塩野義製薬、2027年3月期第2四半期決算、売上64.5%増で通期予想を上方修正

塩野義製薬の決算を分析すると、2027年3月期中間期は売上収益が前年同期比64.5%増、営業利益が55.8%増、親会社株主に帰属する利益が44.0%増となり、いずれも大幅に伸びました。エダラボン事業の承継やHIV関連ロイヤリティーの増加が寄与し、会社は通期業績予想と年間配当を上方修正。成長投資の成果が増収増益に結びつく決算となりました。

決算の数字第2四半期累計
期初から6ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,504億円 | +64.5% | 7,200億円 | 49% |
| 営業利益 | 1,152億円 | +55.8% | 2,300億円 | 50% |
| 純利益 | 1,195億円 | +44.0% | 2,125億円 | 56% |
| 営業利益率 | 32.9% | |||
この決算のポイント
- 1中間期のコア営業利益は前年同期比75.7%増の1,326億円、成長投資の効果が表れた
- 2国内医療用医薬品は101.7%増、海外子会社・輸出は210.2%増とエダラボン事業が寄与
- 3通期売上収益予想を2.9%引き上げ7,200億円、営業利益予想も4.5%上方修正
- 4年間配当予想を前期比15円増の86円に引き上げ、15期連続増配となる見込み
- 5営業キャッシュフローは1,421億円の収入、エダラボン事業取得で投資支出は4,347億円
業績のポイント
塩野義製薬株式会社(以下、塩野義製薬)の中間期は、売上収益が前年同期から1,374億円増の3,504億円、営業利益が412億円増の1,152億円、親会社株主に帰属する中間利益が365億円増の1,195億円でした。売上収益、営業利益、親会社帰属利益はいずれも中間期の過去最高を更新しました。
- 利益の質: コア営業利益は前年同期比75.7%増の1,326億円。営業利益の伸びを上回り、事業の稼ぐ力が強まりました。
- 1株利益: 基本的1株当たり中間利益は140.47円で、前年同期の97.55円から上昇しました。
- 利益を押し上げた要素: 売上増に加え、ViiV社の持分法適用関連会社化に伴う投資利益を計上しました。
- 純利益の押し上げ要因: 米国で将来の課税所得が見込まれるとして、繰越欠損金に係る繰延税金資産を計上し、法人所得税費用が減少しました。
売上の伸びには、2026年4月に承継したエダラボン事業や、鳥居薬品・JT医薬事業の取り込みが寄与しています。一方、事業承継に伴う無形資産償却費や米国での販売費用、研究開発費も増加し、中国グループ会社の株式譲渡に伴う減損損失も発生しました。営業利益率は前年同期の約34.7%から32.9%へ低下しており、売上拡大を利益率の維持につなげられるかが今後の焦点です。
セグメント別動向
塩野義製薬は医療用医薬品を中心とする単一事業のため、決算短信ではセグメント別の売上高・利益を開示していません。製品・収入区分でみると、国内医療用医薬品、海外子会社・輸出、ロイヤリティー収入のいずれも増収でした。
| 主な収入区分 | 売上収益(億円) | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 国内医療用医薬品 | 743 | +101.7% |
| 海外子会社・輸出 | 950 | +210.2% |
| ロイヤリティー収入 | 1,654 | +27.9% |
国内では、鳥居薬品関連製品やALS治療薬ラジカットの売上計上に加え、不眠症治療薬クービビックの処方拡大が増収に貢献しました。海外では、米国・カナダでエダラボン製剤RADICAVAの売上が加わり、欧米で抗菌薬セフィデロコルの販売も伸びています。
ロイヤリティー収入は、ViiV社のHIV治療薬の販売拡大と旧JT医薬事業に関連する収入が押し上げました。COVID-19の流行が想定を下回る環境でも、クービビックや希少疾患領域の製品、HIV事業が成長を支えており、感染症流行への依存を抑えた収益基盤づくりが進んでいます。
通期見通し
塩野義製薬は2027年3月期の通期業績予想を上方修正しました。中間期の売上収益と利益が従来予想を上回り、2025年度に実施した成長投資の成果が表れていることを反映しました。
| 項目(百万円) | 前回予想 | 今回予想 | 修正額 | 前期実績 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 700,000 | 720,000 | +20,000 | 499,677 |
| 営業利益 | 220,000 | 230,000 | +10,000 | 170,306 |
| 税引前利益 | 220,000 | 220,500 | +500 | 242,497 |
| 親会社帰属当期利益 | 210,000 | 212,500 | +2,500 | 209,244 |
今回予想は前回予想に比べ、売上収益を2.9%、営業利益を4.5%、親会社帰属当期利益を1.2%引き上げました。前期比では売上収益が44.1%増、営業利益が35.1%増の計画ですが、税引前利益は9.1%減を見込みます。
上方修正の背景には、RADICAVA事業の立ち上がり、欧米でのセフィデロコル販売、国内のクービビックや鳥居薬品関連製品の伸長があります。ViiV社ではDovatoに加え、長時間作用型注射製剤のCabenuva、Apretudeも好調で、ロイヤリティー収入と持分法投資利益の増加を見込みます。一方、IntraBio社の買収に伴う償却費や米国事業への投資が費用を押し上げる見通しです。
財務状況と資本政策
中間期末の総資産は前期末比555億円増の2兆6,410億円、親会社所有者帰属持分比率は66.1%で、前期末の65.3%から上昇しました。営業活動で資金を稼ぐ一方、エダラボン事業の取得により投資キャッシュフローが大幅な支出となっています。
