1.0%減でした。既存主力製品が概ね横ばい、新製品が伸びたものの、独占販売期間満了や成熟製品の減収が重しとなっており、報告上の増収率と実質的な販売動向を分けて見る必要があります。
- 前年同期2,536億円
- 売上総利益+1,535億円
- 販管費-488億円
- 研究開発費-333億円
- 償却・減損+1,183億円
- その他収益-81億円
- その他費用-285億円
- 当期4,067億円
セグメント別動向
武田薬品はIFRS上、医薬品事業の単一セグメントで開示しています。以下は会社が示すビジネスエリア別の売上動向で、売上の伸びは円安を含む実勢為替ベースと、為替影響を除く恒常為替ベースで差があります。
| ビジネスエリア | 売上高(億円) | 前年同期比・実勢為替 | 恒常為替ベース |
|---|---|---|---|
| 消化器系疾患 | 7,768 | +12.1% | +2.5% |
| 希少疾患 | 3,957 | +4.0% | -5.6% |
| 血漿分画製剤 | 5,612 | +8.5% | -1.5% |
| オンコロジー | 3,170 | +10.1% | +0.9% |
| ワクチン | 366 | +15.7% | +7.7% |
| ニューロサイエンス | 2,209 | +7.2% | -1.6% |
| その他 | 988 | -4.2% | -12.7% |
消化器系疾患は売上の柱であるENTYVIO(エンタイビオ)が伸び、皮下注射製剤の販売拡大も寄与しました。オンコロジーではFRUZAQLA(フリュザクラ)が欧州で浸透し、ニューロサイエンスではトリンテリックスが米国の価格改定などを背景に増収となりました。
一方、希少疾患や血漿分画製剤は円安込みでは増収でも、恒常為替ベースでは前年を下回りました。新製品は恒常為替ベースで17.3%増と伸びているものの、Core売上収益に占める割合は4%で、成熟製品や独占販売期間満了製品の減収をどこまで補えるかが課題です。
- 消化器系+2.5%
- 希少疾患-5.6%
- 血漿分画-1.5%
- オンコロジー+0.9%
- ワクチン+7.7%
- 神経系-1.6%
- その他-12.7%
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 医薬品事業(単一セグメント) | 2.4兆円 | 100% | 4,067億円 | 16.9% |
通期見通し
武田薬品は2027年3月期の業績予想を上方修正しました。売上収益予想を4兆7,000億円、営業利益予想を4,530億円とし、5月公表時からそれぞれ600億円、330億円引き上げています。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 修正額 | 前期実績 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益(億円) | 46,400 | 47,000 | +600 | 本短信の該当箇所に記載なし |
| 営業利益(億円) | 4,200 | 4,530 | +330 | 本短信の該当箇所に記載なし |
| 親会社帰属利益(億円) | 1,660 | 2,090 | +430 | 本短信の該当箇所に記載なし |
| Core営業利益(億円) | 11,600 | 11,900 | +300 | 本短信の該当箇所に記載なし |
| Core EPS(円) | 472 | 482 | +10 | 本短信の該当箇所に記載なし |
売上収益の上方修正には為替のプラス影響が含まれ、営業利益の引き上げは主に売上増加を反映しています。一方、新製品の上市投資や為替による営業費用の増加が利益の伸びを一部抑える見込みです。純利益予想の大幅な引き上げには、繰延税金資産の計上による実効税率の低下も影響するため、営業面の改善と税効果を分けて評価したいところです。
Coreベースの通期予想は、売上収益4兆7,000億円、営業利益1兆1,900億円、Core EPS482円です。恒常為替ベースの会社ガイダンスでは、Core売上収益は一桁台前半の減少を見込む一方、Core営業利益とCore EPSの減少幅は従来想定より縮小する見通しです。
財務状況と資本政策
9月末の総資産は15兆2,715億円で、2026年3月末から2,400億円減少しました。親会社所有者帰属持分比率は48.6%と、前年度末の47.9%から上昇しています。
| 項目 | 2026年4~9月期・9月末 | 前年同期・前年度末 | 増減・比較 |
|---|---|---|---|
| 総資産(億円) | 152,715 | 155,115 | -2,400 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 48.6% | 47.9% | +0.7ポイント |
| 営業キャッシュ・フロー(億円) | 4,319 | 5,937 | -27.2% |
| 投資キャッシュ・フロー(億円) | -1,088 | -813 | 支出が274億円増 |
| 財務キャッシュ・フロー(億円) | -4,914 | -2,269 | 支出が2,645億円増 |
