トクヤマ、2027年3月期第2四半期決算、増収も原燃料高で営業減益

トクヤマの2027年3月期第2四半期決算は、売上高が前年同期比9.1%増の1,786億円となった一方、営業利益は29.2%減の135億円で増収減益でした。ライフサイエンス事業の連結や半導体関連製品の販売増が売上高を押し上げましたが、原燃料費と物流費、連結に伴う管理費の増加が利益を圧迫しました。会社は通期予想を修正し、セメント国内販売事業の譲渡と配当予想の引き上げも発表しています。

決算の数字第2四半期累計
期初から6ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,787億円 | +9.1% | 3,920億円 | 46% |
| 営業利益 | 136億円 | -29.2% | 340億円 | 40% |
| 純利益 | 100億円 | -17.8% | 465億円 | 21% |
| 営業利益率 | 7.6% | |||
この決算のポイント
- 1売上高は半導体関連製品とライフサイエンス事業の連結効果で前年同期比9.1%増
- 2原燃料コストや販管費が膨らみ、営業利益は前年同期比29.2%減の135億円
- 3ライフサイエンスは売上高50.6%増、営業利益32.1%増と全体の成長をけん引
- 4年間配当予想を140円に引き上げ、前期実績の120円から20円増配
- 5セメント国内販売事業を太平洋セメントに譲渡、譲渡価格は370億円
業績のポイント
トクヤマ(株式会社トクヤマ)の2027年3月期中間期は、売上高が前年同期比9.1%増の1,786億円、営業利益が29.2%減の135億円、親会社株主に帰属する中間純利益が17.8%減の99億円でした。売上高は伸びたものの、コスト増が利益を上回って増収減益となりました。
- 売上の押し上げ: トクヤマライフサイエンスグループの連結と半導体関連製品の販売増が寄与し、売上高は前年同期比で149億円増加。
- 原燃料費の上昇: 売上原価は13.0%増となり、製造コストの上昇が営業利益を押し下げました。
- 販管費の増加: ライフサイエンスグループの連結に伴う一般管理費や物流費の増加で、販売費及び一般管理費は17.3%増。
- 特別損益の改善: 政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益の増加などで、特別損益は前年同期から改善しました。
最大の課題は、売上増を利益に結びつけられていない点です。ライフサイエンスの連結効果が売上高を押し上げた一方、原燃料費や物流費、買収後の管理費用が利益率を圧迫しました。純利益の減少幅が営業利益より小さいのは、投資有価証券売却益など特別損益の改善が下支えしたためです。
セグメント別動向
事業ごとの明暗が分かれ、ライフサイエンスが増収増益となる一方、化成品や環境事業では利益が大きく減りました。下のグラフは各セグメントの営業利益の前年同期比を示しています。
化成品は、売上高が527億円で前年同期比0.7%増となった一方、営業利益は16億円でした。苛性ソーダの販売数量減少や製造コストの上昇が響き、塩化ビニル樹脂なども価格改定だけではコスト増を吸収できませんでした。
セメントは、売上高が332億円で前年同期比2.5%増、営業利益は42億円でした。国内販売価格の改定を進めましたが、国内出荷の減少と原料価格の上昇が利益を押し下げました。なお、国内販売事業は10月1日付で太平洋セメントに譲渡されており、今後は事業構成が変わります。
電子先端材料は、売上高が465億円で前年同期比9.3%増、営業利益は67億円でした。半導体向け多結晶シリコンは販売数量の減少や棚卸資産評価損が重荷となりましたが、乾式シリカや半導体製造装置向け放熱材は堅調でした。
ライフサイエンスは、売上高が290億円で前年同期比50.6%増、営業利益は53億円で同32.1%増でした。トクヤマライフサイエンスグループの連結に加え、エイアンドティーの臨床検査機器システム販売や歯科器材が伸びました。
- 環境事業: 売上高は前年同期比3.3%減の25億円、営業利益は79.0%減の0.5億円。イオン交換膜や装置の出荷減が響きました。
- その他: 売上高は前年同期比2.9%増の207億円、営業利益は35.4%減の8億円でした。
成長をけん引するライフサイエンスと、コスト高に苦しむ素材事業の差が鮮明です。半導体関連は売上が伸びても製品ごとに採算が異なり、今後は販売数量の回復だけでなく、原料高や棚卸資産評価損を吸収できるかが焦点となります。