| 指標 | 2027年3月期中間期 | 前年同期・前期末との比較 |
|---|---|---|
| 営業活動によるCF | 1,422億円 | 前年同期比507億円増 |
| 投資活動によるCF | -4,347億円 | 前年同期より支出が2,317億円増 |
| 財務活動によるCF | -354億円 | 前年同期より支出が51億円増 |
| 現金及び現金同等物 | 3,765億円 | 前期末から3,320億円減 |
- 配当: 中間配当は40円、期末予想は46円で、年間配当予想を前回の76円から86円へ引き上げました。前期実績の71円を15円上回り、15期連続増配となる見込みです。
- 自社株買い: 中間期に大規模な自社株買いの発表はありません。キャッシュフロー計算書上の自己株式取得による支出は1百万円でした。
営業キャッシュフローの増加には税引前利益や減価償却費の増加が寄与しました。年間配当の引き上げは、成長投資の成果を株主にも還元する判断で、会社はDOE4%以上を目安とする安定配当を基本方針としています。
戦略トピック
塩野義製薬は希少疾患を成長領域に据え、エダラボン事業のグローバル基盤を取り込むとともに、米IntraBio社の買収契約を締結しました。中間期にはエダラボン事業の取得後売上収益が544億円、当期利益が79億円となり、事業承継がすでに業績に寄与しています。
- エダラボン事業: 2026年4月に田辺ファーマから取得し、ALS治療薬ラジカット、RADICAVAの知的財産権や販売権、米国の事業基盤を獲得しました。取得に伴う事業譲受の支出は3,908億円でした。
- IntraBio社: 2026年10月に買収契約を締結しました。買収完了後、NPCや毛細血管拡張性運動失調症の治療薬AQNEURSAなどのグローバル権利を取得する予定です。今期業績への影響は精査中です。
- 研究開発・事業基盤: 鳥居薬品の販売網とJT医薬事業の創薬機能を組み合わせ、研究開発から製造・販売までの連携を強化する方針です。
既存のHIV・感染症領域を収益の柱としながら、希少疾患の製品や人材、販売網を買収で補う戦略が鮮明になっています。今後は取得した製品の販売拡大だけでなく、買収後の費用を吸収し、持続的な利益成長につなげられるかが重要です。
リスクと課題
増収の勢いは強い一方、複数の事業承継や買収を進める中で、費用増加や統合の実行力が利益を左右します。会社自身も、将来の業績は入手可能な情報と一定の前提に基づく予想であり、実際の結果はさまざまな要因で変動するとしています。
- 買収後の費用負担: エダラボン事業などの無形資産償却費が増え、米国での販売関連費用も拡大しています。売上成長が費用増を上回れるかが課題です。
- 希少疾患事業の立ち上げ: RADICAVAの販売基盤を拡大し、IntraBio社のAQNEURSAなどを展開する計画ですが、買収後の業績影響は現時点で精査中です。
- HIV事業への依存: ViiV社の販売拡大はロイヤリティー収入と投資利益を支えています。主力製品の販売動向や事業環境の変化が収益に影響する可能性があります。
- 為替・金融収支: 中間期は為替差損を含む金融費用が増加し、営業利益の伸びに比べ税引前利益の増加は小幅でした。為替変動や金融収支の振れに注意が必要です。
- 事業再編に伴う損失: 中国グループ会社の株式譲渡契約に伴い、対象資産の減損損失などを計上しました。資産売却や事業再編の進捗が追加費用につながる可能性があります。
また、研究開発費は優先順位を厳格に見直す方針です。成長投資を続けながら、パイプラインの選択と集中、買収事業の統合、コスト管理をどう両立させるかが通期予想達成のカギになります。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/10/29)
2,989円
最新終値(2026/10/29)
2,989円
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/29更新
塩野義製薬をライバルと比較
年収・業績・株価を並べて製薬業界の今
掲載24社塩野義製薬は製薬業界の掲載24社中、売上高で9位。業界全体の株価と今期の会社計画を見ると――
- 業界の株価(1年)
- +9.1%全業界 +16.0%
- 今期計画 営業利益
- +10.9%全業界 +11.7%
- 予想の上方修正
- 5社下方 1社
- 営業利益率(業界)
- 13.9%
- 塩野義製薬+20.4%
- 製薬(業界平均)+9.1%
- 全業界+16.0%
- 足元の業績今期第1四半期累計は12社合計で売上高+14.6%・営業利益+48.3%(前年同期比)。通期計画に対する進捗が標準ペースを上回る企業は8社、下回る企業は7社。
- 予想修正今期予想を上方修正したのは5社、下方修正は1社。修正幅が最も大きいのは大塚HD(営業利益+30.3%)。






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今回の決算は、エダラボン事業の大型取得や鳥居薬品・JT医薬事業の取り込みが、売上成長に結びつき始めた点が目を引きます。HIVロイヤリティーやクービビックなど既存・新規の複数の収益源が伸び、感染症流行だけに左右されにくい事業構成を目指す姿も見えてきました。
ただし、売上の急増には事業承継による規模拡大が含まれ、無形資産の償却や米国販売費用も重くなっています。買収で広げた事業基盤を利益率の改善につなげられるか、そして新たな希少疾患薬が期待通りに立ち上がるかを、今後の決算で確認したいところです。
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4期- 2027年3月期 第2四半期(中間期)
- 2027年3月期 第1四半期
- 2026年3月期 通期
- 2026年3月期 第3四半期