| 年間配当予想(円) | 204 | 200 | +4円 |
営業キャッシュ・フローの減少には、売上債権など運転資本の増加と、先物為替予約の決済が前年の収入から当期の支出に転じたことが影響しました。財務キャッシュ・フローでは社債の償還や借入金返済があり、9月末の現金及び現金同等物は4,185億円と前年同期末の6,815億円を下回りました。
中間配当は1株102円で、年間配当予想は204円と前期比4円増を維持しています。自己株式の取得による当期の支出は10億円で、前年同期の516億円から縮小しました。会社は配当予想を据え置いており、資金の使途では研究開発や事業運営、負債管理とのバランスが焦点です。
研究開発・成長投資
研究開発費は3,386億円(前年同期比10.9%増)でした。恒常為替ベースでも2.1%増となり、円安だけでなく、後期開発段階にある候補品の費用増加が反映されています。
- 主な開発費の増加要因: arcotatug tavatecan(TAK-921)、elritercept(TAK-226)、TAK-928など後期開発パイプラインへの投資が増加。
- 成長製品の動向: 新製品群の売上は恒常為替ベースで17.3%増。リブテンシティ、FRUZAQLA、QDENGAなどが拡大を目指す対象です。
- 投資計画: 上期の資本的支出は1,590億円、前年同期比24.3%増。通期のキャッシュ・フロー基準の資本的支出は3,300億~3,800億円を見込みます。
パイプラインへの支出は短期利益を圧迫し得る一方、独占販売期間満了や成熟製品の減収を補う新薬を育てるための投資でもあります。候補品の臨床試験や規制当局の判断には不確実性があり、投資額に見合う承認・上市と販売拡大につながるかを継続して確認する必要があります。
リスクと課題
上期は会計上の費用減や税効果が利益を押し上げましたが、為替を除く売上は弱含みでした。会社が示す事業環境や開示内容から、今後は次の点に注意が必要です。
- 為替変動: 円安は円換算の売上を押し上げる一方、通貨によって営業利益への影響は異なります。為替前提が変われば通期予想も変動する可能性があります。
- 独占販売期間満了と競争: 既存薬の独占販売期間満了や成熟製品の減収が続けば、新製品の伸びだけでは売上を補いきれないおそれがあります。
- 開発・上市の不確実性: 臨床試験の成否、規制当局の判断、上市後の市場浸透は確約されません。後期開発品への投資が計画どおりの成長に結び付くかが課題です。
- 費用とキャッシュ創出: 研究開発や新製品上市、事業構造再編の費用が重なる一方、上期の営業キャッシュ・フローは減少しました。投資と株主還元を支える資金創出力の回復が焦点です。
- 薬価・訴訟・金融費用: 薬価や関税などの制度変更、訴訟に関連する費用、社債・リース負債に伴う利息費用が利益を左右する可能性があります。
武田薬品は通期予想を引き上げましたが、恒常為替ベースの売上ガイダンスは減収を見込みます。報告利益の増加が継続的な製品成長とキャッシュ創出につながるかを、下期の販売動向と費用の進捗で確かめる必要があります。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/29)
6,471円
最新終値(2026/10/29)
6,471円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/29更新
武田薬品をライバルと比較
年収・業績・株価を並べて製薬業界の今
掲載24社武田薬品は製薬業界の掲載24社中、売上高で1位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +9.1%全業界 +16.0%
- 今期計画 営業利益
- +10.9%全業界 +11.7%
- 予想の上方修正
- 5社下方 1社
- 営業利益率(業界)
- 13.9%
- 武田薬品+52.0%
- 製薬(業界平均)+9.1%
- 全業界+16.0%
- 足元の業績今期第1四半期累計は12社合計で売上高+14.6%・営業利益+48.3%(前年同期比)。通期計画に対する進捗が標準ペースを上回る企業は8社、下回る企業は7社。
- 予想修正今期予想を上方修正したのは5社、下方修正は1社。修正幅が最も大きいのは大塚HD(営業利益+30.3%)。






タグ#武田薬品#決算#決算分析#四半期決算#上方修正#医薬品#研究開発#配当#為替影響
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今回の決算は、営業利益の大幅増だけを見ると力強く映りますが、無形資産の償却・減損の縮小や税効果が大きく、継続的な事業の実力を測るにはCore指標と恒常為替ベースの売上を併せて見る必要があります。
一方、新製品群が伸び、通期予想と配当を引き上げた点は前向きです。下期は、成熟製品の減収を新薬がどこまで補えるか、そして利益の増加が現金創出の改善にもつながるかが、投資家と就活生双方にとって注目点です。
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- 2027年3月期 第1四半期
- 2026年3月期 通期
- 2026年3月期 第3四半期