- 化成品-70.1%
- セメント-12.0%
- 電子先端-3.1%
- ライフサイエンス+32.1%
- 環境事業-79.0%
- その他-35.4%
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 化成品 | 527億円 | 29% | 17億円 | 3.2% |
| セメント | 332億円 | 18% | 43億円 | 12.8% |
| 電子先端材料 | 466億円 | 25% | 68億円 | 14.5% |
| ライフサイエンス | 290億円 | 16% | 53億円 | 18.3% |
| 環境事業 | 26億円 | 1% | 53百万円 | 2.0% |
| その他 | 207億円 | 11% | 9億円 | 4.3% |
通期見通し
トクヤマは2027年3月期の連結業績予想を修正し、売上高3,920億円、営業利益340億円、親会社株主に帰属する当期純利益465億円を見込みます。売上高は前期比12.2%増、営業利益は8.2%減、純利益は109.4%増の計画です。
| 項目 | 今回予想 | 前期比 | 前回予想との比較 |
|---|---|---|---|
| 売上高(億円) | 3,920 | +12.2% | 7月公表予想から修正、数値は短信に記載なし |
| 営業利益(億円) | 340 | -8.2% | 7月公表予想から修正、数値は短信に記載なし |
| 純利益(億円) | 465 | +109.4% | 7月公表予想から修正、数値は短信に記載なし |
会社は最近の業績動向を踏まえ、10月29日に予想を修正したとしていますが、今回の短信には7月公表時の予想額や、項目ごとの修正理由の詳細は掲載していません。通期純利益には、10月1日に実行したセメント国内販売事業の譲渡に伴う関係会社株式売却益約321億円が影響する見込みです。一方、譲渡後も保有するセメント・固化材の製造設備について、第3四半期に減損損失約120億円を計上する見込みとしており、特別損益を含む利益の振れに注意が必要です。
財務状況と資本政策
中間期末の総資産は5,904億円で、2026年3月末から3.6%増加しました。自己資本比率は48.8%となり、前期末の49.7%から低下しています。
| 項目 | 2026年9月末・中間期 | 比較対象 | 増減・前年差 |
|---|---|---|---|
| 総資産(億円) | 5,904 | 2026年3月末 | +3.6% |
| 自己資本比率 | 48.8% | 2026年3月末は49.7% | -0.9ポイント |
| 営業CF(億円) | 157 | 前年中間期は224億円 | -67億円 |
| 投資CF(億円) | -147 | 前年中間期は-183億円 | 支出が36億円減少 |
| 年間配当予想 | 140円 | 前期実績は120円 | +20円 |
営業キャッシュフローは棚卸資産の増加などで前年同期を下回りましたが、投資キャッシュフローは有形固定資産の取得を中心に支出が続きました。設備投資の通期予定額は410億円で、成長分野への重点投資や省エネ、温室効果ガス削減対策などに充てる方針です。配当は中間60円を実施し、期末予想を80円に引き上げました。短信では新たな自社株買いの発表は確認できませんが、自己株式の取得に伴う当中間期の資金流出は35億円でした。
戦略トピック
トクヤマは構造改革と成長事業への資源配分を進めるため、セメント・固化材の国内販売事業を太平洋セメントに譲渡しました。吸収分割と株式譲渡は2026年10月1日に実行され、譲渡価格は370億円です。
- 譲渡対象: セメント・固化材の国内販売事業と、関連する連結子会社の株式を含みます。
- 譲渡の目的: 事業構造改革を加速し、競争力の強化と成長事業への資源配分につなげます。
- 譲渡後の会計影響: 関係会社株式売却益は暫定で約321億円を見込みます。
- 製造設備の減損: トクヤマが引き続き保有する製造設備について、2027年3月期第3四半期に約120億円の減損損失を計上する見込みです。
今回の譲渡は販売機能の切り離しであり、製造設備まで手放すものではありません。譲渡益が当期純利益を押し上げる一方で、製造設備の減損が発生するため、単年度の利益だけで改革の成果を判断するのではなく、資源を振り向ける成長事業の収益力を見極める必要があります。
研究開発・成長投資
当中間期の研究開発費は94億円でした。会社は中期経営計画2030で、2030年度に売上高4,075億円、営業利益570億円、営業利益率14.0%、ROE10.6%を目標に掲げています。
- 成長事業への投資: 事業ポートフォリオの変革を目的に、成長分野への重点投資と戦略的投資を進める方針です。
- 設備投資: 2027年3月期の予定額は410億円で、自己資金や金融機関からの借入金を主な資金源とします。
- 環境対応: 省エネや温室効果ガス排出量の削減を目的とした設備投資も行います。
足元では原燃料費や物流費の上昇が利益を圧迫しており、投資拡大と収益性の改善を両立できるかが問われます。ライフサイエンスや半導体関連材料への資源配分を進めながら、投資が利益や資本効率の向上につながるかを今後の決算で確認したいところです。
リスクと課題
売上高の拡大だけでは利益の回復が見通しにくい状況です。原燃料費や物流費の上昇、半導体関連製品の需要・採算、事業譲渡後の固定資産の評価が主な注目点となります。
- 原燃料・物流費の上昇: 製造コストや輸送費が増え、価格改定が追いつかなければ化成品、セメントなどの利益を圧迫します。
- 事業ごとの需要差: セメントは国内出荷が減少し、半導体向け多結晶シリコンも販売数量が前年同期を下回りました。需要回復が遅れれば、売上や設備稼働率に影響する可能性があります。
- 棚卸資産の評価: 電子先端材料では棚卸資産評価損が発生しており、市況や在庫水準によって利益が変動するリスクがあります。
- セメント製造設備の減損: 国内販売事業の譲渡後も製造設備を保有し、会社は第3四半期に約120億円の減損損失を見込んでいます。最終額は今後変動する可能性があります。
- 買収後の費用負担: ライフサイエンス事業の連結で売上が伸びた一方、一般管理費や償却費も増加しており、統合効果を利益成長につなげることが課題です。
特に、営業利益が減少する中で通期純利益には事業譲渡益が含まれる見通しです。利益の質を見極めるには、特別利益を除いた本業の収益力と、譲渡後の事業構成の変化を分けて追う必要があります。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/29)
3,913円
最新終値(2026/10/29)
3,913円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/29更新
トクヤマをライバルと比較
年収・業績・株価を並べて化学業界の今
掲載60社トクヤマは化学業界の掲載60社中、売上高で28位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +27.1%全業界 +16.0%
- 今期計画 営業利益
- +23.6%全業界 +11.7%
- 予想の上方修正
- 16社下方 0社
- 営業利益率(業界)
- 8.8%
- トクヤマ+1.6%
- 化学(業界平均)+27.1%
- 全業界+16.0%
- 足元の業績今期第1四半期累計は40社合計で売上高+13.1%・営業利益+49.5%(前年同期比)。通期計画に対する進捗が標準ペースを上回る企業は27社、下回る企業は4社。
- 予想修正今期予想を上方修正したのは16社、下方修正は0社。修正幅が最も大きいのは大阪有機(営業利益+45.3%)。





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売上高の伸びだけを見ると堅調ですが、営業利益は原燃料費や買収後の費用増で減少しており、現時点では成長の成果が利益に十分結びついていません。とりわけライフサイエンスの拡大が、今後どれだけ継続的な利益成長を生むかが評価の分かれ目になりそうです。
セメント国内販売事業の譲渡は、事業構成を変えて成長分野に資源を配分する経営判断です。ただし譲渡益が純利益を押し上げる一方、製造設備の減損も予定されているため、本業の利益回復と改革後の資本効率を分けて確認したい決算です。
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株式会社トクヤマ
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4期- 2027年3月期 第2四半期(中間期)
- 2027年3月期 第1四半期
- 2026年3月期 通期
- 2026年3月期 第3四半期






